法人本部

第35話 アオサギは田んぼで何をしているのか?

アオサギは田んぼで何をしているのか?(H28.3)

道総研環境科学研究センター    玉田克巳    

ゆめぴりか、ななつぼし、ふっくりんこ、おぼろづき。道産米は全国的に見ても人気の高いお米になりました。いまや生産量は全国一位となり、道内の水田の約8割が、石狩、空知、上川地方に集中しています。そして水田ではアオサギをよく見かけます。アオサギは主に夏鳥として全道に飛来し、河川や湖沼、浅瀬の広がる海岸部でもよく見かけますが、道央圏では水田にもたくさん飛来する、水域と関係の深い鳥です。

水田は一年中水が張っているわけではありません。3月中下旬に渡ってくるアオサギは、4月になると、子育てのために高い木に巣を構えますが、まだ水田に水がないため、湖沼や河川で餌をとっています。田んぼでは5月上旬に湛水がはじまり、6月上旬に田植えが始まりますが、田んぼでアオサギが増えるのは、6月中旬以降で、7月下旬にもっとも多くなります。水域と関係の深いアオサギですが、湛水しても直ちに田んぼを利用するわけではありません。ではアオサギは水田でいったい何をしているのでしょうか。この謎を解くために、田んぼと湖沼で、何を食べているかを調べてみました。

湖沼では季節に関係なく、主に魚を獲っており、15㎝未満の小さな魚が多いようでした。そして1匹の魚を獲るのに要する時間は5~10分でした。一方水田では、獲っている獲物のほとんどがオタマジャクシでした。1匹を獲るのに要する時間は平均すると24秒でしたが、多いところでは毎秒毎秒捕獲していました。そして、今回調べた田んぼでは、オタマジャクシはすべてニホンアマガエル(以下「アマガエル」)の幼体で、田んぼで見かけるようになるのは6月中旬以降でした。つまり、アオサギはオタマジャクシを狙って田んぼに飛来することが明らかになりました。

アマガエルは6月ごろから産卵しますが、水中から生える草の茎に目立たない卵を産み付けます。つまり、5月上旬に田んぼを湛水しても、アマガエルは産卵できません。田植えが終わると、苗に卵を産み付けます。そして卵から孵ったオタマジャクシが水田を泳ぎだす6月中旬になると、これを狙ってアオサギが飛来するようになります。アオサギが田んぼに飛来すると、苗を踏み荒らすという被害も出ますが、飛来数が多い割に、被害があまり多くないことは、アマガエルの産卵からの孵化までの間に、植えた苗が根を張ることなどが考えられます。

北海道では、環境にやさしく、安心、安全なクリーン農業を推進していますが、環境にやさしい田んぼは、アマガエルやアオサギの生息環境も作り出しています。クリーン農業の推進が、北海道の生物多様性を保全するためにも大きな役割を果たしていると思います。

▼道総研環境科学研究センター(現 エネルギー・環境・地質研究所)のホームページ