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アトボシハマキ

アトボシハマキ

写真1 終齢幼虫、体長25mm。美唄市、ウダイカンバ、1989/6/29。

写真2 写真1の幼虫の巣。1989/6/29。

写真3 雌成虫、体長9mm。写真1の幼虫を飼育。

被害の特徴
樹 種 ナラほか、様々な落葉広葉樹。
部 位 葉。
時 期 6月と8月(幼虫加害時期)。
状 態 幼虫は数枚の葉を糸でつづって巻き、巣を作る。巣の中には枯れ葉が包まれ、そこに幼虫や蛹がみられる。
幼 虫 体長最大約25mm(写真1)。胸腹部は背面が灰色、腹面と尾部は白い。背面には不鮮明な白い斑点がある。頭部は赤茶色で、黒い斑紋がある(小さなときは全体黒色)。
カクモンハマキの仲間の幼虫に似るが、頭楯(口のすぐ上)が白いことと、刺毛基板が淡色であることで区別できる。

和名  アトボシハマキ

学名 命名者  Hoshinoa longicellana (Walsingham)

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ハマキガ科Tortricidae


形態  幼虫は終齢で体長25mm。中齢では頭部、前胸背楯、胸脚は黒色、体は暗い黄緑色。終齢では頭部は褐色で多数の黒斑を持ち、前胸背楯は黒色で前半中央が褐色、胸脚は黒色あるいは褐色で先は黒色、体は灰色で腹面と尾部は白っぽい。

寄主  主な寄主はナラ類で、他にクリ、ナシ、リンゴ、サクラ、バラなどにもつくという。北海道ではウダイカンバ、シラカンバからも採れた。

生態  年1~2回発生、若齢幼虫で越冬といわれる。北海道の低地では中~終齢幼虫が6月と8月に採れているので、年2化であろう。幼虫は新梢先端の葉を綴って巣を作り、成長するに従い巣に次々と葉をかぶせていく。このため、老齢幼虫の巣の中には初めの頃の巣が枯れて包まれている。

分布  北海道・本州・四国・九州、朝鮮半島、中国、ロシア。

被害など  リンゴなど果樹では害虫とされているが、他の樹木では発生量はごく少ない。森林では普通、防除の必要はない。庭木での多発は知られていない。


文献
[1957] 江崎悌三ほか, 1957. 原色日本蛾類図鑑(上): I-XIX, 1-318, pls 1-64. 保育社, 大阪.
[1975] Yasuda, T., 1975. The Tortricinae and Sparganothinae of Japan (Lepidoptera: Tortricidae) (II). Bull. Univ. Osaka Pref., ser. B, 27: 79-251.
[1977] 奥野孝夫・田中寛・木村裕, 1977. 原色樹木病害虫図鑑: I-VIII, 1-365, pls 1-64. 保育社, 大阪.
[1982] 井上寛ほか, 1982. 日本産蛾類大図鑑. Vol. 1: 1-968; Vol. 2: 1-556, pls 1-392. 講談社, 東京.

2001/4/8