第2話 エゾシカ

どうやって数える?エゾシカの生息数(H25.5)

環境・地質研究本部 環境科学研究センター 稲富 佳洋(いなとみ よしひろ)

自動撮影カメラに写ったシカ.jpg  平成23年度の農林業被害額は64億円、自動車や列車との衝突はそれぞれ2,000件以上、さらには、生態系にまで悪影響を及ぼす・・・もはや「被害」ではなく「災害」とまで言われ、すっかりマイナスのイメージが定着してしまったエゾシカですが、現在、全道でどの程度の頭数が生息しているのかご存じでしょうか?北海道の発表によると、平成23年度のエゾシカの生息数は、およそ64万頭と推定されています。今回は、このエゾシカの生息数が、どのように推定されるのかについて、ご紹介したいと思います。

当然のことですが、エゾシカは、人間社会のように国勢調査をしているわけではありませんし、人目につきにくい森林を主な生息地としているため、全数を数えるのはまず不可能です。従って、エゾシカに関する間接的な情報から、生息数を推定するしかありません。その核となるのが「ライトセンサス」という調査です。

ライトセンサスは、夜間に自動車で低速で走行しながら、両側をライトで照射し、発見したエゾシカを数えるという調査で、毎年10月に離島を除く全市町村で実施しています。ライトセンサスは、毎年の増減傾向を把握することが目的ですので、毎年同じコースを、同じ時期、同じ時間帯に実施するということが非常に大事になってきます。調査は、北海道が市町村や猟友会と協力して実施し、環境科学研究センターは、全道で実施されたライトセンサスのデータを解析する役割を担っています。

ライトセンサス3.jpgのサムネール画像  しかし、ライトセンサスの結果だけでは、毎年の増減が分かるだけで、生息数を推定することはできません。また、年ごとの気象変化による観察条件の違いなどにより、観察頭数が実際の増減より少なく見積もられてしまう年があることもわかっています。エゾシカの一年間の増加率は15~20%と言われており、捕獲をしないと、4年でエゾシカが約2倍に増加する計算になります。つまり、毎年、生息数の20%以上のエゾシカを捕獲できれば、ライトセンサスの結果は減少するはずですし、20%以下ならば増加することになります。そこで、ライトセンサスの結果に、エゾシカの繁殖や捕獲に関する情報を加味し、ライトセンサスの動向を説明するのに最も妥当な生息数を計算しているのです。

このような解析によって、道東全体など広い範囲での生息数は推定することが可能となりましたが、振興局単位や市町村単位、森林単位など、狭い範囲での推定精度は低いという課題が残っています。この課題を解決するために、現在、環境科学研究センターでは、赤外線センサーで動物を感知する自動撮影カメラを道有林内に設置し、より狭い範囲でエゾシカの生息密度を推定できる手法の開発に取り組んでいるところです。

今やすっかり身近な存在になったエゾシカですが、生息数を推定するという作業は、不確実性が大きく、大変な労力も伴うものなのです。


道総研環境科学研究センターのホームページはこちらから


◇もっとエゾシカについて知るために◇
北海道環境生活部環境局生物多様性保全課エゾシカ対策グループ
 


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