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カラマツ

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カラマツ


カラマツ樹形

名称 和名:カラマツ
   慣習名:フジマツ,ニッコウマツ,ラクヨウショウ,ニホンカラマツ,シンシュウカラマツ
   漢字表記:落葉松
英名 Japanese larch
学名 Lalix leptolepis Gordon(L. kaempferi Carr.)
分類 マツ科カラマツ属
分布 本州(中部,関東など)
生態・形態
カラマツ天然林は,主に本州中央部の南・北アルプス,富士山,八ヶ岳,奥日光などの高標高地に分布し,総面積は約6,900haと記録される。陽樹であり,山火事跡などに一斉に更新して成立したものと考えられるが,現存する林分の多くは,コメツガ,トウヒ,シラベなどと混交し,遷移途上の様相を示すと言われる。
高標高,寒冷によく耐え,成長が早いうえ火山灰地や溶岩地など劣悪な土壌にも生育するので,中部地方の高標高地や北海道,東北地方などにおいて,第二次大戦後の復興造林によく使われた。2007年現在の面積は全国で約102万haである。北海道では,現在,一般民有林を主体に総人工林面積の約3割,46万haがカラマツ林となっている。7~10齢級の林分が多く全体の約5割を占める。蓄積は,北海道の総人工林蓄積の44%,9,383万m3である。
日本に自生するマツ類では唯一落葉性で,冬期の呼吸によるエネルギーロスを抑え夏期に効率よく光合成を行う。針葉樹のなかでは最も進化した種とされる。寿命はおよそ300年。幹は通直で高さ30m,直径1mほどになる。樹皮は灰褐色で,古くなると縦に裂け,長めの鱗(りん)片となってはがれ落ちる。鱗片のはがれた樹皮は赤みが強い。主枝はほぼ水平に伸びあまり太くならない。先へ行くと小枝が垂れ下がる。葉には当年の長枝上にらせん状に散生する長枝葉と,古い長枝上の短枝に車輪状に密生する短枝葉とがある。春先の開葉直後の葉はすべてが短枝葉である。

左:樹皮中央:枝右:葉

木材の性質
春~夏期と秋期とでは形成される細胞の形態が大きく違うことから年輪がはっきりしている。肌目は粗めとされる。辺材,心材の色の違いがはっきりしており,辺材は黄白色,心材は褐色で年数を経て大径になるほど色の深みが増す。割裂性は良いが,針葉樹材としては重厚で加工しにくい部類に入れられる。仕上がり面も粗くなりやすいとされる。強度は優れているが,樹心近くでは外側に比べて劣る。腐朽菌への抵抗性は中庸だが,水中での耐久性は高いとされる。防腐剤などの注入性は主要樹種の中では困難な部類に入る。
属名「Larix」は樹脂の意味で,垂直・水平方向の樹脂道をもち,未乾燥材からはヤニがしみ出ることがある。幹の中心から数年輪は材の繊維傾斜度が大きいので,心持ち材では適正な乾燥を施さなければ割れや狂いが出ることがある。

左:木口面中央:板目面右:柾目面

物理的・機械的・加工的性質

 ここに記載する木材の性質に関する数値は,(社)日本木材加工技術協会発行の「日本の木材」から引用しています。木材の性質それぞれの意味については,「トドマツ」の項で説明しています。

主な用途
建築材,パルプ材,梱包・輸送用材,土木材,合板用材,家具材,工芸材などとして広く使われる。
高齢で年輪のこんだ本州の天然カラマツが「天カラ」と呼ばれ,神社仏閣用などとして銘木扱いされてきたこととは対照的に,間伐材は,従来,土木材やダンネージなどのように耐水性や強度が必要であっても見栄えを必要としない場面でよく使われた。住宅建築においても,土台まわりなど表に出ない部材としての扱われ方をしてきた。
北海道におけるカラマツ材の用途は,エゾマツ・トドマツ材の色の白さに慣れ親しんできたことや,間伐材利用の歴史が浅く幼齢の心持ち材特有の欠点にたいする印象がふくらんだためか,つい最近まで,梱包・輸送用かパルプ用が主体であった。しかし昨今,林産試験場の研究などによる乾燥技術の進歩により,欠点の少ない製材品や加工品が流通するとともに,狂わない集成材の利用が一般化するようになり,カラマツ材への評価やし好性は上向いてきた。カラマツ材を内・外装にふんだんに取り入れた住宅が道内全域で見られるようになった。端材等のペレット燃料化,チップの農業用暗渠(あんきょ)疎水材・家畜敷料利用も行われている。

カラマツ材の高度利用をテーマとした林産試験場の研究成果

上段左から:道産I形梁(合板をウェブ部分に使用),SPB(ストランドパーティクルボード),内装用合板の利用「反響板」中段左から:WPC カラマツフローリング,学童用の机といす,硬質木片セメント板下段左から:アンモニア調色,カラマツペレット燃料

引用(木材の性質に関する数値)

・日本の木材:(社)日本木材加工技術協会 1989

参考

・カラマツ造林学:浅田節夫・佐藤大七郎編著 農林出版 1981
・原色日本植物図鑑 木本編【II】:北村四郎・村田源 保育社 1979
・カラマツ活用ハンドブック:北海道立林産試験場 2005
・平成17年度北海道林業統計:北海道水産林務部 2006
・森林・林業統計要覧:林野庁 2007
・(財)日本木材総合情報センター:http://www.jawic.or.jp