第12話 海岸防災林

津波からくらしを守る海岸防災林 (H26.3)

道総研林業試験場 佐藤 創(さとう はじめ)

 

2011(平成23)年3月11日、日本国民にとって忘れることのできない出来事、東日本大震災が発生しました。津波により東北地方、関東地方の海岸防災林は様々な程度の被害を受けましたが、同時に海岸防災林が人々の生活や建物への被害を小さくする働きも確認されました。一方で、津波の勢いが強かった場所では、防潮堤すら流されたぐらいなので、そのような場所では海岸防災林も流されてほとんど役に立たなかったに違いありません。奇跡の一本松で有名になった高田松原のクロマツ・アカマツ林は高さ15mを超す津波により樹齢約200年、胸の高さの位置で直径70~80cmある、樹高25mの高樹木を含む約7万本が1本を残して流されてしまいました。いったい海岸防災林の津波被害を軽減する力はどの程度なのでしょうか?

  まず、津波に対する被害軽減効果としては以下のものがあります。
①津波エネルギ-の減衰効果 ②津波到達時間の遅延効果 ③浮遊物の捕捉効果 ④波にさらわれた人がすがりつき、引っかかる対象となる効果 ⑤強風による砂丘の移動を防いで海岸に高い地形を保ち、津波への障壁となる効果
東日本大震災を含む過去の津波被害での記録では、①と③が多くなっています。すなわち、海岸防災林の背後の住宅が流出を免れたり、海岸防災林が船や流木などの浮遊物を捕捉して背後の住宅が破損を免れたりする例が多くなっています。②については、実際に効果があってもわかりにくいために、検証事例が少ないのですが、避難時の生死を分ける重要な機能です。④については、海水温が高かった2004(平成16)年のインド洋大津波では特に有効でした。⑤は効果が間接的ですが、1993(平成5)年の奥尻島での津波の際に砂丘一体となった海岸防災林が内陸への津波の遡上を防いだことがわかっています。

  次に、このような海岸防災林の効果も津波の規模が大きくなるにつれて、林自体が破壊されてしまうために失われてしまいますので、どの程度の規模の津波であれば林が破壊されずに上記の効果を発揮できるかを見極める必要があります。これまでの研究により、津波の高さが3m程度まで(昭和三陸地震津波1993年)であれば、林の奥行きが10m以上あれば効果を発揮できることがわかっています。東日本大震災では、津波の高さが3mを超えると林の奥行きが100mは必要になり、9mを超えると海岸防災林が破壊されてしまい、効果を発揮できないことがわかりました。現在、北海道の太平洋岸では2012(平成24)年に津波浸水予測が見直され、それに対応するように海岸防災林の新たな整備が計画されています。各現場で予想される津波の高さに応じて林の奥行きを決めるなどの対策が必要となっています。

 

▼道総研林業試験場のホ-ムペ-ジはこちらから

ページのトップへ