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ドロノキ

道産木材データベース


ドロノキ



名称  和名:ドロノキ
    別名:ドロ,ドロヤナギ,ワタドロ,ハクヨウ(白楊)
    アイヌ語名:ペトルンクルニpetorun(川の中にある)-kuru-ni,
          ヤイニyay-ni(ヤマナラシとの共通名,とりえのない木の意)
    漢字表記:泥の木,泥柳
    英名:Japanese popla
学名  Populus maximowiczii Henry
分類  ヤナギ科ハコヤナギ属
分布  北海道,本州(中部以北),サハリン,朝鮮半島,中国東北部,シベリア,カムチャッカなど
生態・形態
亜寒帯から温帯にかけ,河岸など日当たりのよい湿潤地に生える。北海道では全域,本州中部では標高800m以上に生育する。
雌雄異株。高さ30m,太さ1.5mになる。樹皮は,小径のうちはなめらかで灰緑色~灰褐色,太くなるに従い下部から縦に裂け目が入り,大径になると裂け目が深くなるとともに帯黒色となる。枝は開出する。1年生枝は4~8mmと太い。若枝のうち樹脂の分泌によりつやがある。日陰では短枝化しやすい。葉は互生し,広楕円形で長さ10cm前後。上(表)面はやや革質で濃緑色,下(裏)面は緑白色で葉脈上には細毛がある。花は,雌雄とも尾状で下垂し,雌花序は黄緑色で長さ5cm前後,雄花序は暗赤色で長さ5~10cm,雌花序より太い。北海道では開葉直前の4月中・下旬に開花し,6月上旬には綿毛をつけた種子を飛散させる。冬芽は樹脂の分泌により光る。頂芽は長卵状の円錐形で,長さ1.5~2cmと大きい。

木材の性質
散孔材。年輪ははっきりしない。心材は白色~淡褐色,辺材は白色で心材・辺材の境界はやや不明。全体に淡く緑や紫を帯びることがある。変色しやすい。
軽軟で均質な材だが,しばしば著しいアテによる表面の毛羽立ちがみられる。心材は含水率が高い。また心材には炭酸カルシウムの結晶が沈着しており,切削刃物の摩耗を早める。泥の木の名のゆえん(泥が入っている木)とするのが通説(材質が泥のように軟らかいので泥の木と呼ぶとの説もあり)。耐久性は低い。


  木材の性質それぞれの意味については,「トドマツ」の項で説明しています。
主な用途
パルプ,器具,マッチの軸などにされる。無味無臭なので食品関係の用途に適する。下駄ばきが当たり前だった頃,シナ・セン・ホオノキと並ぶ主要材料であった。毛羽立ちでカンナが効きにくく費用増しとなるものの,大阪方面では高級な南洋桐に匹敵するものとしてドロノキ材の下駄が出回ったという。衝撃吸収性の良さから火薬箱に使われた。枝を編んで行李(こうり)にする地方もある。公園樹にもされる。

引用(木材の性質に関する数値等)

・日本の木材:(社)日本木材加工技術協会 1989

参考

・原色日本植物図鑑 木本編【II】:北村四郎・村田源 保育社 1979
・図説樹木学-落葉広葉樹編-:矢頭献一・岩田利治 朝倉書店 1966
・落葉広葉樹図譜 冬の樹木学:四手井綱英・斎藤新一郎 共立出版(株) 1978
・知里真志保著作集 別巻I 分類アイヌ語辞典 植物編・動物編:知里真志保 平凡社 1976
・外材と道産材-材質による比較(広葉樹・散孔材):佐藤真由美 北海道立林産試験場 林産試だより 1992年7月号
  http://www..hro.or.jp/list/forest/research/fpri/rsdayo/26153024001.pdf