第3回 道総研セミナー in 十勝(帯広市民大学連携講座)
「十勝の住を科学する 十勝のカラマツで家をもっと建てるために」


道民の皆様が科学技術を通じて地元の産業や暮らしに触れていただく機会を創出するとともに、農業、水産業、工業など8分野にわたる総合的な試験研究機関としての道総研の研究活動にご理解をいただくために、帯広市においてセミナーを実施しました。

第3回目となる今回は、帯広市内外から30名の参加をいただき、「十勝の住を科学する 十勝のカラマツで家をもっと建てるために」と題して、道産カラマツの資源状況に見合った効率的な利用方法、地域木材をスムーズに利用するための方策、高品質な建築用部材の開発などについて、研究機関ならではの視点から、科学的特性や開発の物語について紹介しました。


○主催:地方独立行政法人北海道立総合研究機構
共催:帯広市教育委員会
後援:北海道十勝総合振興局、十勝毎日新聞社、北海道新聞帯広支社

○日時:平成26年3月18日(月) 18:30~20:30

○場所:とかちプラザ 3F  会議室304(帯広市西4条南13丁目1番地)


こんなお話をしました

◇道産カラマツの性質を調べて効率よく利用する


森林研究本部 林産試験場 松本 和茂(まつもと かずしげ)



カラマツは北海道の主要な造林樹種であり、この豊富なカラマツ資源を利用していく上で重要なのは、ねじれや曲がりが発生しやすいカラマツの特質に上手に対処することです。
本セミナーでは、カラマツの建築用材としての需要拡大を図っていくために、カラマツの性質を理解し、現在の資源状況に合った効率的な利用方法について検討した内容を紹介します。
カラマツは、元々は北海道に自生していなかった樹種ですが、開拓期に信州から苗木が持ち込まれ植林が始まり、戦後期に造林が拡大しました。カラマツが多く植えられたのは、比較的造林が容易で育てやすい樹種であり、成長が早く短期間で収穫できるという理由からで、当時、炭鉱の坑木として多く使われました。その後、石炭から石油へのエネルギー需要の転換に伴い杭材の需要が減少したため、用途の転換を迫られ、小径間伐材の新たな用途として梱包材・パレット材など流通資材生産が発展してきました。
現在は、戦後植林されたカラマツ人工林が収穫期を迎え、大径化したカラマツ資源の付加価値の高い用途の開拓が課題となっており、建築用材としての利用への期待が高まっています。
カラマツの建築用材としての利用上の特性を挙げると、国産材の中では比較的強度の高い樹種であるというプラスの点と、乾燥時のねじれの発生というマイナスの点があります。このねじれの発生が長い間カラマツの建築用材としての利用を阻む要因となってきました。強度が高いという利点を最大限に活かし、ねじれの発生を抑え込むことが、カラマツ材の建築用材利用のポイントと言えます。
ねじれの対処については、道総研が実施した戦略研究(H22~26)の中で、ねじれの発生を抑制するカラマツ柱材の生産技術を開発しました。この成果は民間企業へ技術移転され、コアドライという名称で商品化されています。
強度を活かす利用法としては、カラマツは丸太の断面内の部位によって強度の差が大きく、樹心に近い部位は低強度で、丸太の外周部ほど強度が高いという特性があることから、強度性能が要求される集成材用ラミナ(挽き板)を生産する際、強度の高い部位から選択的にラミナを取る生産方法を検討しました。従来、集成材用ラミナの生産には比較的小径の原木が用いられることが多かったのですが、この方法は大径原木だからこそ可能な方法であり、従来よりも高い強度のラミナが得られるという結果が出ています。
収穫期を迎えた北海道のカラマツ人工林材の用途を広げ、付加価値を高めていくことが、伐採後の再造林を促進し、持続的森林経営の一助となることを期待します。


◇地域材による家づくりをより広めるためには?

