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トチノキ

道産木材データベース


トチノキ


名称  和名:トチノキ
    別名:トチ
    アイヌ語名:トチニtochi-ni
    漢字表記:栃の木,橡
    英名:Japanese horse chestnut
学名  Aesculus turbinata Blume
分類  トチノキ科トチノキ属
分布  北海道(西南部),本州,四国,九州

生態・形態
日本固有種(トチノキ属は北半球の温帯地域に24種)。山の谷間など肥沃な土地を好む落葉性の高木。
高さ30m太さ2mに達する。樹皮は灰色~緑灰褐色で,不規則な割れ目が入る。枝は太く,広い円形の樹冠をつくる。冬芽は対生し,樹脂で粘る。頂芽は長卵形で長さ10~30mmと大きく,側芽は卵形でほとんど発達しない。葉は掌状複葉(小葉数は5または7)で,長さ10~20cmの葉柄がつく。小葉は基部がくさび形の倒卵状楕円形で先がとがる。中央(先端)部の小葉が大きく,大型のもので長さ40cm幅15cmになる。花は枝先に直立する長さ15~25cmの円錐花序に多数つく。白色で基部は淡紅色を帯びる。雄花(めしべが無いか退化して小さいもの)と両性花がある。果実は球形で径約4cm。果皮が厚く,熟すと3裂する。内部の種子は通常1個で球形。赤褐色で光沢がある。
トチノキ樹形

樹皮,葉,花,果実,種子

木材の性質
散孔材。心材と辺材の色の違いはほとんど無く,帯紅白色~淡黄褐色。年輪ははっきりせず,やさしく柔らかい印象を与える。材はやや軽く軟らかいので加工がしやすい。緻密な肌目で仕上がりがよく,削った材面には絹のような光沢がでる。木理が不規則で板目面に細かい波状の縞模様(リップルマーク)が現れる。均質で割れにくく,粘りがあるので曲げ木に適する。乾燥時には狂いが出やすい。耐朽性が低い。

各種性質,三断面


木材の性質それぞれの意味については,「トドマツ」の項で説明しています。

公園のトチノキ


主な用途
加工がしやすいうえ大径材が得られるので,建築造作材,家具,器具材,漆器木地,彫刻材,楽器材,薪炭など用途は広い。ひび割れしにくく削り面がきれいなことから,皿やボウル,ねり鉢,臼には最適とされる。大径木のコブには,材に縮み杢,波状杢がよく現れ,建築装飾材,家具の化粧張り用,工芸用とされる。
デンプン質の種子は古来とち餅などの食糧となる。煎じて胃薬,目薬などにも使われる。樹木は公園樹,街路樹となる。

引用(木材の性質に関する数値等)

・日本の木材:(社)日本木材加工技術協会 1989

参考

・原色日本植物図鑑 木本編【I】:北村四郎・村田源 保育社 1971
・図説樹木学-落葉広葉樹編-:矢頭献一・岩田利治 朝倉書店 1966
・落葉広葉樹図譜 冬の樹木学:四手井綱英・斎藤新一郎 共立出版(株) 1978
・知里真志保著作集 別巻I 分類アイヌ語辞典 植物編・動物編:知里真志保 平凡社 1976
・(財)日本木材総合情報センター:http://www.jawic.or.jp
・樹の事典 美しい森と自然の素材:朝日新聞社 1984