法人本部

第41回 DNAマーカー


DNAマーカー ~品種改良最前線~


 2014年8月22日
農業研究本部 中央農業試験場 鈴木孝子



こんなお話をしました

  • DNAとは
DNAとは、デオキシリボ核酸の略語で、4種類の分子(A:アデニン、T:チミン、G:グアニン、C:シトシン)が長くつながった構造をしています。この中には、私たちの体の設計図にあたる遺伝子の他に、遺伝子を動かすためのDNAや、働きのわからないDNAなどがあります。遺伝子=DNAではありません。DNAのうち、遺伝子に相当する部分はそれほど多くはありません。
  • DNAマーカーを利用した品種改良技術
近年、DNAを利用した研究がいろいろな分野で進んでいます。私たちは、両親間で違いがあるDNAを利用して、病気や障害に対する耐性や、おいしさが判別できる「めじるし(マーカー)」となるものを見つけて品種改良に役立てています。DNAマーカーを使うことによって、使う畑の面積や作業人数を減らしたり、短期間で品種を作ることが可能となりました。
私たちが利用しているのは、両親のおしべとめしべをかけ合わせる「交配」によって得られた子孫を、畑ではなく、DNAで選ぶ技術で、遺伝子組み換えとは異なります。
  • DNAマーカーを使うメリット
この技術を使う一番のメリットは、早くたくさん調査ができることです。また調査する時期を選ばず、いつでも調査できることも長所の1つです。例えば、種をまく前に調査をすることによって、これまでのようにすべての個体を畑に植える必要がなくなりました。
その結果、各個体について、今までよりたくさんの数の病気の抵抗性を調べているのに、使う畑は少なくなりました。
  • DNAマーカーを利用して開発した品種
DNAマーカーを利用した品種改良が始まって10年が経過しました。「ユキホマレR」、「福寿金時」、「リラチップ」がDNAマーカーによって選抜された品種ですが、今後もこの技術によって選ばれた品種がたくさん出てくる予定です。病気に強いものが多いので、農薬を散布する回数も少なく「安全・安心」な品種候補たちです。これらが、みなさんの食卓に届き「おいしい」と言っていただけることを願い、研究を続けていきたいと思います。
  

質問にお答えします 

質問

回答

1

DNA育種において、道総研以外が最も成功した作物とその品種は何で、どのような波及効果がありましたか。

DNAマーカーを利用した品種改良は、国の研究機関、府県では愛知県などが先行して品種をだしています。波及効果はそれぞれ異なりますので、具体的にはご説明できません。

2

DNA育種で得られた品種が遺伝子組み換え作物と勘違いされることが多いと思います。何か勘違いされない良い名称はありませんか。

新たな品種が作られたときに「DNAマーカー利用」と表示することはないので、特に良い名称はありません。

3

小麦を例とした場合、DNAマーカー育種になって、従来の育種と比較して金額ベースでどの程度コスト低減がなされたのでしょうか。

小麦に関しては、育種に関するコストは、金額ベースではDNAマーカーを利用する前とあまり変わっていません。しかし、当時はうどん用の秋まき小麦、パン用の春まき小麦のみの品種改良を行っていましたが、現在は実需のニーズに対応し、秋まき小麦は日本めん用に加えて、パン・中華めん用、薄力菓子用の品種改良も行っています。品質マーカーなどを活用して、圃場や人員を有効活用しているためにできることだと考えています。

4

案内チラシの裏のグラフは何の分析グラフですか。

DNAの配列を解析した図です。アデニン、グアニン、シトシン、チミンの4つの分子に蛍光をつけて、どの順番に並んでいるか解読したものです。

5

農業作物だけでなく、動物(貝類や魚類など)のDNAマーカーは現在明らかになっているのかのでしょうか。

作物以外でも、動物(貝類、魚類含めて)のDNAマーカーの研究も進んでおり、活用されています。



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