きたほなみ

第4話   世界一の「北海道小麦」をめざして

             
道総研 北見農業試験場吉村 康弘

日本では、古くから小麦を生産し、麺類や菓子類などを食する文化をもっています。日本で消費される小麦の量は約640万トン(一人当たり年間消費量約31kg)で、世界でも有数の消費国です。

国内での小麦生産は1960年代から減少し、その国内自給率は、1973(昭和48)年には約3%にまで落ち込み、国内の製粉会社や加工業者は、世界各地に日本人の嗜好に合う小麦粉を求めたのです。

その後、国際穀物価格の高騰や国内での「余剰米」対策として、稲作から他作物への転換が進められ、国内での小麦の生産が増えていきます。その舞台となったのが北海道でした。

 

それまでの「北海道小麦」は、厳しい気象条件のため生産量が少なく、他の産地とのブレンドによりパン等に使われていました。その後、品種改良を重ね、1970年代に急激に増産されますが、単独ではパンにもうどんにも向かず、加工業者から「やっかいどう小麦」とまで呼ばれていました。

こうした中、「日本の栽培条件に適する「うどん」向けの新たな品種開発」との目標を掲げ、北見農業試験場でうどん用新品種開発の研究が開始されました。当時、うどん用小麦はオ-ストラリア産の銘柄「ASW」が主力で、色も食感も「最高」と評されていました。このため、開発上の品質目標は「ASW」としました。

「きたほなみ」の栽培風景.JPGのサムネール画像 

 

小麦は収穫期頃の雨に弱く、収穫量や品質が落ちてしまいます。北海道では収穫期に雨が多いため、関係者の多くは、天候に恵まれているオーストラリア産に並ぶわけがないと考えていました。

しかし、製粉会社の協力を得ながら日夜研究を進め、1981(昭和56)年にはうどんのコシや粘りに優れる「チホクコムギ」、1995(平成7)年には病気に強く収量の多い「ホクシン」を開発し、道産小麦は国内トップの品質と評されるようになります。そして、2006(平成18)年に、うどんの色も食感も「ASW」級と評される新品種「きたほなみ」を開発したのです。

 

 

 

「きたほなみ」の素麺.jpgのサムネール画像 「きたほなみ」は、収穫期の雨に強いことに加え、収量は「ホクシン」より2割多いため、生産者も大喜びです。美しい粉が採れる割合が高く、製粉会社からも好評を得ています。うどん向けの品種開発開始から30年余り。ついに、「日本の食文化」を取り返す一歩を踏み出したとみる方々もいます。

 

現在、小麦の国内自給率はわずか13%ですが、北海道は国内産の約6割を生産する小麦の大産地へと変貌をとげています。うどんをはじめ、洋菓子向けなどにも利用が広がる「北海道小麦」にご期待ください。

  

 


道総研 北見農業試験場ホームページ

 

▼麦類グループのご紹介 

北海道に適する春まきおよび秋まき小麦の新品種を育成しています。
また、春まき二条大麦の有望系統について、網走地方における適応性を検定しています。

・春まき小麦では、耐病、強稈、パン用良質、多収を備えた品種の育成を目指しており、これまでに、「ハルユタカ」、「春のあけぼの」、「はるひので」、「はるきらり」などの品種を育成してきました。

・秋まき小麦では、めん用良質、耐冬、耐病、多収を備えた品種の育成を目指しており、これまでに、「ホロシリコムギ」、「タクネコムギ」、「チホクコムギ」、「タイセツコムギ」、「ホクシン」、「きたもえ」、「きたほなみ」などの品種を育成してきました。


 

次回は8月の予定です。

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