第17話 オホーツク海沿岸津波履歴

オホーツク海沿岸の津波履歴を探る(H26.9)

道総研地質研究所 川上 源太郎

第16話に引き続き、北海道沿岸の津波の履歴調査についてお話します。今回はオホーツク海沿岸域の調査結果です。

オホーツク海では大きな地震の記録がほとんど無いのですが、1956年3月に同海域で発生したマグニチュード6.3の地震により、網走や紋別で津波が観測されています。津波による被害はなかったようですが、地震によって建物に被害がありました。また太平洋で発生した大きな津波、新しいところでは1994年の北海道東方沖地震や2011年東北地方太平洋沖地震の津波が、オホーツク海沿岸の網走や枝幸港でも潮位計により確認されています。さらに、古くは1960年のチリ地震津波による潮位変化の観測記録もあります。このように、オホーツク海沿岸域にも津波は到達しているのですが、大きな被害を出したという記録はありません。

写真:地層調査の様子(浜頓別町)

それでは、観測が始まる以前はどうなのでしょうか。私達は、北海道からの委託調査や地質研究所独自の調査として、これまで200地点ほどで調査を行ってきました(写真)。オホーツク海沿岸は日本海沿岸とくらべて湿地や泥炭地となっている場所が多く残されているので、津波堆積物調査には適した地域といえます。"津波が発生していれば津波堆積物が残されるに違いない"と思われる場所で、パイプを突き刺し地層を抜き取るという作業を繰り返しました。その結果、オホーツク海沿岸域には明白な津波堆積物が残っていないことが確認できました。枝幸・興部・斜里では深さ10 m程度のボーリング調査をあわせて行いましたが、過去4000年間の地層中にはっきりとした津波堆積物は認められませんでした。

地震の記録が少ないことからも想像できるように、オホーツク海は地質の条件として大きな地震がひんぱんに発生する場所ではありません。はっきりとした津波堆積物が残されていないことも、少なくとも過去数千年にわたり大きな津波が発生していないことを示していると考えられます。それでは、津波の心配は不要と考えていいのでしょうか? 東日本大震災の教訓から、想定外をなくす努力が求められています。時間軸をさらに長くとれば、大きな津波が発生しているのかもしれませんし、海底地すべりなどほかの要因で津波が発生する可能性も0(ゼロ)ではありません。北海道庁はこのように想定が難しい中で、網走沖や紋別沖を津波の発生源とする想定津波にもとづいた浸水予測図を公開していますし、それをもとに地元市町村がハザードマップを作成しています。海に近い場所にお住まいの方は、ぜひ一度じっくり眺めてみることをお勧めします。

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