法人本部

やまのいも

第24話   北の食材「やまのいも」の話

道総研 十勝農業試験場 田縁 勝洋

“やまいも”は、植物学上の呼び名と野菜としての通称が混用され、また、地方によっても異なった呼び名があることから、きわめてまぎらわしい作物ですが、一般には、栽培されている「やまのいも」(ながいも、いちょういも、つくねいも)、「じねんじょ」、「だいじょ」の総称を“やまいも”と言います。北海道でやまいもといえば「ながいも」を想像する方が多いと思いますが、17世紀に中国から移入して栽培されたもので、日本原産で山野に自生している「じねんじょ」とは別の種類です。

 

日本古来種の“やまいも”とされる「じねんじょ」は、山野に自生し、さといもや稲が渡来する以前には、主食として食べられていたとも言われています。いもは細く、くねくね曲がって育つため収穫が大変で、その一部はパイプを地中に埋めて真っ直ぐ育てるパイプ栽培が行われています。

 

いちょういも  一般に栽培されている「やまのいも」は、いもの形の違いによって「ながいも」、「いちょういも」、「つくねいも」と呼ばれていますが、分類上は同じ仲間です。栽培地域は、「いちょういも」は関東、「つくねいも」は関西が中心ですが、「ながいも」は南は鳥取県、北は北海道まで広範囲とな っており、南方原産の作物であるにもかかわらず、環境に対する適応能力が高い作物です。

 

 

やまのいもは、オスとメスが別株のつる性植物ですが、全国で栽培されている「ながいも」はすべてオス株、「いちょういも」はメス株です。北海道で作付けされているやまのいものほとんどが「ながいも」ですので、オス株である「ながいも」だけでは種ができず実が着生することはありません。では、「ながいも」はどのように増やしていくのでしょうか?

 

むかごと種.JPG  下部にできる担根体(茎と根の中間の特性を持つ器官)と呼ばれるいも(食用部)や、地上部にできる“むかご”を種芋として使って栽培します。“むかご”とは、葉の付け根に相当する部分が変形した養分の貯蔵器官で、正確には実ではありません。しかし、同じ畑で「ながいも」と「いちょういも」を栽培すると、メス株である「いちょういも」に実が着生することがあります。夏の「やまのいも」畑では、花が開花するとシナモンに似た甘い香りがし、この香りで昆虫を集めて受精を助けてもらっていると考えられています。

 

 

十勝農業試験場では、20年以上前から「やまのいも」の人工交配による品種開発に取り組んでおり、病気に強く、とろろの粘りが強い「いちょういも」と、冷涼な北海道でも大きく成長する「ながいも」をかけあわせ、両親の長所をあわせ持った品種を目指して研究を進めてきました。そうしてついに、「やまのいも」新品種「十勝3号(品種名:きたねばり)」の育成に十勝3号イモ 成功しました。いもの形は、「ながいも」より太くて短く、両親の良い性質を受け継いでいます。また、「ながいも」に比べ、とろろの粘りが強いことから、一般の生食用以外に、いろいろな加工用途での利用場面が考えられ、パン生地に混ぜたり、お菓子に利用したりと新たな商品開発につながるよう引き続き研究に取り組んでいるところです。

 

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次回は2月の予定です。