法人本部

第39回 火山

個性豊かな北海道の活火山
~身近な火山の素顔~

2013年10月23日
環境地質研究本部 地質研究所 髙橋 良(たかはし りょう)

こんなお話をしました 

北海道には多くの活火山があり、特有の美しい景観や、温泉といった多くの恵みを私たちに与えてくれます。しかし、ひとたび噴火が始まると、周辺地域に大きな災害をもたらします。
道南の3火山(駒ヶ岳、有珠山、樽前山)は日本有数の活動的な火山で、17世紀以降、大きな噴火を繰り返しています。20世紀には、これらの3火山に十勝岳を加えた4つの火山で、マグマを噴出する本格的な噴火が起こりました。最近では、2000年に有珠山が噴火し、激しい地殻変動による大きな被害をもたらしました。
20世紀の北海道で最も規模の大きな噴火は、駒ヶ岳の1929年噴火です。この噴火では、約14kmの高さまで噴煙が上昇し、火砕流も発生しました。
また、十勝岳の1926年噴火は、積雪期に起こったため、噴火によって大規模に雪が融け、大きな泥流を発生させました。この泥流によって、山麓域で144人もの死者・行方不明者を出し、20世紀の日本で最悪の火山災害となりました。
これらの火山は、どの山も同じような噴火をするわけではなく、それぞれ特有の個性を持っています。例えば、有珠山や十勝岳は比較的規則正しく噴火を繰り返す特徴があります。また、噴火が発生する前に、地震が多発したり、噴気活動が活発化したりといった、様々な予兆を示すという特徴もあります。一方、駒ヶ岳は有珠山や十勝岳とは異なり、噴火前に明らかな予兆を示さない火山です。
道総研地質研究所では、火山災害の軽減につなげるために、特に活動的な火山(雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、駒ヶ岳)で継続的に観測を行っています。最近の観測に基づくと、道内の火山は比較的落ち着いた状態にありますが、十勝岳ではやや活動が活発化している傾向があります。最近、山腹の温泉で火山活動に伴う成分の変化が認められるようになりました。また、山頂の火口域が膨張する地殻変動も認められています。しかし、過去の噴火前と比較して温泉成分の変化は小さく、マグマの動きに関連する地殻変動は観測されていません。そのため、現段階では今すぐに本格的なマグマ噴火が起こるとは考えにくい状況です。過去の噴火を参考にすると、十勝岳は様々な予兆を示す特徴がありますので、地質研究所では、それらの予兆を捉えるために今後も注意深く観測を続け、火山災害を軽減するための情報を提供していきます。

さらに詳しく知りたい方は・・・

動画(道総研公式チャンネル)