法人本部

サンマ

第20話   秋の味覚「サンマ」

           道総研 釧路水産試験場 三橋 正基

 

  数ある秋の味覚の中で、サンマもその一つとして数えられるでしょう。 サンマは、北海道太平洋沿岸からカリフォルニア沿岸まで広く分布する魚で、北海道東部沖の太平洋(道東沖)では、7月上旬から11月上旬にかけて漁獲されます。

漁期の前半である7月上旬から8月中旬頃に道東沖で漁獲されるサンマは、三陸沿岸及び沖合を北上したものです。このサンマは産卵期で、卵巣や精巣が成熟し痩せています。この群れを北上群と呼んでいます。

また、8月に入ると、本格的なサンマの群れが道東沖に来遊します。これは北太平洋に広く分布する群れの一部で、6、7月頃には、北緯45~50度の暖水域と冷水域の境界に当たる潮境(しおざかい)にまで北上します。その後、千島列島周辺に流れる親潮に沿って餌を食べながら南下し、丸々と太り脂の乗ったサンマとなって道東沖合域へやってきます。この群れを南下群と呼んでいます。

この南下群は、8月~11月上旬頃まで道東沿岸に分布し、その後は海水温の低下と共に三陸沿岸、常磐沿岸、銚子沖へと分布が移動し、漁場もそれに応じて移っていきます。その後のサンマは沿岸から離れて東方へ向かい産卵するとされています。

 

秋の味覚と言われるサンマは、餌となる動物プランクトンが豊富な海域で、餌を十分に摂り脂肪を蓄えて来遊する南下群で、漁業が本格化し、漁獲量が多くなる8月下旬から水揚げ量が増えて、価格も安くなり、スーパーなどで販売されるようになります。

このように、サンマには大別すると二つの群がありますが、日本の太平洋沿岸で漁獲されるサンマのほぼ100%は南下群で、年間の漁獲量は数十万トン(19.3万トン~30.3万トン)に上ります。

サンマは消化吸収率の高いタンパク質、また、脳血栓、心筋梗塞を予防する働きのあるEPAや、乳がん、大腸がん、肺がんの抑制、記憶や学習機能の向上、老人性痴呆症の防止に効果があるとされるDHAといった良質な脂肪が豊富なことで知られています。

一般的にみなさんは、脂の乗ったメタボなサンマを好まれると思われます。購入するときの見方としては、体長が大きく、同じ体長であれば太さのある物の方が脂ののりが良く、さらに頭部の後方の背の部分が盛り上がっているものが良いでしょう。

  釧路、根室管内では、このサンマに関わる産業(漁業、加工、流通など)は地域経済の維持・発展には欠かせないものとなっています。

また、サンマ資源の来遊状況の予測や資源の評価などは、非常に重要な事業となっており、これらの事業については、国の水産総合研究センター東北区水産研究所が中心となり、道や東北県の水産試験場や漁業情報サービスセンターが連携して取り組んでいます。特に漁期が始まる前の6月から7月に実施される調査では、釧路水産試験場の試験調査船北辰丸も活躍しています。

 

なお、釧路水産試験場では、サンマをはじめイワシ類やサバ類についても調査研究を行ってます。これらの魚種では、北辰丸の調査で得られた結果が漁況予報等にも活用されています。北辰丸での調査結果は、「浮魚ニュース」として随時ホームページに掲載されますので、一度ご覧になってみてください。

 

 

▼「北海道浮魚ニュース」はこちらをご覧ください。

  http://www.hro.or.jp/list/fisheries/research/central/section/shigen/ukiuo/index.html  

 

▼道総研釧路水産試験場のホームページはこちらです。

  http://www.hro.or.jp/list/fisheries/research/kushiro/index.html  

 

次回は10月下旬の予定です。