法人本部

第5話 北海道の温泉と火山

北海道の温泉と火山 (H25.8)

環境・地質研究本部 地質研究所 柴田 智郎(しばた ともお)

 

夏が過ぎ、秋の足音が近づいてきました。色づいた木々の葉を眺め、温泉につかりながら、のんびりするのはいかがでしょうか。

温泉というと、温かいお湯が自然に沸き出しているものを思い浮かべるかもしれませんが、現在の温泉法では必ずしもそれだけではありません。冷たい水であっても、いろいろな成分などを含んでいる自然の水(冷鉱泉)や、井戸を深く掘りポンプを使って人為的に汲み上げている温かい水も温泉に当てはまります。

日本には、いたるところに温泉がありますが、よく見ると、火山の周辺に多く集まっていることがわかります。このような温泉は火山性温泉と呼ばれ、火山の活動と深く関係しており、地下水がマグマの熱によって温められたものです。地下水が岩石の割れ目などを通り地下深く浸透すると、マグマ周辺の高温の岩石によって加熱され、「熱水」と呼ばれる非常に高温の水や水蒸気になります。熱水は、周りの岩石中の成分を溶かし込み、地表に向かい上昇します。さらに、マグマから放出された火山ガスとともに、浅部にある地下水を温めて温泉を生成し、地表に湧き出します。

温泉は、大昔から変わらず、「こんこん」と湧き出しているイメ-ジがありますが、実はそうではありません。北海道の南西部にある洞爺湖温泉は、1910(明治43)年の有珠(うす)山の噴火で誕生した新しい温泉です。当時の農商務省の技師であった佐藤伝蔵氏によれば、噴火活動で隆起した明治新山の付近の湖岸で温泉が湧出したそうです。

 

このように、温泉と火山活動は密接に関係しているため、火山活動が変化すると温泉にも変化が現れます。1988~1989(昭和63~平成元)年の十勝岳の噴火では温泉の成分が、2000(平成12)年の有珠山の噴火では温泉の温度や水位、成分が変化したことがわかっています。温泉はいわゆる「地下から送られた手紙」と言えます。地質研究所ではこの「手紙」を読み解くために、温泉に関する様々な観測をしています。



北海道には今回紹介した火山に関係のある温泉のほかにも、平野部で見られる非火山性の温泉も数多くあります。夏の疲れを癒し、地下からの手紙に心身ともにつかってみませんか。

 

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