法人本部

第37回 シックハウス

部屋の空気はきれいですか?
~シックハウスにならないために~

2013年8月23日
森林研究本部 林産試験場 秋津 裕志(あきつ ひろし)

こんなお話をしました

化学物質によるシックハウス症状は、眼、鼻やのどの痛み、疲れやすい、頭痛、めまい、吐き気などです。 特徴として、その建物から離れると症状が出なくなります。このようなシックハウス問題は、1970年に食器棚の扉を開くと眼がしみるという苦情から調査が始まり、合板などに使用される接着剤のホルムアルデヒドが原因とされました。
林産試験場では、このころからずっとホルムアルデヒド問題の研究に取り組んでいます。2000年頃からは、ホルムアルデヒドだけでなく様々な化学物質による室内空気汚染が問題となったため、国は、厚生労働省が13種類の化学物質の室内濃度指針値を設定し、国土交通省が建築基準法を改正、国をあげて材料への規制を始めました。また各業界団体でも自主基準を決めたことにより、室内空気汚染によるトラブルは減りましたが、現在でもシックハウス問題はなくなっていません。
シックハウス問題のうち、施工ミスが原因で生じるものは、比較的原因がわかりやすく、問題の建材や部位を交換することで解決します。しかし、原因がわからない場合は、解決するのが非常に困難です。完成後の検査で、ある化学物質の濃度が高いことから、ベイクアウト(室温を35℃ぐらいにして、化学物質の揮発を促進し、短期間で化学物質の量を減らす方法)を行いましたが、問題の化学物質の濃度がさらに高くなり、他の化学物質の濃度も高くなってしまった事例があります。ベイクアウトは、塗料の溶剤など表面から揮発する物質には有効ですが、接着剤のような、材料の隙間や内部を通って徐々に揮発する化学物質に対しては、揮発を促進し、結果的に室内濃度を高くしてしまう場合があります。この場合、2週間から1か月程度で元の濃度に戻ります。このように原因がはっきりしないまま対策を行うと、十分な効果が得られなかったり、逆効果になったりする場合があります。
シックハウス症にならないためには、新築や改修後すぐに入居せず、入居後は窓開け換気などにより、こまめな換気をすることです。冬に入居するときは、入居する時の室温より少し高い温度で暖房し換気を行い、初期に発生する化学物質を排気することが重要です。
現在、厚生労働省では「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」において、指針値を設定する物質を追加することを検討しています。国の動向をみながら、林産試験場でも対応していく予定です。

質問にお答えします
 

会場からの質問
質問 回答

化学物質過敏症の人はどうしたら生活しやすくなるのでしょうか。

においの吸着、触媒についてもう少し知りたかったです。

(どんなものがどのくらい何に効果があるのか、など)

化学物質過敏症の方は、原因となったと思われる場所(住宅や職場)から離れ、医師の指導を受けることが重要です。その場所から離れることができない場合は、原因となった化学物質や反応する物質を取り除くことが必要です。

反応する物質を取り除くには、その部材の交換や換気などの方法がありますが、状況により異なることから、専門的な知識のある人の指導が必要になると考えられます。

においの吸着はトイレなどのように、短時間で大量に発生するような状況では、多くの製品が開発されていますが、建材等から発生するような比較的低濃度で長時間発生するにおいについては、あまり研究がされていません。

また、吸着材は、基本的に対処療法と考えて下さい。

・それぞれの環境によって条件が異なります。(濃度、発生部位など)

・吸着材には限界がある(低濃度の場合、持続性、接触頻度など)

吸着材は、低濃度になると吸着力が低下する場合があります。また、吸着した物質を分解しなければ吸着力がなくなりますし、逆に吸着した物質を脱着させる場合があります。設置場所に関しては、例えば床から放散しているのに、天井に吸着材を置いても吸着効果は低いです。においの吸着、触媒(光触媒)については、今後の研究課題となるのではないかと考えているところです。

未規制化学物質の今後の規制の見直しについて

1.その時期

2.内容について

1と2. 2013年8月現在、法的に規制されている化学物質はホルムアルデヒドとクロルピリホスだけで、他の物質は厚生労働省の室内濃度指針値として設定されているだけです。

現状では、ホルムアルデヒドのように法的な規制を受ける物質はないようです。

ただ、全国的な室内空気汚染の実態調査結果から、指針値を設定する物質を追加することが検討されています。

指針値が示されていない物質が原因となるシックハウス症例は、どのくらいあるのか。また、そのような物質を測定する場合の費用は? シックハウス症を統計的に調査した事例は見当たりません。また、シックハウス症の原因を特定することは困難ですが、極めて高濃度の場合は、特定することは可能です。しかし、発症するまでに時間がかかった場合には、その間に原因物質が蒸発し、検知できない場合があります。そのとき、たまたま指針値が設定されていない物質の濃度が高い場合に、その物質が原因ではないかと疑われますが、毒性が明らかでないものが少なくなく、なかなか原因として特定できないのが現状です。

 

 

さらに詳しく知りたい方は・・・
 

動画(道総研公式チャンネル)