こんなお話をしました

腰が危ない!S字で楽する雪かきの秘密

産業技術研究本部 工業試験場 吉成 哲(よしなり さとし)

 講師1.JPG  毎年、除雪に関連する事故により、多くの方が亡くなったり怪我をしたりしています。最も多いのは屋根からの落雪や転落ですが、死者の1割は心疾患などの発症によるものです。暖かい屋内から外に出るだけでも血圧は上がります。

雪の降り積もった朝などは、出かける時間までに雪かきを終え、人や車の動線を確保しなければなりません。準備も早々にいきなり雪かきをしてしまいがちですが、はやる気持ちを抑えて、まずは準備運動です。体がほぐれて血管が広がり、血圧が上がりにくくなります。
冬の暮らしに欠かせない雪かきですが、日常生活のなかでは最も負担の大きな作業といえます。実際に雪かき中の運動強度を測定したところ、テニスのダブルスや水泳と同等となりました。高齢の方などは無理をしすぎないよう注意が必要です。人と話せるくらいの楽なペースが望ましく、血圧や心拍数の上昇も抑えられます。雪を持ち上げる時と放る時、スノーダンプを押す時など、やむを得ず力を入れる際には、お腹に力を入れることで、腰部の安定性を増すことができます。また、息を止めると急激な血圧上昇を招き、血管や心臓に大きな負担がかかるため注意が必要です。
雪をすくい上げる時は前かがみになりますが、持ち上げの支点になるのは腰椎です。雪の重さは数Kgでも、スコップの柄が長いため腰椎にはその数倍の力がかかります。加えて上半身の重さも支えるため、腰部にはとても大きな負荷がかかります。また、利き手の関係からか、雪を持つ方向を体の左右どちらか一方に決めている方も多く、片側の背筋がより早く疲労します。対策としては、上半身をなるべく立てる作業姿勢としたり、スコップを持つ方向を時折入れ替えるなどの方法が考えられます。

 

このほか、工夫をこらした道具の使用で負担自体を減らすことも可能です。道総研工業試験場では、なるべく体の近くで雪をすくうことと、体の傾きを少なくすることの両立を目ざして「S字状に曲がった柄を持つスコップ」を開発しました。実験では、腰への負担が2割程度低減し自覚的疲労感も低くなっています。
雪かきは確かに大変な作業ですが、ご自身の体の状態を良く把握し適切な作業ペースを守ったり、状況に応じて様々な除雪具を使い分けたりすることにより、危険度を下げることができます。高齢になっても活動的に生きるためには体力も必要であり、運動量が不足しがちな冬期間の体力づくりとして、雪とうまく付き合っていくことも必要かもしれません。

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よくわかる建物の屋根雪対策~屋根雪事故を防ぐために~

建築研究本部 北方建築総合研究所 堤 拓哉(つつみ たくや)

講師2.JPG北海道における雪の事故による死傷者数の推移をみると、平成20年度以降、死傷者数は毎年約100人ずつ増える状況にあり、昨冬は515名と過去最悪の被害となりました。死傷者数が増えた要因としては、近年、日本海側の降雪量が増加傾向にあることが挙げられます。また、高齢化率が毎年着実に上昇していることも少なからず影響していると思われます。雪の事故による死傷者数の半数以上は65歳以上の高齢者が占めており、年齢別に雪の事故リスクを試算すると、65歳以上の高齢者が雪の事故に遭うリスクは65歳未満の約3.5倍になります。雪下ろしや落氷雪などの屋根雪事故は、雪の事故全体の約80%を占めています。特に屋根やはしごからの転落など雪下ろしに関連する事故は、全体の60~70%を占めています。
現在、北海道では新築住宅の55%が無落雪屋根です。屋根雪対策は屋根の形状ごとに対策が異なりますので、それぞれの屋根形状で起きる問題を整理する必要があります。無落雪屋根で起きる雪の問題を整理すると、屋根の雪庇や大雪時の屋根雪荷重の増加、2階の窓や設備等が雪で埋没することが挙げられます。これらの問題解決には雪下ろしが必要となります。屋根上の雪を融かす方法も考えられますが、融雪水の凍結により氷柱の発生を招くほか、エネルギー消費の増加にも繋がります。雪庇の対策については、立地場所の冬の卓越風を調べた上で雪庇のできる位置に配慮した設計を行うことが最も重要です。雪庇の発生を軽減あるいは除去する対策には人力やヒーター、フェンス等の設置がありますが、それぞれのメリット・デメリットを勘案して選択します。人力で除去する場合には、転落事故防止のため命綱などの安全装具を使用します。
落雪屋根の雪対策については、落雪の範囲を適切に評価した上で、雪が落ちても問題にならない位置に雪を落とすような設計が最も重要です。また、屋根形状が複雑だと雪が落ちないケースもみられるので、できるだけシンプルな屋根形状にします。近年では太陽光発電パネルを屋根に取り付けるケースもみられますが、パネルからの落雪による事故も増えていますので、注意する必要があります。勾配屋根における雪下ろしは、屋根材が金属板のため非常に滑りやすく、大変危険です。安全確保に自信が無い場合は、専門業者に依頼するようにしましょう。また、北方建築総合研究所では屋根雪対策に関する資料をホームページにて公開しておりますので、ぜひご利用ください。
▼戸建て住宅の屋根の雪処理計画http://www.nrb.hro.or.jp/pdf/yaneyuki.pdf
▼北の住まいづくりハンドブックhttp://www.nrb.hro.or.jp/pdf/kitanosumai.pdf
※ その他の技術資料http://www.nrb.hro.or.jp/provide/gijutu.html
※ 北方建築総合研究所ホームページhttp://www.nrb.hro.or.jp/
▼ウインターライフ推進協議会「除雪のコツ教えます」http://yukikaki.jp/index.html

