法人本部

第25話 北海道の豪雨と斜面災害

北海道の豪雨と斜面災害~被災を避けるために(H27.6)

地質研究 石丸聡

北海道は、日本の中でも台風や梅雨の影響を受けることの少ない地域です。しかし、近年全国的に雨の降り方が変わってきており、2014年8月の礼文・稚内や9月の札幌~支笏湖のように、道内でも豪雨による災害を繰り返し目にするようになっています。1990年代末以降、北海道の豪雨の頻度は全国的に見ても特に増加しており、その傾向は道東・道北地方で顕著です。かつては、道内の豪雨斜面災害といえば、豪雨の発生頻度の比較的高い胆振・日高地方や渡島半島など道南を中心としていましたが、近年は1999年苫前町や2010年天塩・遠別、2014年礼文・稚内など、これまで豪雨の発生頻度の少なかった地域でも災害が発生しています。
 
大雨により被災しやすい場所として、沢の出口、浅い谷型斜面の直下、緩斜面末端の崖などがあげられます。沢の出口には扇状の高まりが見られることが多く、山地の谷沿い斜面で崩壊した土砂や谷底にたまっていた土砂が流出・堆積する場にあたります。浅い谷型斜面は、長い時間を経て土砂が堆積している場所であり、降水時には雨水も集まりやすいため、土砂が崩れやすくなります。緩斜面では厚い土層ができますが、その末端が川や海に浸食されると斜面が急になり土層が不安定化します。このような斜面にスプーンでえぐられたような地形が並んでいる場合は、過去に崖崩れを繰り返していることを示しており、特に注意を払う必要があります。これらの場所は、安全面を考慮すれば、できるだけ住宅や施設を建てることを避けるべきです。
 
2000年の日高地方を襲った豪雨では、斜面上部で発生した崩壊による土砂が沢を流れ下り、沢の出口に建つ住宅を破壊したため、1階の崖側の部屋で寝ていた男性が亡くなりました。2006年の胆振・日高豪雨では、浅い谷型斜面の崩壊により、その直下に建つ住宅が押しつぶされました。2階に寝ていた男性は重傷を負いましたが、幸い一命は取りとめました。2014年の礼文島の豪雨では、斜面中腹で崩壊が発生し、直下に建つ住宅の崖側1階の部屋にいた3名のうち、崖に近い場所にいた2名の女性が亡くなり、崖から少し離れた場所にいた男性は重傷を負ったものの命は助かりました。これらの事例が示す通り、大雨の降ることが予想される場合は、なるべく崖から離れた場所で生活し(特に就寝時)、できれば2階を選ぶことで、紙一重のところで命を落とさずにすむことがあるのです。
 
  ・日時:平成27年6月19日(金)12:05~12:55
  ・場所:北海道庁1階 交流広場(札幌市中央区北3条西6丁目)
 
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