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ワイン

第25話   今こそ北海道産ワインを飲もう!

道総研 食品加工研究センター 富永 一哉

昨年仕込んだ新酒のワインが、そろそろ美味しくなる頃です。現在、道内には、ワインメーカーが19社あり、多様なワインを楽しむことができます。北海道で本格的なワイン造りが始まったのが、池田町で約50年前のことですから、驚くべき発展です。そこで、ここまで発展した北海道のワイン造りについて、技術の面からご紹介します。

 

  ブドウを原料としているワインは、原料の善し悪しが直接ワインの品質に影響します。北海道のブドウ栽培地域の気候は、ブドウ栽培の目安に用いられている「ウィンクラー博士のワイン産地気候分類」によると、ブドウを栽培できる地域としては一番寒い地域に分類されますが、一部の地域はそれよりも寒く、非常に高度な栽培技術が要求されます。一方、本州よりもブドウの生育期における日照量が多く、降水量が少ないため、病害のない果実を収穫しやすいという利点もあります。こうした点は本州の大手ワインメーカーも注目しています。実際、道産の原料ブドウを山梨まで運んで醸造しているメーカーもあり、近年では本州からの移住者がワイン造りに挑んでいる例もあります。

 

道産ワインの各メーカーとも、ブドウ栽培と醸造技術の両面から、技術者の育成に努めています。先進地域であるヨーロッパやアメリカで研修をした数多くの技術者を抱えているメーカーもあり、道産ワインの高い品質を支えています。また、若い世代の中では、醸造学科を持つ本州の大学で本格的にワインを勉強した技術者が増えており、基礎から学んで蓄積された技術が実際の生産に生かされています。

 

北海道産のブドウは、その冷涼な気候から酸味が強く、ワイン醸造においては、乳酸菌を使ってリンゴ酸を乳酸に変換し、酸味を柔らかくするマロラティック発酵(MLF)という工程が重要となっています。

 

食品加工研究センターでは、赤ワインの高品質化に向けて、市販の乳酸菌を使ったMLFの技術開発を行ってきました。しかしながら、北海道の冷涼な気候では市販の乳酸菌は発酵が進みにくいことから、池田町の協力を得て、MLFに関わる乳酸菌の研究に取り組み、赤ワインから低温での生育能力に優れた乳酸菌株を取り出すことに成功しました。現在、この乳酸菌の普及を進めています。

 

また、北海道ワイン(株)の協力を得て、ワインの中に存在する香り物質が抗酸化の働きを持っていることを明らかにし、ワインの新たな魅力を発見することに成功しました。最近は、低温で活発に発酵する酵母の選抜研究に取り組んでいます。こうした研究に加え、2006年からスタートした道産食品独自認証制度(きらりっぷ)におけるワインの規準の作成や審査も担当し、業界の支援に全力を挙げているところです

 

北海道のワインは、著名なワインライターやソムリエからも非常に高い評価を受けるようにもなりました。食事のお供に魅力いっぱいの道産ワインを飲んで楽しいひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

 

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次回は3月の予定です。