法人本部

コンブ

第18話   リシリコンブの不思議

道総研 稚内水産試験場 川井 唯史

コンブの写真 北海道の沿岸には「食べられる種類のコンブ」が豊富に分布しており、日本のコンブ生産量のほとんどを占めています。中でもリシリコンブは古くから高価な品として扱われ、主に道外に運ばれていました。透明で香りが高い出汁がとれるためお吸い物などに最適で、京都の高級料亭などでは、出汁(だし)コンブとしてよく利用されています。リシリコンブには、天然物と養殖物があり、天然物は特に香りが深く絶品で、高級品として扱われています。また、天然物は冬から春に芽生え、1年目で1m程に生長しますが、漁獲されるのはさらに大型化した2年目のものです。

  このように日本の食文化にとっては欠かせない天然物のリシリコンブですが、多くの謎を持っており、その一つは、年により豊漁や凶漁が生じ、生産量が不安定なことです。この原因解明は水産試験場の創設初期から取り組まれているもので、最近になって豊凶に関する秘密が一つ明らかになりました。

水産試験場では、リシリコンブの謎を解明するため、従前からコンブ藻場の実態把握に取り組み、毎年「どのくらいのリシリコンブがあるのか」を継続して調べています。コンブは古くからの漁獲統計の情報はあるのですが、これはコンブ漁に出た日数等の人間の都合による影響が大きいので、生育しているコンブの量を必ずしも正確に示しているとは限りません。そこで、コンブ資源の年による推移をより正確に把握するため、時期と場所と方法を決めたコンブ藻場の潜水調査を毎年行っています。その結果、1年目のリシリコンブの豊凶は海水温が高いか低いか、海水の栄養分が多いか少ないかによる影響が大きく、さらにコンブの芽を食べてしまうウニの影響も受けていること、そして、このような海水の環境やウニによる影響を、特にリシリコンブが芽生える時期である冬に強く受けていることが分かってきました。

 しかし近年、更なる問題が発生しており、主な産地である利尻・礼文島では収穫量が大きく減少しています。その理由として、最近は、地域によって2年目まで生き残ってくれるリシリコンブが少なくなったと言われるようになりました。リシリコンブは2年目のものが商品となるので、いくら1年目のコンブが豊富でも2年目まで生き残ってくれなければ困るのです。今後はこの原因を解明して対策を検討し、北海道が誇れる食品の一つである美味しいリシリコンブを日本伝統の食材として安定生産できるよう、貢献していきたいと思います。

 

 

▼道総研稚内産試験場のホームページはこちらから

 

 

 

次回は9月の予定です。