森林研究本部へ

林業試験場

ヒメカサアブラムシ

ヒメカサアブラムシ

写真1 トドマツ状の雌成虫。

写真2 アカエゾマツ上の古い虫えい。

被害の特徴
樹 種 トドマツ、トウヒ属(アカエゾマツ、エゾマツなど)。
部 位 葉(トドマツ)、枝(トウヒ属)。
時 期 春~秋(トドマツ加害時期)、通年(虫えい観察時期)。
状 態 トドマツの葉表に黄色の斑点ができ、葉裏に黒点状のものまたは小さな白い綿状のものが付着する。
春にアカエゾマツやエゾマツなどトウヒ属の枝に高さ2cmほどの赤から緑の松ぼっくりに似たこぶができる。古いこぶは茶色で穴が開く。

和名  ヒメカサアブラムシ

学名 命名者  Aphrastasia pectinatae (Cholodkovsky)

分類  カメムシ目(半翅目)Hemiptera、カサアブラムシ科Adelgidae


寄主  エゾマツ・アカエゾマツなどトウヒ属、トドマツ。

生態  生活環は下表のとおり(文献1985を一部改変、トウヒはトウヒ属の意味)。年2~3世代;幼虫越冬;トウヒ属では春、幼虫が成虫になり、新芽の基部に産卵する;孵化幼虫は新芽内に入り、新芽を虫えい(虫こぶ)に変形させる;晩春から初夏に虫えいから翅のある雌成虫が現れ、トドマツに移動し葉裏に産卵する;孵化幼虫はトドマツの葉裏で越冬する;翌春に吸汁・生長し、成虫になり産卵する;孵化した幼虫は生長し、翅のない雌成虫または翅のある雌成虫になる;翅のある雌成虫はトウヒ属に移動し産卵する;幼虫から雌雄の成虫が生じ、交尾・産卵する(文献1985)。

 発育ステージ  寄主 ~3月   4    5    6    7    8    9   10   11~
 幼虫(越冬)  トウヒ +++ +++                            
 無翅雌成虫・卵  トウヒ       ◎ ◎                          
 虫こぶ内、幼虫  トウヒ         ◆◆◆ ◆◆◆                    
 有翅雌成虫(移動)・卵  トドマツ              ◎◎ ◎                  
 幼虫(越冬)  トドマツ +++ +++ +     + +++ +++ +++ +++ +++
 無翅雌成虫・卵  トドマツ       ◎ ◎◎◎ ◎                      
 幼虫(寄生、生長)  トドマツ          ◆◆ ◆◆◆                    
 無翅雌成虫・卵(幼虫になり越冬)
 有翅雌成虫(移動)・卵
 トドマツ
 トウヒ
            ◎◎◎                    
 幼虫(寄生、生長)  トウヒ             ◆◆◆ ◆◆◆                
 無翅雌雄成虫・卵  トウヒ                 ◎◎◎                
 幼虫(越冬)  トウヒ                  ++ +++ +++ +++ +++

分布  北海道、サハリン(文献1985)。

被害観察地域 (樹木害虫発生統計資料に基づく)

被害と防除  トドマツ苗木は加害により衰弱するが、枯れることはないといわれている。


文 献
[1985] 林康夫・吉田成章・小泉力・高井正利・秋田米治・福山研二・前田満・柴田義春・中津篤・田中潔・遠藤克昭・松崎清一・佐々木克彦, 1985. 北海道樹木病害虫獣図鑑. 223pp. 北方林業会, 札幌.
[1994] 尾崎研一, 1994. その他のカサアブラムシ類. 小林富士雄・竹谷昭彦(編), 森林昆虫, 総論・各論: 475-477.  養賢堂, 東京. (形態、生態、防除)

2011/5/15