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ヨーロッパトウヒ

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ヨーロッパトウヒ


全体


名称 和名:ヨーロッパトウヒ,ドイツトウヒ,オウシュウトウヒ
               漢字表記:独逸唐桧,欧州唐桧
英名 Norway spruce
学名 Picea abies (L.) Karst.
分類 マツ科トウヒ属
分布 ヨーロッパ全域(ギリシャ北部~スカンジナビア半島),西シベリア


生態・形態
ヨーロッパ原産の常緑針葉樹。通直性に優れた大高木で原産地では高さ60m,直径2mにも達するという。分布はギリシャ北部を南限とし,北極圏(スカンジナビア半島)まで広がる。肥沃な土地を好むが低地の泥炭地から森林限界付近まで生育範囲は広い。浅根性のため風害や乾燥害を受けやすい。
ヨーロッパに分布するトウヒ属の代表格であるとともに,ブナ,ヨーロッパアカマツと並ぶ主要な造林樹種。
葉は線形で光沢があり,横断面は四辺形で各面に気孔帯を持つ。樹皮は若木では灰褐色,薄く平滑で多数の皮目が目立つ。大径木・老木では褐色~暗褐色で鱗片状に厚くはげる。枝は幹から斜上してつき,小枝が垂れ下がる。
アカエゾマツと形態がよく似るが,ヨーロッパトウヒでは小枝の垂れ下がりがより顕著である,葉が長く横断面の形状がアカエゾマツに比べて扁平である,球果がかなり大型である,などの点で区別できる。
日本国内では明治期以降に植栽が始まり,東北以北,特に北海道内に造林地が多い。耐陰性が強く下枝が枯れあがりにくいことから,その多くが鉄道防雪林として植栽された。北海道では鉄道防雪林の約半分をヨーロッパトウヒが占める。
樹皮/枝/葉/葉形態の違い

木材の性質
やや光沢を帯びた淡黄白色。心材と辺材の境界は明確ではない。樹脂道を持ち木材の縦断面に「やに条」として現れるがあまり目立たない。木理は通直で強度性能はトドマツとカラマツのほぼ中間の値を示す。耐朽・保存性能はエゾマツ・アカエゾマツと比べやや高い。

性質

木口・柾目面

  ※木材の性質に関する数値は,「原色木材大図鑑 (株)保育社 1962」を引用。-は資料を欠くもの。
木材の性質それぞれの意味については,「トドマツ」の項で説明しています。

主な用途
ヨーロッパトウヒは楽器材に求められる振動特性に優れることから,ヴァイオリン・ギターの甲板やピアノ響板として特に多く用いられる。
建築用材,家具用材,器具材,パルプ材の他,姿の美しさから街路樹や庭木として広く植栽され,クリスマスツリーとしても用いられる。
古くからヨーロッパでは建築用材として用いられており,近年,ホワイトウッドの名で日本へも多く製材輸出され,盛んに利用されている。

参考

・ヨーロッパの林業:北方林業叢書 (社)北方林業会 1979
・私たちの生活周辺にある外国からの樹木:塚本道夫 北海道林業改良普及協会 1986
・北海道の樹木:鮫島淳一郎 北海道新聞社 1986
・トドマツ及びヨーロッパトウヒ人工林材の材質:高橋政治 北海道立林産試験場 「林産試験場報463号」 1994
・原色日本植物図鑑 木本編【II】:北村四郎・村田源 保育社 1979
・北海道における林木育種と森林遺伝資源:北海道林木育種協会 2008