法人本部

牛肉

第15話   北海道産牛肉を担う牛たち

道総研 畜産試験場 大井 幹記

 

北海道で飼われている肉用牛は約54万頭、飼養頭数は全国1位の規模となっています。このうち繁殖用及び繁殖素(もと)牛を除く約40万頭が牛肉向けに肥育され、北海道産牛肉としてみなさんのもとへ届けられます。黒毛和種、ホルスタイン種およびこれらの交雑種が大部分を占めていますが、品種ごとに成長や肉質に特徴があります。

黒毛和種の牛肉は、筋肉中に脂が細かく入ったサシ(霜降り)と良質な脂が特徴です。発育は他の品種の牛たちと比べ遅く、去勢牛で約30カ月齢、750kg程度で出荷されます。北海道における繁殖牛を含めた飼養頭数は約19万頭で鹿児島、宮崎に次ぐ全国3位となっています。

ホルスタイン種は乳用牛ですが、オスは牛乳を生産できないことから、ほぼ全頭が肉用として肥育されています。北海道における飼養頭数は約23万頭で肥育牛の半数以上を占め、北海道内で最も多く生産される牛肉です。発育が良く、18~20カ月齢で800kgを超えることも珍しくありません。牛肉中にサシはあまり入りませんが、手ごろな値段が魅力の牛肉です。

交雑種は異なる品種を交配した雑種のことです。肉質の良い黒毛和種を発育の良いホルスタイン種に交配した牛が大半を占め、発育や肉質は両親の中間程度です。北海道では約11万頭が飼われています。

北海道ではこれらの3品種のほか、褐毛和種や日本短角種、アンガス種といった肉専用種およびこれらと黒毛和種の交雑種、ジャージー種などの乳用種が肥育されています。

 

一方、北海道は素牛の供給地でもあります。道内で生まれた子牛は生まれてすぐ、もしくは体重が300kg程度まで道内で育成され、肥育もしくは繁殖用に都府県の生産者へ販売されます。そのため、都府県産の牛肉であっても生れは北海道ということがあるかも知れません。

牛肉の生産履歴(品種、出生地、移動履歴)は家畜改良センターのHPから個体識別番号(10桁)を入力することで見ることができます。個体識別番号は国産牛肉のパックのラベルに表示されています。また、販売店や国産牛肉を提供する専門の料理店(焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼き、ステーキ)の店頭に掲げられています(輸入牛肉にはありません)。

 

黒毛和種の牛肉  好みは十人十色ですが、牛肉のおいしさは黒毛和種では、主に牛肉中の脂の量が関係すると言われています。近年では脂の質、特に脂肪を構成する脂肪酸のうちオレイン酸に代表される一価不飽和脂肪酸の割合が注目されています。長野県や鳥取県、大分県では牛肉中のオレイン酸の割合を測定し、一定の基準をクリアしたものに認証を与える制度があります。畜産試験場肉牛グループでは、北海道産牛肉の品質向上を目指し、枝肉市場において迅速に脂肪酸組成を測定するための研究に取り組んでいます。また、黒毛和種を中心とした肉用牛の生産性向上のための技術開発に取り組んでおり、遺伝能力の評価や輸入飼料に頼らない飼養法の研究を行っています。

 

 

▼道総研畜産試験場ホームページはこちらから

 

 <参考>


農林水産省

牛肉の生産履歴(トレーサビリティー)について

http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/trace/index.html

肉用牛の飼養頭数等(畜産統計)

http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tikusan/

牛肉の生産量等(畜産物流統計)

http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tikusan_ryutu/

 

次回は6月の予定です。