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イヌエンジュ

道産木材データベース


イヌエンジュ


名称  和名:イヌエンジュ
    別名:(単に)エンジュ
    アイヌ語名:チクペニchi-ku-pe-ni
    漢字表記:犬槐,犬延寿
学名  Maackia amurensis Rupr.et Maxim. var. buergeri C.K.Schn.
分類  マメ科イヌエンジュ属
分布  北海道,本州(東北,関東,中部)

生態・形態
温帯の広葉樹二次林で普通に見られる落葉樹。林道沿いや伐採跡地など明るい場所での生育が良好で,暗い林内に群生することはめったに無い。
高さ10m・太さ30cm以上になる。樹皮は淡紅褐色~灰褐色で比較的粗く,明褐色の円い皮目が散在する。表皮に入った十文字の裂け目が徐々にひし形状にめくれて特有の模様を作る。小枝は平滑で堅い。仮頂芽由来の当年枝が枯れることから枝先が少々ジグザクうねる。奇数羽状複葉で長さ20~30cm,小葉は3~7対,卵形で小葉の長さ3~5cm。上(表)面は深緑色,下(裏)面は緑白色で芽吹きのころは下面に銀白色の細毛が密生する。花は盛夏の頃,当年の枝先に咲く。複総状花序で,約1cmの黄白色の花を多数つける。果実はさや豆状で長さ4~8cm。
幹や枝を傷つけると臭気を放つ。流通量は少ないが北海道が主産地。
イヌエンジュ樹形

樹皮,枝ぶり,葉,花


木材の性質
環孔材。孔圏外道管も目立ち散孔材的に見える。心材は暗褐色,濃淡があり,特有のしま模様をつくる。辺材は黄白色で幅が狭い。年輪は明瞭。肌目は粗。材はやや重硬で強度が比較的大きく粘りもある。木口割れが発生しづらい。切削などの加工性はやや困難な部類に入るが,表面の仕上がりはよく,磨くと光沢が出る。耐朽性が高い。


木材の性質それぞれの意味については,「トドマツ」の項で説明しています。



主な用途
心材の濃い褐色と辺材の淡い黄白色の対照や光沢のある木目が生かされ,床柱などの建築装飾材,家具,鏡台,盆・菓子器,小箱類,クラフト類,フローリングなどにされる。床柱では丸太の表面に凹凸のあるものが使われ色調の対照がよりきわ立つよう加工される。音響の伝わりの良さから三味線,太鼓の胴などにも使われる。強度や粘りは手斧や農具・工具の柄に向く。腐りにくさから北海道では鉄道の枕木に使った。アイヌの人たちは,生材の臭気が病魔を寄せつけないとの言い伝えからチセの骨組みに用いた。現在でもアイヌの魔除け人形「ニポポ」の素材となる。
樹皮は染料に利用される。樹木は公園・街路樹に使われる。

引用(木材の性質に関する数値等)

・日本の木材:(社)日本木材加工技術協会 1989

参考

・原色日本植物図鑑 木本編【I】:北村四郎・村田源 保育社 1971
・落葉広葉樹図譜 冬の樹木学:四手井綱英・斎藤新一郎 共立出版(株) 1978
・(財)日本木材総合情報センター:http://www.jawic.or.jp
・木の情報発信基地 世界の木材:中川木材株式会社 http://www.wood.co.jp
・知里真志保著作集 別巻I 分類アイヌ語辞典 植物編・動物編:知里真志保 平凡社 1976