法人本部

スルメイカ

第19話   スルメイカ~来遊予測と利用~

道総研 函館水産試験場 澤村 正幸

 

   函館市の「市の魚」でもあるイカには多くの種類があり、そのうち、道内でも全国的にも水揚げが最も多いのが「スルメイカ」です。函館周辺でのスルメイカは、主に定置網や釣り漁業で漁獲され、イカ釣り船の漁り火は、6月から翌年の1月まで、街の灯りと共に函館の夜景の一部として、観光資源にもなっています。

  食物語スルメイカ写真 

スルメイカの寿命は1年で、翌年への資源の持ち越しがないため、資源量の推定は年ごとに行う必要があります。また、日本列島沿いを、春から夏にかけて北上、秋から冬にかけて南下する、大規模な回遊を行うことから、地域別の漁況は、来遊時期や経路によっても大きく変化します。函館水産試験場では、スルメイカの来遊予測や資源量推定のため、調査船・金星丸による漁獲調査を行っており、結果は「北海道浮魚(うきうお)ニュース」としてホームページ上でも公表しています。

(写真は、試験調査船・金星丸でのスルメイカ調査風景)

 

近年の傾向として、スルメイカの漁期や漁獲のピークが、全体的に遅くなる現象が見られ、函館周辺でも年間の漁獲のピークが、過去より遅い11月から12月に来る年が多くなっています。これは、温暖化に伴う夏季の海水温の上昇により秋の南下が遅れ、さらに産卵期が遅くなることで翌年生まれる稚イカの北上の開始も遅くなってきているためではないかと考えられます。

 

さて、これまで世界的にはあまり利用されてこなかったイカ類ですが、近年は需要が高まり、輸入価格も高騰しています。その中で、国内での安定した自給が続いているスルメイカは、胴の部分だけが刺身やイカ焼きに利用され、頭部と腕(いわゆるイカゲソ)や内臓の部分は、利用されずに捨てられてしまうことも多いようです。

 

過去にはイカスミが液晶の原料に使われていた時代もあり、現在でも、漁業用の餌への内臓の加工や、各種の有用成分の抽出などが研究されていますが、有効利用のためには、一般家庭で作れる料理のバリエーションを増やすことも必要でしょう。

そこで、おすすめのイカゲソ料理法をいくつか紹介します。なお、料理の際には、まず最初に口の部分にある固く鋭いくちばし(いわゆるカラストンビ)を取り除いて下さい。

 

(1)イカゲソ揚げ

イカゲソは、イカが小さければ半分割り、大きければ腕2~3本ずつに縦に切り分け、天ぷらの衣や唐揚げ粉をつけて揚げます。ただし、そのまま揚げると加熱で発生した水蒸気が皮の下や眼の中にたまって破裂し、油が飛び散って危ないので、眼は必ず取り除き、衣をつける前に皮に包丁で細かく切れ目を入れておきます。

(2)イカゲソと里芋の煮物

皮をむいた里芋と丸ままのイカゲソを、醤油、砂糖、みりんなどで味付けしながらだし汁で煮込みます。里芋の代わりにジャガイモを使い、ニンジンやコンニャクなども加えて肉じゃが風の煮物にすることもできます。

(3)イカカレー

肉の代わりにぶつ切りにしたイカゲソをカレーの具に使います。胴の部分を使わずゲソだけで作ると、ゲソのこりこりした食感が引き立ちます。トマトや夏野菜を多めに使って夏向きのさっぱりした味に仕立てるのが良いでしょう。

 

参考になったでしょうか?ぜひお試しになってみてください。

▼道総研函館水産試験場のホームページはこちらです。

  http://www.hro.or.jp/list/fisheries/research/hakodate/ 

 

次回は10月の予定です。