第53回 水源林

「水源林」のはたらきを知ろう

2018年5月14日
森林研究本部 林業試験場 森林環境部 環境グループ
主任主査(流域保全) 長坂 有


こんなお話をしました



【1.水源かん養機能とは】
①洪水緩和
森林の土壌は厚く、水が浸み込みやすいため、大雨をスポンジのように受け止め、急激な増水を緩和するはたらきがあります。表面が固い草地や道路などに比べて、この浸み込みやすさ(浸透能)が高いことが、森林の洪水緩和機能といえます。
②水資源貯留
  水資源貯留機能は、地下に浸み込ませた雨をなるべく長期間、ゆっくりと流出させることですが、忘れてはいけないことは、森林も水を消費する生き物ということです。このため、森林を伐採すると水の流出量は増え、植林すると樹木の生長に伴って流出量が減ることが各地の試験結果で示されており、森林に渇水緩和はあまり期待できないことがわかってきました。
③水質浄化
   水質とは、温泉やミネラルウオーターに含まれる成分のように、水に溶け込んだ様々な物質の含有量といえます。森林に降る雨の成分のうち、窒素やリンなどの栄養分は森林土壌に捕捉され、沢に出てくるときには濃度が低くなるため、これを水質浄化機能と見なすことができます。森林を伐採すると窒素を吸収していた樹木が減り、土壌に蓄えられていた窒素が流出するため、沢水の窒素濃度が上がります。
④土砂流出防止
 川に土砂や濁りがなるべく出ないようにするためには、発生源となる裸地を減らすことと、発生した濁水をろ過することです。森林林床の草本や溜まった落葉、土壌層はこのようなはたらきを持ちます。森林を伐採すると、一時的に土砂流出量が増加することがありますが、植生回復とともに3年程度で収まることが確認されました。


【2.生物多様性に配慮した保残伐】
 木材生産と公益的機能の両立を目指した保残伐施業の大規模実験が、北海道のトドマツ人工林において開始されました。主目的は、皆伐により失われる老齢木や大木を残すことで、多様な生物の生息環境を維持することですが、水源かん養機能の面では、伐採後の窒素流出が緩和される傾向が見えてきました。


【3.水生生物の生息環境保全】
水辺に樹木があることは、水温の安定、生息場形成,餌となる有機物供給など,水生生物に大きく関わります。渓流魚やヨコエビ,水生昆虫は,水源林に育まれているといえます。

講演資料(PDF)


案内チラシ(PDF)

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