観測時期が異なったり、欠測範囲が大きい海域は水温差が大きいため等温線をつなげていません。（日本海北部と南部、日本海北部とオホーツク海、道東太平洋と道南太平洋の0m層と50m層は等温線をつなげていません）。観測時期が異なっていても、水温差が小さい道東太平洋と道南太平洋の100m層と200m層は等温線をつなげています。

積丹半島西方沖に暖水渦

今回、積丹半島沖の観測が十分にできませんでした。衛星画像等を参考にすると、前回（8月）積丹半島西方にあった暖水渦は西方へ移動したようです。この暖水渦の影響を受けた、43-30N、138-30Eにおける100m層水温は6.46℃と平年より2.5℃以上高く（水温偏差表　日本海43-30N　J39参照）、10月としては1988年の観測開始以来最も高い水温となっています。対馬暖流は奥尻島西方から積丹半島西方の暖水渦の西を回って、礼文島西方へ北上しています。茂津多岬沖の対馬暖流北上傾圧流量は平年並みです。水温偏差について見ると、日本海42-30N（J4）、43-30N（J3）では暖水渦の影響のあるところを除き、平年並みのところが多くなっていますが、日本海44-30N(J2)では沖側の水温がやや高くなっています。
余市における7月下旬以降11月上旬までの沿岸水温（旬平均）は、10月下旬まで「平年並み」～「やや高い」で推移しましたが、11月上旬に「かなり高い」となっています。

道東沿岸流沖へ蛇行

道東沖の暖水塊については、前回（8月）より中心に近い海域の水温は高くなっていますが（41-00N、146-00Eの100m層で12℃以上）、例えば100m層で7℃以上の海域は前回（8月）より南に下がっています。このことから暖水塊の中心位置は前回（8月）より東へ移動したように見えます。この暖水塊の北側は広く親潮でおおわれていますが、沿岸では宗谷暖流起源の道東沿岸流（＊1）が根室半島沖から襟裳岬へ向かって流れており、厚岸沖でやや南（沖）へ広がっています。水温偏差について見ると、暖水塊の中心付近以外では、厚岸沖の42-20N(P24)と42-40N（P23）の50m層および100m層で水温が高くなっています。

津軽暖流渦モード

100m層で10℃以上の津軽暖流は、襟裳岬南方の143-00E付近まで張り出しており、津軽暖流は渦モード（＊2）になっています。道南太平洋は津軽暖流に広くおおわれており、噴火湾中央部には見えませんが、湾口部には塩分濃度33.8以上の津軽暖流水があり、津軽暖流水が湾内へ入り込んでいるようです。水温偏差について見ると、尻屋埼北方（P66）の50m層以深では平年より3℃以上高いほか、全体的に水温の高いところが多くなっています。津軽暖流の流量の指標となる深浦－函館間の水位差を見ると、8月に平年並となりましたが、9月以降10月まで津軽暖流流量は低めに推移しているようです。

宗谷暖流順調

荒天のため知床半島北方海域が欠測となっています。表面水温では、宗谷海峡東沿岸で14℃、
網走沖沿岸でも14℃となっています。50m層水温13℃以上の海域は網走沖まで達しています。このことから、宗谷暖流は順調に流れているようです。水温偏差について見ると、観測時期が例年より遅いため、表層では水温偏差が低くなっており、一方で宗谷暖流が沈み始めているため50m層の水温が高くなっているところがあります。宗谷暖流の流量の指標となる稚内－網走間の水位差を見ると、9月まで低く推移しましたが、10月に高くなり、宗谷暖流流量は昨年の10月より多く平年並のようです。

＊1：夏～秋季に道東沿岸を流れるオホーツク海起源の沿岸流を道東沿岸流と呼んでいます。
＊2：津軽暖流が津軽海峡から襟裳岬まで大きく張り出してから南下している状態を「渦モード」と呼びます。これに対して，津軽暖流が青森県尻屋埼からすぐ岸沿いに三陸方面へ南下している状態を，津軽暖流の「沿岸モード」と呼んでいます。