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林業試験場

森とみどりのQ&A(経営・林業経営)

森とみどりのQ&A(経営・林業経営)
経営/林業経営
Q1.北海道の林家の現状は?
A1.現在北海道には、計50,248世帯の林家があり、そのうちの21,870世帯(約44%)が農家林家(農業と兼業している林家のこと)です。このうち、林業を主業(家計の中で所得が最も大きいもの)としている林家は、約0.9%に過ぎません(2000年農林業センサス)。林家には、ただ山林を所有しているだけの林家と、経営を前提に山林を手入れしている林家があり、その意識は大きく違います。後者のうち、山林を10ha以上持っている道内の林家・約600人を対象に平成6年に行われた聞き取り調査の結果をみてみます。

平成6年度森林所有者の林業経営意識調査結果・抜粋(林業普及職員共同プロジェクト)

(1)年齢 61才以上 57.6%
41~60才 37.1%
21~40才 5.3%
(2)重点的に行っている森林施業 除間伐 30.0%
枝打ち 21.6%
複層林施業 5.4%
特になし 30.8%
(3)過去一年間に自分の山林に足を運んだ回数 1~10回 50.3%
11~50回 26.1%
51~100回 9.0%
0回 6.2%
(4)山つくり用の機械を持っているか? 持っている 53.0%
持ってない 47.0%
(5)森林に対する過去5年間の年平均投資額 全く投資していない 31.1%
5万~10万 24.4%
10万以上 44.5%
(6)過去5年間の家計に占める林業収入割合 0%→80.6%
1%~5%→9.9%
6%~20%→6.9%
21%以上→2.6%
(7)今後の森林への投資意欲 これからも投資する 58.8%
投資しない 30.7%
(8)長伐期施業を目指すか 積極的に目指す 25.0%
やむを得ない 37.4%
その他 31.8%
(9)いい条件を提示されれば山を売却するか 売却する 36.8%
しない 56.2%
わからない 7.0%
(10)山つくりに対する助成の要望(複数回答) 木材価格アップ 18.6%
補助金増額 10.3%
公益的機能の国民へのPR 7.2%
木材利用開発 3.7%
コストダウン 1.9%

(6)で家計の収入に全くつながらないという人が8割を超える一方で、山を売却したいという方は少なく、「伐期を延長してでも山を温存する」という資産保持的な性格が強くなっている様子が分かります。また、(7)で今後も森林の投資を続けるという人も約6割に達していることがわかりました。儲からないが、山は心の底から好きだという林家の姿が浮かび上がっています。

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Q2.間伐の採算を計算するとき、労務費は変動費に入れるべきか固定費に入れるべきか。
A2.変動費は生産量が増加するに従って増大し、固定費は生産量に関係なく一定額かかる費用です。従って、生産量が増えると、総費用に対する固定費の割合は小さくなります。
 変動費の代表は保守・修理費や燃料費、運搬費等であり、固定費の代表は減価償却費や資本利子、用地借料等です。なお、労務費の分類ですが、出来高制の場合は変動費に含めるのが妥当とされていますが、月給・日給払いの場合は固定費に入れることもあります。

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Q3.伐出コストを計算するときの直接費と間接費の考え方について知りたい。
A3.直接費と間接費は、原価計算の時に必要な概念です。直接費とは、製品(例えば間伐材)の生産にそのまま結びつけて計算できるもの、間接費とは直接費に付帯して発生する費用のことです。例えば、労務賃金、購入部品費、外部委託費等は直接費であり、退職手当や賞与、保険費、資本利子、固定資産税等は間接費です。

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Q4.労働生産性とか労働分配率とか、経営に関わる基本的な言葉の意味を知りたい。
A4.どちらの言葉も、経営体の生産性をみるための基本的指標です。労働生産性とは、企業の従業員一人が働いた結果、どれだけの付加価値を新たに生み出したかという指標です。これが大きければ大きいほど、生産性が高いといえます。労働分配率とは、付加価値に占める労務費・人件費の割合をいいます。これが大きくなると、経営体の利益を圧迫するため、労働生産性は低下するという関係にあります。なお、労働生産性は各産業や採用している生産システムにより異なります。日本における全産業の労働分配率の平均値は、1995年で46.7%となっています(財務省「法人企業統計季報」「労働力調査」「国民経済計算」)。

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Q5.森林GISとは何か。森林経営にどのように生かせるのか。
A5.GIS(Geographic Information System)とは、地理情報システムの略であり、地図上に描かれたさまざまな対象物の位置と形などの情報と対象物の内容を示すデータベースをコンピューター上で一元的に管理し、容易に情報の検索、出力、解析を行うシステムです。森林GISでは、森林管理の現場で使われている森林調査簿や森林計画図、空中写真などを用いて、データを重ね合わせ、視覚的に森林情報をとらえることが出来ます。
 例えば、ある林分の伐出作業計画を作る場合には、樹種や面積などの林分条件、路網配置、使用機械など数多くの要因が伐出コストに関わってきます。GISを用いると、既設の作業道から一定距離範囲内の林分で、機械の効率や搬出経路を考慮した上で、伐出優先順位の高いものが抽出できます。ただしそのためには、各種作業図や路網配置図、施業履歴など様々なデータを入力しておくことが必要です。

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Q6.最近よく耳にする「木材バイオマスエネルギー」とは何か。道内での普及の可能性は。
A6.木質バイオマスとは、樹木に由来する幹・枝・葉・根・樹皮などの総称です。木質バイオマスエネルギーとは、木質バイオマスの中でも特に林地の残材や除間伐材、枝条、製材工場の端材、住宅廃材など、今まで利用されなかった木質材料から取り出されたエネルギーのことを言います。森林資源が再生可能であること、再生した森林が再び二酸化炭素を吸収すること、地域の森林資源を余すことなく利用できることなどから、循環型のエネルギーとして注目を浴びています。問題になるのは、木質バイオマスの搬出コスト、供給コストの高さ、エネルギー効率の低さ、設備投資額などの初期費用の大きさです。
 本州に見られるような大規模な木質バイオマス発電施設は北海道にはありませんが、十勝や網走を中心に木質ペレットの生産が広がりを見せています。木質ペレットや木質ボイラーのような、初期投資の比較的小さい地域循環型の利用方法は、今後除々に広がっていくと思われます。

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