第15話 ワインと北海道

ワインと北海道(H26.6)

道総研食品加工研究センター 富永一哉

「ワインはキリストの血、パンは肉」と言う言葉を聞いたことがあるかと思います。カトリックの教会ではワインが必需品で、布教の拡大とともにワインの生産も全世界に広がって行きました。そして、その製造技術も教会や修道院の中で守られ、発展していきました。そこに科学のメスが入っていくのは、1862年のルイ・パスツールによる低温殺菌法の開発を待たなければなりませんでした。経験と勘によって製造されていたワインを、植物学や微生物学、化学の知識を元に製造できるようになったわけです。それでも、美味しいワインを造るには、未だに経験と勘が重要になる場合があります。何故なら、原料であるブドウの生育環境は天候や土壌などの自然に左右されるからです。

中でも冷涼な気候はブドウの栽培には大きな障害で、北海道のワイナリーではこの克服に多大な努力をしてきました。十勝ワインで有名な池田町が本格的にワイン造りに挑み始めた約50年前は、寒さに強い品種の選抜・育種、栽培方法の改良と、大変な苦労をしたと聞きます。多くの人々の苦労が実を結び、国産のワインの中でも大きな位置を占めるようなってきました。その最大の理由は、導入に成功した多彩な欧州系のブドウ品種の種類と生産量です。ワイン専用品種の生産量ではいつの間にか国内最大になっていたのです。このことが多くの人の注目を集め、それまで10社程度であったワイナリーの数は今世紀に入る頃から急速に増え始め、現在20社を超えて、今年度中には25社ほどになろうとしています。

このように大きな産業に成長しようとしているワイン業界に対して、当センターも技術面で支援しており、赤ワインの高品質化に必要な低温環境下でもよく働く乳酸菌株の分離やワイン中に存在する抗酸化活性を有する香り物質の強化などの研究で成果を出しています。現在も新たな研究を開始しており、北海道の醸造環境に適合した酵母の分離と醸造試験や、ワインの特性を際立たせる成分の検出と官能試験の結果との相関の解析など、今後の品質向上に繫がる研究を進めています。また、こうした知見を実際の製造現場に生かすための技術指導にも積極的に取り組み、業界から歓迎されています。

現状でも、道産ワインは著名なワインライターやソムリエからも非常に高い評価を受けています。小規模のワイナリーでは、製品を市場に出すと、あっという間に売り切れてしまうこともあります。さらに飲食業界で、道産の新鮮な食材を用いた欧風料理や、生産者が100軒を超えたと言われる道産チーズ等と道産ワインをマッチングさせる企画が増え、道産ワインに多くの方々の注目が集まってきています。産業の集積が一定の水準を超えると、それまでとはけた違いに集積度が高まることがあります。北海道のワイン産業の大発展を支えるべく、当センターでは今後も研究開発と技術支援にまい進して参ります。

▼メルマガ連載コラム『今こそ北海道産ワインを飲もう!』(H25.2月発行) もお読みください。

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