第16話 日本海沿岸津波履歴

日本海沿岸の津波履歴を探る(H26.8)

道総研地質研究所 川上 源太郎

21世紀に入って発生した二つの巨大津波-2004年のスマトラ島沖地震、2011年の東北地方太平洋沖地震による津波-は、我々の自然観を大きく変える出来事でした。「数千年のタイムスパンで見たとき、一体どれくらいの規模の津波が、どれくらいの間隔で襲来しているのか?」ということが、沿岸の防災を考える上で必要不可欠な事項となりました。北海道の日本海沿岸では、1993年の北海道南西沖地震による津波災害が記憶に新しいところですが、それ以前にも1983年日本海中部地震や1940年の積丹半島沖の地震などによる津波被害が知られています。また1741年には噴火にともなって渡島大島が大規模に崩れ、大きな津波が発生しました。この津波による檜山沿岸域の死者数は1,500~2,000人ともいわれています。

 

では、それ以前はどうなのでしょうか? 北海道は残されている歴史文書が少ないので、この問いに答えるには津波が地層中に残した痕跡である"津波堆積物"から読み解くしかありません。道総研地質研究所ではこれに答えるべく、北海道の日本海沿岸の500か所を超える地点で調査を行ってきました。調査地は海岸線から1 km以内の湿地や泥炭地などが理想で、泥炭層や粘土層の中に海から運ばれた砂の層などがはさまれていないかを調べます。地面の下なので、パイプのようなものを突き刺して地層を抜き取り、2~3mくらいの深さまで確認します。また泥炭が厚いところでは、ボーリング調査なども合わせて行いました。

調査の結果、奥尻島と対岸の檜山沿岸域に過去にくり返し津波が襲来していることがわかってきました。泥炭層に、海から運ばれたと考えられる砂層が複数見つかったのです。津波堆積物が堆積した年代は、地層中の有機物を分析することで知ることができます。奥尻島では過去3000年間の地層中に、5層ほどの津波堆積物が残されていました(写真)。さらに詳細な検討の結果、13世紀頃に堆積したと考えられる津波堆積物と、1741年の渡島大島の津波堆積物が、1993年南西沖地震の津波を超えるような高い場所、かつ内陸深くに残されていることが判明しました。

私達はこの結果を受けて、今後この二つの津波による浸水域の広がりを復元し地図上に示すことによって、より直接的な防災情報として活用する必要があると考えています。

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