法人本部

ジャム

第12話   広がるジャムのバリエーション

            道総研 食品加工研究センター 槇 賢治

 

ジャムは、果実などに砂糖を加えてゲル状になるまで煮詰めた保存性の高い食品です。原料の組織を破壊しながら加熱し、ペクチンや糖の濃度、酸(pH)が適度なレベルになった時、相互作用によりゲル化する性質を利用して作られます。原料には糖が多く酸味のある果実が適していますが、必要に応じて糖類やはちみつ、酸味料、ペクチンなどのゲル化剤を添加して、原料に不足する成分を補い、食味や食感のバランスを整えたりします。また、風味付けに香料や酒類を添加することもしばしば行われます。

 

ハスカップジャム.jpg  ジャムと言えば、かつては、いちごやオレンジマーマレード、りんごなどが中心で、他の原料を使用した商品を見かけることは稀でした。しかし、近年、食文化の高度化や嗜好の多様化、また業務用の用途拡大などによって、急速に種類が広がりました。最近では、世界各地の果実のほか、酸味のない野菜類や豆類、花弁、ミルクなども原料として使われるようになり、一昔前のジャムのイメージとはかけ離れた商品が多数誕生しています。また、複数の原料を使用したミックスタイプのジャムも増加しています。

糖度や硬さなどのバリエーションもさまざまで、伝統的な高糖度で硬めのジャム、甘さやカロリーを控えた低糖度ジャム、まろやかで伸びがいいスプレッドタイプなど多様な特徴を持った商品が販売されています。また、オレンジマーマレードのように果皮や果肉を含み果実感を楽しめるプレザーブスタイルの商品も多様化しています。

 

ジャムは、原料の選択や風味、食感の調整など、商品を設計する際の自由度が高いため、生産者の創意工夫により独創性に富んだ商品づくりが可能です。当センターにも地域特産の原料を使用したジャムの商品化などに関する相談や技術支援の依頼が寄せられています。

北海道の代表作物である馬鈴薯を原料としたポテトのジャムも、当センターが開発を支援しました。馬鈴薯などでんぷんの多い原料は、加熱して潰すと餡のような食感になり、ジャム原料に適しているとはあまり言えません。当センターでは、ポテトの用途を広げることを目的に、酵素を添加してでんぷんを分解し流動性を高めた「ポテトペースト」を開発し、これを用いたジャム様食品を試作しました。ポテトのジャムは残念ながら現在は販売されていませんが、「ポテトペースト」は、現在、菓子の原料として利用されています。

 

北海道はおいしい食の宝庫です。今後も消費者ニーズや時代のトレンドを反映した個性豊かな商品が生まれ、私たちの食生活を豊かにしてくれることでしょう。

 

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次回は3月の予定です。