法人本部

第34回 冷凍すり身

世界に広がるSURIMI
~冷凍すり身の開発と展開~

2013年5月29日
水産研究本部 中央水産試験場 蛯谷 幸司(えびたに こうじ)

こんなお話をしました

  かまぼこやちくわ、魚肉ソーセージ等の魚肉ねり製品の生産量は、全国の水産加工品総生産量の約30%を占めており、これら魚肉ねり製品はスケトウダラやホッケ等の「冷凍すり身」から作られています。国内における冷凍すり身の供給量は、年間30~40万トンで推移していますが、200海里制定(1977年)以降、国産すり身の割合は大きく減少し、アメリカやタイ等からの輸入すり身の割合が増加しています。一方、世界各地で生産されている冷凍すり身の生産量は増加傾向で、現在では年間60~70万トンと推定されており、「SURIMI」は世界の共通語となっています。

このように国際的な食品となった冷凍すり身の製造技術は、1959(昭和34)年に道総研中央水産試験場(当時 北海道立中央水産試験場)の西谷喬助氏らの研究チームによって開発され、戦後の食品業界において「インスタントラーメンに並ぶ2大発明」と言われています。

冷凍すり身が開発された当時は、現在のように冷蔵流通技術が発達していなかったため、鮮度低下が早いスケトウダラは、漁獲地以外での生産消費は難しく、また、その肉は凍結解凍後の食味低下(タンパク質変性)が著しかったため、タラコを採った後の魚体(ガラとも呼ばれる)の利用が大きな問題となっていました。このため、西谷氏らはスケトウダラ肉の凍結による長期貯蔵を目指し、様々な研究を行いました。その結果、「水さらし」と呼ばれる魚肉の水洗いにより不要成分を除いた後、その魚肉に「砂糖」と「リン酸塩」を添加することで、凍結中のタンパク質変性が抑制されることを発見しました。この発見を基に、1960(昭和35)年には冷凍すり身の製造方法を特許出願し、翌年には網走市において企業化に向けた取り組みが実施され、今日に至っています。

冷凍すり身の開発から約50年が経過した現在、北海道におけるスケトウダラやホッケ等の漁獲量は大きく低迷し、新しいすり身原料の開発が期待されています。そのような中、これまで食用として利用が少なく、そのほとんどが混獲後ただちに海に戻されていた「ウロコメガレイ」や「オオナゴ(大型イカナゴ)」、「カジカ類」が新しい地域の水産資源として関係業界から注目されています。

水産試験場では、これら魚のかまぼこ原料としての食感や色調等の原料特性について調査すると共に、それぞれの魚の特徴にあった冷凍すり身製造技術の開発等に取り組んできました。その結果、スケトウダラすり身(陸上2級)に比べても、遜色ないすり身を製造することが可能であることが明らかとなり、地域の水産資源を活用した新しい特産かまぼこの創出が今後期待されています。

 

質問にお答えします 
 

会場からの質問

質問

回答

未利用資源のウロコメガレイの活用を、もっと研究して欲しいです。自分としては、かに入り、えび入りすり身より、ホッケの生すり身とかの流通が増えると嬉しいです。

ウロコメガレイのすり身化を目的とした重点的な研究は終了しましたが、今後も道内外のねり製品製造企業がすり身原料として活用を図れるように技術支援を行っていきます。
 


すり身加工メーカーでも、カジカやオオナゴ、ウロコメガレイといった資源の有効利用について、前向きに取り組んでいるのでしょうか。

国内のねり製品製造企業では、輸入すり身への依存度が高いことから、安定的に利用可能な国産すり身開発に対して潜在的な要望があると考えられます。そのような中、カジカ類は新ひだか町の企業が前浜で獲れるカジカを用いた製品を販売しています。また、オオナゴについては、道内企業がその利用に向けた調査を始めています。今後も、地域特産品の創出を目指した前浜資源の活用が増えてくるものと考えています。
 

タンパク質の変性防止に砂糖を入れるとのことですが、他のものも使えるということなので、いろいろなものを入れることにより、変わった風味の製品ができるのではと思います。

魚肉タンパク質の冷凍変性に対する糖類の保護効果は、砂糖の他にも、グルコースやソルビトール等が知られています。また、最近の研究では糖類以外にもアミノ酸や有機酸にも保護効果があることが報告されており、今後の応用技術が期待されています。
 


ウロコメガレイへの代替が有望とのことで、実際にスケトウダラからウロコメガレイに代わった場合、コスト面やすり身にするに当たっての効率はどう変わるのかと気になりました。
 

混獲によるウロコメガレイ資源量は年間300トン程度と推定され、数量的にスケトウダラすり身全てを代替することは不可能ですが、物性や白さ等のすり身品質は、スケトウダラと同等レベルであることから、かまぼこ原料としてスケトウダラすり身と混合して利用することが有効であると考えられます。
今回は、すり身化を目的とした試験であったため、コスト面の試算は行っていませんが、今後は、コスト面も含め、製品化に向けた取り組みを支援していきたいと考えています。
 

冷凍すり身の原材料として、冷凍魚は使うことができるのでしょうか。品質は下がりますか? 

冷凍魚からも冷凍すり身の製造は可能ですが、生鮮魚からの冷凍すり身に比べて、かまぼこ原料とした場合には、弾力や硬さなどの品質は低下します。
 

非常に興味深い話でした。水産試験場の業務の一環を知ることができました。ありがとうございます。
 

水産試験場の加工利用部では、①水産物の安全性確保と品質管理技術の開発 ②水産物の高度利用技術の開発 ③地域を支える基幹産業の安定化のための技術開発 の3項目を柱に研究を推進しています。お気軽にご相談ください。
 

 

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動画(道総研公式チャンネル)

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