第22話 吹雪の視界計測

吹雪の視界計測(H27.1)

道総研工業試験場 三田村智行

「雪は天から送られた手紙である」これは、世界で初めて人工雪の作成に成功した中谷宇吉郎(なかや うきちろう)博士の言葉です。雪の結晶を観察すると、結晶が成長した上空の気温や水蒸気の量などがわかるということを表したものです。ウインタースポーツや、雪まつり・冬まつりなどのイベント、雪解け水がもたらす豊かな水資源など、私たちは雪から多くの恵みを受けています。しかし、風を伴う強い雪は吹雪となって私たちから視界を奪い、交通の大混乱などを引き起こすだけではなく、時には、痛ましい事故につながることもあります。そこで、吹雪の時の視界の状況を計測したり、予測をして、被害や混乱を最小限にとどめ、事故を未然に防ぐ技術の開発が進められています。

視界の状況は、「目標物の輪郭がはっきりと識別できる最大の距離」を示す「視程」によって表されます。視程と、大気や水・雪などの粒子による光の弱まり方には関係があるので、視程計という気象観測機器では、光の弱まり方から視程を求めています。

視界の情報を私たちの行動に役立てるには、多くの場所に視程計を設置することが必要ですが、コストの点から設置箇所は限られています。そこで、道路監視用カメラの映像から視程を推定する研究や安価な視程計測機器の開発が進められています。

視程計測用マルチセンサ.jpg 

北海バネ株式会社(小樽市)と工業試験場は、共同で、降雪強度、風速、温度、湿度を計測し、これらのデータから降雪時の視程を算出する安価な小型センサを開発しました。このセンサは、北海道内の高速道路で、自発光スノーポール(路肩や中央分離帯に設置されている緑色や橙色のランプ)の点灯制御に活用され、安全確保に貢献しています。また、工業試験場では、カメラで撮影した映像から視界の状況を把握する方法の開発も行っています。撮影された映像が雪によってどの程度影響を受けているかを数値で表し、視界の状況に換算することを目指しています。

一方で、視界の状況を広い範囲で捉える研究も進められています。(独)土木研究所寒地土木研究所は、観測機器による視程計測とは別のアプローチとして、風速、気温、降雪量などの気象実況値や気象予測値をもとに、視界の状況の推定や予測を行う方法を開発しました。この方法により求めた視界情報は、「北の道ナビ」というホームページに地図形式で公開されています。

北国において、吹雪をなくすことはできません。吹雪とうまくつきあう知恵を育む努力を続けていきます。

 

工業試験場のホームページ 

視程計測用マルチセンサについて 

北の道ナビ

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