第2回 活きがよくなる魚貝
食卓に並べよう! 活きがよくなる魚貝の話
2010年8月10日(火)
本部 研究企画部 木村 稔(きむら みのる)
こんなお話をしました
消費者の水産物に対する国産志向や生鮮魚介類に対する産地や品質への関心は、ますます高まってきています。
しかし、北海道においては、大量水揚げ、大量流通する水産物が多く、鮮度保持の手法に関しては、従来一部の地域や魚介類を除いて積極的に実施されてきませんでした。
今後、北海道産水産物の販売をより優位に進める上で、一時蓄養(いちじちくよう)、活け締め(いけじめ)・脱血(だっけつ)、神経処理といった手法を取り入れ、地元水産物の付加価値向上やブランド化の支援など消費者へ高鮮度な魚貝類を提供する取り組みが求められています。
道総研では、魚貝類は水分が多く腐りやすい特徴があることから、消費者のみなさんに活きの良い魚貝類を食べていただくため、鮮度保持の技術開発を数多く行ってきました。本セミナーでは、その中から、刺身の歯ごたえを維持するヒラメやサケの「活け締め」やホタテガイの鮮度保持など、一般的に知られていない魚貝の「活き」を良くする方法についてご紹介しました。
高級魚のマツカワやヒラメについては、一時蓄養と活け締め・脱血を組み合わせることで、通常水揚げしたものに比べて、エネルギーの通貨と呼ばれるATPの減少と死後硬直が遅れ、肉色も良くなり、鮮度保持に大変有効な手法であることがわかりました。
サケについては、エラの太い鰓弓(さいきゅう)を一本以上切る効率的な脱血により、身色が明るく、卵や白子がきれいになり、特に卵は鮮やかなオレンジ色になります。この卵から筋子を製造すると、発色剤なしでもきれいな仕上がりになります。
また、ホタテガイについては、ストレスの少ない蓄養方法を用いることで、エネルギーの貯金と呼ばれるアルギニンリン酸が増加し、流通上の問題となっている硬化の防止と刺身の歯ごたえを長く維持する技術を開発しました。この蓄養技術は、貝柱への海水注入を組み合わせる「活ホタテ貝柱」として、現在、実用化に向けて取り組んでいるところです。
道総研では、こうした成果を取りまとめ、各種の鮮度保持マニュアルを作成し漁業者等を対象に普及活動を行っています。このような取組みを通じて、消費者の皆さんの食卓に旬の時期のおいしい魚貝類をお届けしたいと思いますので、是非北海道の魚貝類をたくさん食べてください。
質問にお答えします
質問 |
回答 |
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道内の太平洋、オホーツク海、日本海で平均的に一番おいしい地区はどこでとれた魚ですか? |
各海域でとれる魚貝類については、それぞれ旬の時期があるので、その時期のものはどこの海域でもおいしいです。 |
現在、ウニの凍結保存(むき身でも良し)は、どこまで進んでいるのでしょうか? |
生ウニを糖などに浸透させて凍結する技術は、特許として申請されています。しかし、より生の食感に近づけるには、まだ改良の余地はたくさんありますので、いつでも高品質な冷凍ウニを提供できるような技術開発も必要です。 |
マツカワは、生まれてから1年でどの位のサイズになりますか? また、食べられるまで何年かかりますか? |
放流されたマツカワ(約8cm)は、1歳半で全長約25㎝、2歳半で約35㎝、3歳半で雌なら約47㎝にも達する成長の早い魚です。 |
神経処理を行う時に使うピアノ線の太さは、何mmですか? |
1~2mm程度です。
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サケに関する質問ですが、 ①海鮭の場合、頭をたたいて夕方帰るまで砂に埋めておくのはどうでしょうか ? ②川魚の場合、釣った魚を生きたままタモ網に入れて帰るにはエラを切りますが、川の水で長時間生きている場合、鮮〆はどうでしょうか? |
①直ぐに処理することは、鮮度保持に有効です。 ②川魚も同様で、肉の生臭さが少なくなると思います。 |
締めた後はあまり低温で保存しない方がいいとのお話でしたが、10℃前後で保存するのがベストなのでしょうか? それ以上高温だとやはりダメなのでしょうか? |
締めた後に0℃まで冷やしますと、冷却収縮という現象が起きて、死後硬直が早くなり鮮度も落ちやすくなります。 また、10℃以上にしますと臭いや腐敗の影響が出やすくなるので望ましくありません。 |
さらに詳しく知りたい方は・・・
動画(道総研公式チャンネル)
当日の資料(活きがよくなる魚貝のはなし.pdf)
案内チラシ
ご協力いただきました
北海道ぎょれん