建築研究本部 北方建築総合研究所 糸毛 治(いとげ おさむ)



地域木材の住宅用途への利用を促進させようという機運が、近年高まっておりますが、私たちは具体的にどう取り組めばよいのでしょうか。
北方建築総合研究所では、ここ3年、十勝総合振興局と連携して、十勝にて地域材利用の促進に向けた活動を行っています。この活動の中で、十勝の工務店グループの協力を得て、国交省の補助事業を通じて建設された物件を対象に、工務店、ユーザー(施主)の地域材への意識や、木材や地域材の利用実態の調査を行いました。今回のセミナーでは、この結果をもとに、工務店、住宅産業の立場に立って、その方策を考えました。
まず利用者側を見ると、地域材への意識がさほど高くない一般的な工務店・ユーザーは、住宅に地域材を利用すべきだとの認識はあるものの、積極性は低く、予算の制約で使われていないのが現状です。地域材利用は工務店からユーザーへ薦められる場合が多く、十勝ではカナダ木材を用いたツーバイフォーの住宅が広く普及する住宅事情を踏まえると、工務店をターゲットに、地域材を使いたい所に少しでも良いから使っていく柔軟な戦略が求められます。
一方、供給側を見ると、十勝に限らず、北海道にて安定的に地域材を製造、供給する製材工場が少なく、地域、製造工場ごとに、供給できる木質部材が限られる状態で、十分な態勢とは言えません。
製材業側は、この供給態勢の整備、拡充に向け、さらなる魅力ある地域材の開発、木材流通のネットワーク化・効率化などが課題に挙げられます。
工務店、住宅産業側で、限られた地域材の流通量の中で、多様な地域材の利用方策を満足するためには、地域材を供給できる業者、必要納期、おおよその価格など、地域材に関する情報を製材業との間で広く公開された形で共有し、工務店がいつでも地域材を使えるように、環境整備を行うことが重要です。
また、地域材と輸入材の価格差は、立米あたり1万~3万円程度で、地域材の方が高い状況ですが、この価格差が埋まれば、地域材の利用がかなり促進されるとの声がよく聞かれました。補助事業など、今の行政の支援は単年度事業が多く、要件を満たせば、多額の補助金を支給する仕組みで、手続きも煩雑です。例えば、住宅に用いた地域材の材積を対象に、補助は輸入材との価格差程度の少額とするが、その代わりに簡易な手続きで息の長い支援とするなど、行政の支援のあり方も、今一度見直す必要がありそうです。


◇地域材を安定的に供給するための仕組みについて

森林研究本部 林産試験場 石川 佳生(いしかわ よしお)


北海道の主要な人工林資源であるカラマツは、そのほとんどが梱包材やパレット材等の輸送資材として利用されており、建築用材としての利用は、16%程度となっています。
道総研では、カラマツ人工林資源の新たな用途開拓を目的として、カラマツ材を建築用の材料として使うための乾燥技術と工務店などが使いやすくするための流通システムの検討を行いましたので、その内容についてご紹介します。
道産カラマツ人工林材は、乾燥すると“割れ”やすく、住宅部材として使用した場合は、その温湿度環境によって含水率が低下し、“ねじれ”が生じやすいことが課題とされています。そこで、道産カラマツ心持ち正角材を木造住宅の管柱として利用するため、“割れ”や“ねじれ”の生じにくい新たな木材乾燥技術を開発しました。
新技術による乾燥材と従来のカラマツ乾燥材を冬季間の暖房された室内環境に放置した場合のねじれ変化を観察したところ、新技術による乾燥材は、従来のカラマツ乾燥材と比較して大幅にねじれが抑制されており、住宅部材として広く使用されている輸入集成材と比較しても同等以上のねじれ抑制効果が得られました。
木材産業における国産材の流通構造は、多段階であることから、安定供給やコスト低減が困難な状況となっており、さらに、素材生産業者と製材工場間や製材工場と工務店間における需給バランスのミスマッチも見られます。これらを解消するためのひとつの方策として情報の共有化が考えられます。
そこで、木材情報の共有化を図るシステムとして、木材情報継承(トレーサビリティ)システムと、受発注の管理を行うための木材受発注管理システムを作成し、検証しました。
木材トレーサビリティシステムは、建築用材の生産・製造・流通に係る様々な履歴を記録するためのシステムです。このシステムをカラマツ構造用集成材に適用し、検証したところ、カラマツの素材生産現場から製材工場、集成材工場、プレカット工場、建築現場への納品まで、すべての情報が寸断されることなく継承され、情報の共有化を図れることが確認されました。
木材受発注管理システムは、製材工場が地域内の協力工場と製造状況や在庫情報を共有することにより、これまで単独では対応できなかった突発的な受注や大量受注への対応を可能にするとともに、工務店等がインターネット上から建築用材を容易に発注することができるシステムとなっています。
北海道のカラマツ人工林資源の新たな用途拡大を図るため、これらの検討結果を木材産業へ導入することで、人工林資源の効率的な活用、高品質な建築用材の安定供給、認証材の流通促進等が期待されます。


当日の様子です




案内ちらし

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