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あったか、ほっこり木の燃料「木質ペレット」

森林研究本部 林産試験場 小林 裕昇(こばやし ひろのぶ)

講師3.JPG木質ペレット(以下、「ペレット」)は、おが粉に圧力を加え円筒状に成型した固形燃料です。ペレットには、樹皮も含め木材をまるまる使った全木ペレット、樹皮を含めず幹の白い部分のみで作られたホワイトペレット、樹皮のみで作られたバークペレットの3種類があります。これらペレットは、いずれも木材を原料としているため、発熱量についてはおおよそ4,200~4,400kcal/kg程度で、大きな差はありません。しかし、燃やした後に出来る灰の量は大きく違います。全木ペレットに含まれる灰の成分は約1%、ホワイトは約0.3%、バークペレットにおいては約2~3%となります。実際に10kg燃焼させると、全木ペレットで100g、ホワイトで30g、バークで200~300gの灰ができます。バークペレットは灰の量が多いため、住宅用の暖房用燃料として使いづらく、日本では生産量も多くありません。
ペレットは、元々家畜の飼料をペレット化する技術を木質に応用したのが始まりで、1976年アメリカのオレゴン州ユージンにあるバイオソーラー研究所にて開発されました。日本では6年後、1982年に岩手県の葛巻林業にてバークペレットの製造が始まり、同年8月、国産のペレットストーブ第一号として徳島県のコロナ工業(株)が木質系ストーブ「ひまわり」の販売を開始しました。
その後、中東からの原油供給が安定したことでペレット利用も一時期下火になりましたが、2003年に「岩手型ペレットストーブ」が、2005年には「信州型ペレットストーブ」が相次いで発売され、再生可能エネルギーであるペレットに再び注目が集まりました。北海道では、2005年10月より「北海道型ペレットストーブ」をサンポット(株)と道総研林産試験場の共同開発により、既存の製品にみられる課題の改善を念頭に設計と試作を進め、2007年12月に販売を開始しました。また、2008年よりペレットを自動供給するシステムと、木造ペレットサイロの技術開発を(株)イワクラと共同で行いました。
道内のペレット製造工場は16ヵ所、平成24年の生産量は約4,900t、ペレットストーブ導入台数は、2,213台となりました。今後も利用者の皆様にもっと便利に使っていただくため、ペレットストーブに関連する新しい技術開発に取り組んでいきたいと思います。

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備えてますか?冬の災害~何が起きるの?何ができるの?~

建築研究本部 北方建築総合研究所 竹内 慎一(たけうち しんいち)

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  • 冬の災害で何が起きるの?
豪雪に加えて大きな地震が発生すると、被害が拡大する恐れがあります。雪害に関連した地震災害や避難の支障などを写真を使ってご紹介します。
1つ目は、「住宅被害」です。地震で被害を受けた家が、雪の重さにより余震で倒壊する恐れが拡大します。また、積雪により住まいが利用可能かの点検がしにくくなります。
2つ目は、「災害時の避難路・避難階段」です。高台につながる階段が積雪により使えないことがあり、津波の被害を大きくします。
3つ目は、「救助・救急活動」への影響です。大雪により消防車や救急車が住宅街の道路に入ることができなくなることがあります。
この他にも、停電時の避難生活が想定されます。
  • 冬の災害で何ができるの?
パンフレット「みんなではじめる防災対策」を使って訓練や備えをご紹介します。パンフレットは親子で参加いただく防災学習についてまとめたものです。
「まちなか探検と防災マップづくり」の学習では、災害をイメージしながら、自分の住んでいるまちの危険なところ、安全なところ、注意しなければならないところを、親子で探検して探します。調べてきたことを地図に書き込み、防災マップをつくることで、参加者が理解を共有し、改善方法を話し合う学習方法です。厳冬期の災害を視点にした場合、最初に説明した冬の被害に着目して、まちの被害を想定し、議論することが重要です。
「避難について学ぶ」のページには、非常時の持ち出し品のうち、100円ショップで揃えられるものをチェックした表が掲載されています。この品はどういうことに使うのか、いくつ必要か、ということを考えながら揃えることで、災害時の使い方を理解するきっかけにすることができます。冬に関連したものとしては、サバイバルブランケットがあります。
また、冬の停電の備えとして、昨年の登別市の停電時には、「暖房」はポータブル石油ストーブ・湯たんぽ・カイロ、「照明」はローソク・懐中電灯・ランタン、「情報収集手段」は携帯ラジオなど、電気を使用しない灯油・電池・手回し式の物が利用されました。パンフレットにも、電気を使用しない簡易ランプ・簡易コンロとして、「ほのぼのあかりの作り方」が掲載されています。
積雪寒冷地は、地震や津波・風水害などに、雪害が複合することで被害が大きくなります。積雪寒冷をイメージした訓練や、冬の備えが重要です。

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パンフレット「みんなではじめる防災対策」はこちら(PDF)

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