第8回 ホタテ貝殻チョーク
リサイクル革命! チョークは海から創られる
2010年11月30日(火)
産業技術研究本部 ものづくり支援センター 吉田昌充(よしだ まさみつ)
こんなお話をしました
ホタテガイの生産は、日本が中国に次ぎ世界の約25%を占めています。北海道の生産量は国内生産の約8割にあたる年間約40万トン、道内漁業生産額の約2割を占める基幹水産物のひとつとなっています。ホタテガイの多くはむき身の状態で出荷されることから、毎年約20万トンの貝殻が排出されています。ホタテ貝殻は、従前よりカキ養殖資材、暗渠疎水材、底質改良材、土壌改良材、飼料などに利用されていますが、その多くは未利用であり、有効利用や用途開発が課題となっています。
道総研ではこれまでにホタテ貝殻の有効利用についての研究や技術支援を行ってきましたが、今回のセミナーではチョーク製造企業である日本理化学工業㈱(美唄市)と共同開発したホタテ貝殻を原料に使ったチョークの事例についてお話ししました。
黒板に使用されるチョークには炭酸カルシウムが主成分の石灰石粉末を粘結剤で固めたものがあり、学校等で使用されています。チョークの特性として、折れにくさとともに、滑らかな書き味や描線の鮮明さが求められています。
ホタテ貝殻は高純度・高白色度の炭酸カルシウムが主成分であり、石灰石の代替利用が期待されています。工業試験場では、ホタテ貝殻の粉末が石灰石粉末と異なる特徴的な形状の粒子であることに着目し、粒子形状や配合組成など各種製造条件の検討を行った結果、従来技術では難しかったチョークの折損強度(折れにくさ)を保持したまま、より滑らかな書き味や描線の鮮明さを向上させたチョークの開発に成功しました。このチョークは平成17年8月より北海道から沖縄まで全国各地で販売され、広く使用されています。
開発したチョークは、北海道新技術・新製品開発賞奨励賞(平成18年)や経済産業省ものづくり日本大賞地域貢献賞(平成19年)を受賞し、北海道リサイクルブランドに認定されたほか、グリーン購入法適応品となり、製法に関する特許も登録しました。平成22年10月にはこの取組みが評価され、リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰の農林水産大臣賞を受賞しました。
質問にお答えします
質問 |
回答 |
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ホタテ貝殻を使うことは、製品原価を上げることになりましたか |
石灰石由来の炭酸カルシウムは、国内調達が可能な資源で様々な用途に使用されています。これに対しチョークに使用可能な性状のホタテ貝殻粉末は石灰石由来のものに比べ現状では高価なため、チョークの製造原価が従来品に比べ上がってしまいます。 |
ホタテ貝殻と石灰の比較の件 石灰石も海由来の貝殻やサンゴと思いますが、ナトリウムやマグネシウムなどの成分が異なってくるのはなぜですか |
文献などによると、石灰石はサンゴや貝などの死がいが堆積してできものと言われています。これらが数億年の長い年月の間に地質的熱変成作用をうけて有機物や金属酸化物、金属硫化物等が揮発や減少することにより白色度の高い石灰石ができたとされています。日本国内には多くの石灰石鉱床がありますが、産出する石灰石の白色度は地域により異なり灰色のものが多いようです。 |
ホタテ貝殻の有効利用が行われていますが、新たな再利用に向けての研究は検討されていますか |
道総研では、様々な自治体や企業などからホタテ貝殻の利用に関する相談・問い合わせをいただいています。 |
ホタテ貝殻からチョークが出来るなんて驚きました。こんなすばらしいことを知り、大変うれしく思います。本当にありがとうございました。 |
ありがとうございます。私たちも排出され未利用であった道内のリサイクル素材を活用することで、廃棄物の有効利用のみならず従来品よりも性能が向上した製品にすることができ、また多くの方々に使用されていることを共同開発したチョーク製造企業から聞き、非常に嬉しく思っております。 |
さらに詳しく知りたい方は・・・
動画(道総研公式チャンネル)
案内チラシ