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林業試験場

ノンネマイマイ

ノンネマイマイ

写真1 老齢幼虫。美唄市、エゾマツ、1988/7/23。

写真2 老齢幼虫、体長20mm。新得町、ミズナラ、1993/6/20。

写真3 雌成虫、体長20mm。写真2の幼虫を飼育。

被害の特徴
樹 種 針葉樹、広葉樹。
部 位 葉。
時 期 春~初夏。
状 態 葉が食べられる、なくなる。枝や葉上に毛虫(幼虫)がいる。被害木の下の地面に虫糞がある。
幼虫 体長最大約60mm(写真1~2)。 背中に青いコブが2列に並ぶ。腹部第6、7各節背面中央に小突起(背腺)はオレンジ色。腹部第3節と第4節後半から6節前半の背面中央が灰白色から黄白色。前胸両側の刺毛が束にならない。
ドクガ科の幼虫は腹部第6、7各節背面中央に小突起(背腺)がある。

和名  ノンネマイマイ

学名 命名者  Lymantria monacha (Linnaeus)

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ドクガ科Lymantriidae


寄主  トドマツ・モミ・エゾマツ・トウヒ・アカエゾマツ・カラマツ・マツ・ナラ・カシワ・ブナ(文献1943)。シラカンバ・ミズナラ(文献1985)。

生態  生活環は下表のとおり(文献1985)。年1世代、卵越冬;幼虫は5月下旬ころから孵化し、7月中旬に枝葉の間に薄く糸を張り中で蛹化(文献1928、1943)。成虫は8月上中旬に羽化:雌は幹の地上から2m程度までの樹皮の間や粗皮の下に20~30卵を塊で産む;1雌の産卵数は約250個(文献1943)。

 発育ステージ ~3月   4    5    6    7    8    9   10   11~
 卵(越冬) ◇◇◇ ◇◇◇             ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
 幼虫(摂食・生長)           ◆ ◆◆◆ ◆◆◆                
 蛹                  ++ +              
 成虫・産卵                     ◎◎?            

分布  北海道・本州・四国・九州、サハリン、ユーラシア(文献1943)。

被害と防除  ヨ-ロッパでは針葉樹の大害虫として知られる(文献1943)。国内では被害記録が1例だけ知られ、1987年北海道江別市のヨ-ロッパトウヒ防雪林の一部が激しい食害を受けた(文献1988)。
 カラマツの害虫とする報告(文献1928)もあるが、被害記録はないようである。
 これまで被害は1例しかなく、通常の発生量も少ないことから、防除の必要はない。


文献
[1928] 相沢保, 1928. 落葉松林の被害と其防除法に就て. 北海道林業會報, 26(8): 512-526.
[1943] 松下眞幸, 1943. 森林害蟲學. 410pp. 冨山房, 東京. (形態、生態、被害、防除、過去の文献;なお、上記引用部分の出典は確認していない)
[1982] 井上寛ほか, 1982. 日本産蛾類大図鑑. Vol. 1: 1-968; Vol. 2: 1-556, pls 1-392. 講談社, 東京.
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌. (北海道での生態、カラー写真)
[1987] 杉敏郎(編集), 1987. 日本産蛾類生態図鑑: 1-453, pls 1-120. 講談社, 東京.
[1988] 小泉力(北海道森林昆虫談話会), 1988. 昭和62年度・北海道に発生した森林害虫. 北方林業, 40: 218-224. (ヨーロッパトウヒ被害記録)

2011/3/31