法人本部

第29話 道産の有機農産物を食卓に

道産の有機農産物を食卓に(H27.9)

道総研中央農業試験 櫻井 道彦


スーパーマーケットなどでよく見かけるようになった有機農産物ですが、そもそも有機農産物とはどのようなものかご存じですか?

 

有機農産物とは、化学農薬や化学肥料に頼らず、たい肥などで土づくりを行ったほ場で収穫された農産物のことです。化学農薬や化学肥料に依存しない有機農業は、環境や生態系との調和を重んじるクリーン農業の中にあって一つの究極の姿とも言えます。道内で有機農業に取り組んでいる生産者は約650戸あり、20年以上も継続している方も少なくありませんが、有機農産物を食卓に届けるまでには最低3年間の息の長い取り組みが必要で、この期間の技術的なハードルは決して低くありません。

 

例えば、化学農薬や化学肥料を使用する一般的な栽培方法(慣行栽培)では雑草の繁茂を抑えるため除草剤を用いますが、有機栽培では手作業での除草など手間のかかる作業が必要となります。また、土壌養分の過不足や病気、害虫の発生状況によっては、収穫量が大きく低下します。せっかく有機栽培を始めても、これらの問題から初期の段階で挫折してしまう場合も見受けられます。

 

有機農業は気象、土壌、病気、害虫、雑草などの自然環境の影響を強く受けますが、適切な作物・品種を適期に栽培する「適地適作」によって生産を安定化させることができます。病害虫による葉の被害により収穫量が大きく減少するたまねぎでは、生育の早い早生(わせ)品種の苗を春の早い時期に植えることで、葉の被害が拡大する前に収穫期を迎え、慣行栽培に匹敵する収量を確保することが可能です。このようなノウハウは、長年、有機農業に取り組んでいる生産者には当たり前でも、初心者には必ずしもそうではありません。

 

そこで農業試験場では、有機農業に取り組む際の基礎となる技術開発を平成16年から行っています。これまでに、本道の主な有機農産物であるたまねぎ、ばれいしょ、かぼちゃ、水稲については品種の選択から、苗づくり、土づくり、病害虫対策、除草法など栽培期間を通じた一連の管理法を提案しています。また、有機栽培に適したほ場となるよう、畑にすき込むことで地力を高める緑肥を活用した土づくりの方法など、これまでに20以上の成果を公表しています。

 

もちろん、懐の広い有機農業において、これらの成果だけで全てをカバーできる訳ではありません。道総研中央農業試験場では、食の安全に対する消費者の関心が高まる中で、道産の有機農産物が普段の食卓に彩りを添えるような身近なものとなるよう、これからも本道の有機農業を技術面から支えていきます。

 

北海道の有機農業全般については、こちらをご覧ください。

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