■研究の背景
　高齢化社会に伴う骨再生医療では、生体組織を模倣する人工材料の開発が期待されています。 リン酸カルシウム水溶液を用いた部分溶解・析出法は、バイオセラミックスの生体模倣性を付加する湿式合成技術として、 崩壊吸収と体液浸透を促進する微細構造の設計・制御に有効と考えられます。
　そこで、バイオセラミックスの表面改質と機能設計を目的として、超音波や攪拌溶解析出法により、市販多孔性バイオ セラミックス製品を部分溶解後、リン酸カルシウム結晶を再析出・複合化したセラミックスを作製し、その結晶相、微細 構造と生体吸収性の関係等を検討しました。

■研究の要点
１．市販多孔性バイオセラミックスの選定と切断加工、部分溶解
２．酸処理条件（攪拌法、超音波法）の検討
３．リン酸カルシウム結晶の析出処理
４．多孔性バイオセラミックスの物理的・化学的特性評価
５．多孔性バイオセラミックスのウサギ大腿骨組織内へ埋入試験

■研究の成果
１．硝酸による部分溶解では、時間の経過に伴い、溶解効率は増加、機械的強度は低下しました。
２．超音波溶解は溶解効率が高く、微小亀裂を発生させる効果的な酸処理法であることが分かりました。
３．多孔性水酸アパタイトの超音波溶解・析出（pH 9～10）では、水酸アパタイト単一相が得られました。
４．表面改質された水酸アパタイトは、優れた骨伝導と生体吸収が認められ、生体模倣バイオセラミックス
　　として骨再生医療への応用性が示唆されました。