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林業試験場

アメリカシロヒトリ

アメリカシロヒトリ

写真1 幼虫。函館、プラタナス、2000/9/27。

写真2 幼虫。函館、プラタナス、2000/9/29。

写真3 幼虫の食害。函館、プラタナス、2000/9/28。

被害の特徴
樹 種 プラタナス、サクラほか様々な広葉樹。
部 位 葉。
時 期 春~秋(幼虫加害時期)。
状 態 葉がなくなる。毛虫(幼虫)がいる。被害木の下に虫糞が落ちている。
幼 虫 体長最大約3cm(写真1~2)。 白い長毛で覆われ、地色は背中が灰色、下側が淡い黄色。頭部は黒い。 小さな幼虫は体が淡い黄色で、背中に黒点が2列に並ぶ。

 北米原産の外来種で1945年に東京で最初に発見され、それ以降徐々に分布域は拡大し、現在は日本のほとんどの都道府県で発生が認められるようになった(文献2010)。北海道では2000年に函館で発生し、初めて分布が確認された(文献2000)。函館では2001年にも発生した(文献2002)。しかし、それ以降は発生していない(文献2009)。


和名  アメリカシロヒトリ

学名 命名者  Hyphantria cunea (Drury)

分類  チョウ目(鱗翅目)Lepidoptera、ヒトリガ科Arctiidae。


寄主  プラタナス、サクラ属ほか各種広葉樹。函館市ではプラタナスで発生した(文献2000、2002)。

生態  本州では幼虫は6~7月と8~9月に出現する;小さなときは数百頭の集団を形成し、糸を張り巡らし巣をつくる;成長すると巣から離れ、単独で加害する;老熟した幼虫は樹皮の割れ目など隙間に入って、体毛の混ざったうすい繭を作り、繭の中で茶色の蛹になる;成虫の出現時期は春と夏;雌成虫は約500個の卵を葉裏にまとめて産み付ける;蛹で休眠して越冬する(文献2010)。近年、日本の南西部においては年3世代を経過するようになった(文献2010)。

分布  北海道(文献2000)、本州。北米。

被害  本種の発生は現在のところ都市部やその近郊、農村部等に限られ、森林での発生は確認されていない(文献2010)。街路樹や公園の植栽木で多発する。同じ木が続けて激しい食害を受けると、枯れることがあるといわれている。
 函館では9月下旬に被害が観察されている(文献2000、2002)。発生は物流や観光客の出入りが盛んな西部湾岸地域や五稜郭に近い交通公園付近などのプラタナスで、樹冠の大半を食害された木もあった(文献2001a)。

防除  幼虫集団を見つけ枝葉ごと取り除いて駆除する。幼虫がいるところは葉がまとまって枯れているので発見しやすい。体毛が皮膚に刺さることがあるのでゴム手袋をすること。
 函館市の発生では、強度の剪定が行われた木では被害がみられず、強度剪定は被害軽減に有効と思われる(文献2002)。とはいえ、強度剪定で被害が軽減される理由やその有効性は明確にされていない。
 幼虫駆除用に多くの農薬が登録されている。


文献
[2000] 館和夫, 2000. 函館にアメリカシロヒトリ発生. 森林保護, 280: 43. (北海道での最初の発生記録)
[2001a] 館和夫, 2001. 速報, 函館にアメリカシロヒトリ発生. 森林防疫, 50: 71-72.
[2001b] 尾崎研一・原秀穂・林直孝, 2001. 2000年に北海道で発生した森林昆虫. 北方林業, 53: 229-231. (2000年の発生記録、上記の引用)
[2002] 館和夫, 2002. 函館のアメリカシロヒトリ・その後. 森林保護, 287: 19. (函館市での2001年発生状況、防除)
[2009] 近藤健・大林隆司・小野剛・竹内浩二・井川茂・小谷野伸二, 2009. 小笠原諸島父島におけるアメリカシロヒトリの発生消長. 関東東山病害虫研究会報, 56: 103-106. (函館市で発生情報、フェロモントラップ)
[2010] 五味正志, 2010. 特集:温暖化による害虫への影響. アメリカシロヒトリ:生活史の適応. 植物防疫, 64: 425-428.

2011/1/20