こんなお話をしました

講演1  三つの海を調べる三隻の試験調査船

 
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釧路水産試験場 主査 板谷 和彦
 
北海道は日本海、オホーツク海、太平洋の3つの海に囲まれています。日本海は対馬暖流、オホーツク海は宗谷暖流と寒流の東樺太海流、太平洋は津軽暖流と寒流の親潮といった海流域にあります。それぞれ、同じ北海道でもまったく海洋環境の異なった海となっていますので、夏季または冬季にかけての水温の上昇や低下はそれぞれの海によって様相が大きく異なります。近頃では、海面の水温は人工衛星による観測結果を誰でも簡単に見ることができますが、複雑な海流の影響の受ける海の中の水温や流れの状況は、現場に行って水温や塩分を計測するセンサーを海中に沈めて調べる海洋観測調査を実施しないと知ることができません。
道総研では、これら3つの海を3隻の試験調査船を使って海洋観測網を構築しています。北海道周辺の海洋観測調査は2ヶ月毎に定期的に実施され、観測結果は水産試験場のホームページ上で公開されています。3隻の試験調査船はそれぞれ、北海道北部を稚内水試所属の北洋丸(237トン、1,600馬力、平成7年竣工)、北海道南部を函館水試所属の金星丸(151トン、1,300馬力、平成13年竣工)、そして北海道東部を昨秋に竣工した釧路水試所属の北辰丸(255トン、2,000馬力)が分担しています。
各試験調査船は海洋観測調査以外に、スケトウダラやホッケといった底魚類、サンマ・マイワシ・サバ類・スルメイカなどの浮き魚類の資源量や分布生態についての調査を行っています。各船には、魚群の資源量を計測する計量魚群探知機や魚体サイズや年齢などを調べるために用いられる着底トロール網が標準装備されています。今回竣工した北辰丸には、これらの装備に加えて、サンマ、マイワシ、マサバといった道東太平洋海域ならではの魚種を調査するために特化した調査機器として、遊泳力のある浮き魚を採集するために高速で曳網できる表層トロールや魚群の大きさや深度を探査できるソナーを配備しています。
 

 

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講演2 新北辰丸のみどころ!~最新の調査機器~

 
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釧路水産試験場 主査 佐藤 充
 
平成26年11月に竣工した新北辰丸は、全長:43.71m、総トン数:255トン、2,000馬力で航海速力:12.5ノットを誇ります。北辰丸の担当海域は噴火湾から三陸沖、オホーツク海そして東経162度の太平洋沖合域まであります。広い調査海域をカバーするため、これまでより速いスピードが必要でした。また、馬力も1,600馬力から2,000馬力へと上げることで、これまでに行えなかった表層でのトロール調査や、300mより浅い水深までだった曳網が500mの深い水深でも行えるようになりました。今回は、新たに装備した調査機器の代表として、表中層トロール、4周波計量魚群探知機、ADCPについて紹介したいと思います。
まず、表中層トロールは、主にサンマやイワシを対象としたトロール網で、網口が縦20m×横30mと大きく、網の前にいる魚を一網打尽にします。これだけ大きな網を曳くために、2,000馬力が必要となりました。これまで行っていた流し網調査に比べて、調査時間が短縮されたため、効率的に行えます。また、網口が一定のため、曳網した距離と網口の面積から曳網体積がわかり、魚の分布密度を求めることが容易となりました。
次に4周波計量魚群探知機ですが、これまでは一つの周波数で調査を行ってきましたが、四つの周波数の音を同時に出せるようになり、大きさの違う多くの種類の魚などの海中生物を対象にすることができるようになりました。周波数によって音の波長が変わるため、38kHzの低い周波数では波長が長くスケトウダラなど海底付近の大型魚類を、200kHzの高い周波数では波長が短くプランクトンなどの小型生物などを対象に調査を行えるようになりました。
3番目にADCPとは、Acoustic Doppler Current Profiler(多層式超音波流速計)の略で、音源から4方向に音を出し、ドップラー効果※を利用して海の流れを調べる機械です。船の航走経路ごとに、流れの方向と大きさがわかり、道東から道南にかけて調査することによって、北海道太平洋沿岸の流れを調べることができるようになりました。
最後に、新北辰丸では音響同期制御装置を装備しました。この装置を使うことによって、前述した計量魚群探知機とADCPを同時に使うことが出来るようになりました。このことによって、一度の調査で魚の分布や量と海の流れを知ることができ、これまでよりも効率的に素早く調査することができます。新たな機器を装備した新北辰丸の調査にご期待ください。
※ドップラー効果:音源と観測者との相対的な速度差によって音波の周波数が異なって観測される現象(救急車などのサイレンの音が近づくと高く聞こえ、遠ざかると低く聞こえる現象)。
 

 

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講演3 見えない海底の状況を音で調べる~地質研究所と水産試験場の連携と今後の可能性~

 
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地質研究所 主査 内田 康人
 
海の中は陸上と違って光が通りにくく、水深100mまで届く太陽の光の量は海面近くの100分の1程度に減ってしまいます。このため、陸上では飛行機から航空写真を撮影して地上の様子を簡単に把握できますが、海では船上から海底の様子を「光」で撮影することは、ほとんど不可能です。
しかし、それを補い海中や海底の状況をさぐるために「音(音波)」が用いられています。
音波が海中(水中)を非常によく伝わることは昔から知られていました。例えば、釣り人や漁師は魚群探知機により魚の群れを音波で調べます。こういった音波を用いた探知技術は軍事的に発展を遂げ、この技術を民間に転用し、音波で海底面の状況を把握することを可能としたのが、サイドスキャンソナーという装置です。
サイドスキャンソナーは、水中曳航した音波発信器から海底に向けて左右方向に広がる音波を発信し、反射して戻ってくる音波を受信します。この受信音波の強弱を濃淡の差として表示することにより、あたかも海底面を航空写真のように表現することができます。地質研究所はこのサイドスキャンソナーを用いて、本道沿岸海域の海底の状況を調査し、他の情報と併せて20万分の1図面を作成する事業を実施してきました。
しかしながら、地質研究所は調査船を所有していないため、海域調査の際には現地で小型船舶を傭船する必要があります。しかも安全のため夜間の航行はできず調査できる範囲が制限されるため、港より距離が離れている海域は、たとえ要望があっても対応できない状況にありました。
この状況を解決したのが、道総研 稚内水産試験場との連携および共同研究の実施です。
稚内水産試験場においては、宗谷海峡海域での水揚げ高が日本一にもなるミズダコの資源管理と生息状況把握に関する研究を実施し、既存の資料や、潮流・漁獲などに関する情報を全て統合した「ミズダコ資源管理システム」を作成し地元漁協に成果を還元しています。ただし、重要な情報の一つである海底地形や地質・底質についての情報は、宗谷海峡海域のごく一部でしか得られていませんでした。
両機関のこういった状況は、水産試験場の調査船で、地質研究所のサイドスキャンソナーを使って新たな海域での海底地形や底質を調査することによって解決でき、現在実施中の共同研究において着実な成果が上げられています。
さらに今後、沿岸防災などの水産関係以外の研究についても、調査船の機動性を活かすことによって実施できる可能性があります。実現できればより大きな成果を道民の皆さんに対して還元でき、道総研以外の機関や大学・自治体との連携の可能性も拓けてくるでしょう。
 

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