第14回 GISで「捉える」

シリーズ講座 新しい地図が魅せる! 空からみた北海道の姿
「捉える」

2011年6月28日(火)
環境・地質研究本部 環境科学研究センター小野 理(おの さとる)
水産研究本部 稚内水産試験場 佐野 稔(さの みのる) 

こんなお話をしました

(小野より)
 DSCF1905.JPG  航空機や人工衛星から撮影した画像を解析する「リモートセンシング」。位置情報(どこで)を付けたさまざまなデータをコンピュータ上で地図に表し解析する「GIS(地理情報システム)」。今回のシリーズのキーワードとなる、この2つの技術について、身近な画像と研究活用事例から概要を説明するとともに、さまざまな人が各地で行う生きもの調査の結果を活用・集積した生きものマップづくりについて紹介しました。

空高くから大地を見下ろすと、街や森の広がり、川の流れなどを見ることができます。デジタルカメラで写真を撮ることも「リモートセンシング」の1つですが、人工衛星や航空機にいろいろなカメラを積んで撮影すると、さまざまなことが分かります。

人工衛星からのリモートセンシングの特徴は、
①広い範囲をとらえる
②現地に行けないところを知る
③人間の目に見えない情報を得る(赤外線など)
④同じ地域を繰り返し観測できる
の4点が挙げられます。

研究活用事例としては、台風による風倒木の抽出や、ヒートアイランドの分析などがあり、リモートセンシングを上手に活用すれば、広い地域の環境や生きものの状況を知ることができます。

さて、環境の行政や研究を進める上で、「生きものの分布」を図鑑などよりも細かく調べる必要がありました。生きものの種(しゅ)レベルなど、細かな判別はリモートセンシングでも苦手です。実は、生きもの調査は数多く行われているのに、「どこで」確認されたのか、位置情報の記録の仕方が不統一で情報が散在し、全体の分布が分からないという問題がありました。

そこで、「GIS(地理情報システム)」を活用して、位置情報をメッシュコードで統一・再整理するプロジェクトが始まったのです。その後、十数年かけて、道内の動植物の分布データをコツコツとデータベースに入力した結果、合計200万件近くのデータが集まりました。

収集したデータは、ウェブサイトでの情報提供などに活用しています。

○北海道レッドデータブック(道内の希少な野生生物のサイト)
○北海道外来種データベース ブルーリスト2010(道内の外来生物のサイト)
○Birdbase(バードベース:アジアの鳥類分布データベース)
○GISで見る北海道の環境と資源(環境地図のポータルサイト)

などで、次のページからさまざまな情報をご覧いただくことができます。

http://www.hro.or.jp/list/environmental/research/ies/katsudo/kankyo_joho/WebGIS.html

このように、道総研・環境科学研究センターでは「GIS(地理情報システム)」を活用して、多様な生きもの調査の結果を集約し、基盤情報として、様々な研究や行政資料、情報提供に活用しています。


(佐野より)
  DSCF1908.JPG ミズダコは、北海道沿岸で年間に1.5万トン~2.0万トン漁獲され、北海道内の魚屋やスーパーなどで売られている身近なたこです。最も大きくなるタコ類の1種で、大きいものでは全長3m、体重50kgになります。一般的な食べ方として、刺身やすしネタ、珍味などがありますが、たこしゃぶも大変美味しいのでお勧めです。

さて、このミズダコですが北海道では稚内市周辺の宗谷海峡で最も多く漁獲されます。どのように獲るのかというと、「たこいさり樽流し」という潮の流れを利用した漁法です。近年この海域では、2つの問題がありました。1つは、豊漁年と不漁年の漁獲量の差が大きくなっていることで、もう1つは漁船に使う燃油の単価が高騰して経営を圧迫していることです。これらの問題を解決するために、宗谷海峡のミズダコ資源管理システムを開発しました。このシステムでは、漁業者に対してミズダコの資源情報をお知らせすると同時に、最適な出漁日を判断できる潮流カレンダーを提供することで、ミズダコの資源管理と漁家経営を両立することができます。この中で、GPS情報を活用して漁業と水産資源を捉えました。

そもそもGPSとは地球上の現在位置を測定するためのシステムであり、緯度、経度、時刻の情報です。最近ではGPS受信器がカーナビや携帯電話にもついていますので、私達の生活にも入り込んできています。ほとんどの漁船にはGPSが取り付けられており、漁船のカーナビに相当するGPSプロッタがあります。それから得られる漁船の航跡のGPSデータと漁協から提供していただいた水揚げデータを、地理情報システム(GIS)により組み合わせて分布図を作製しました。その結果、宗谷海峡内におけるミズダコの詳細な分布を明らかにすることができ、ミズダコが季節的に宗谷岬周辺海域から沖へと移動していることが明らかとなりました。この知見はミズダコの資源管理に活用することができました。

一方、漁船の最適な出漁日と時間帯を示した宗谷岬潮流カレンダーの作成にも、GPSとGISを活用しています。北海道大学では、宗谷海峡周辺に短波海洋レーダを設置して宗谷暖流の観測を行っています。そのデータから、潮流の予測が可能になりました。そこで、漁船の航跡のGPS情報から漁具(樽)を流すうえで最適な潮流速度を明らかにしたことで、漁業者が最適な出漁日・時間帯を判断できる潮流カレンダーを作ることが可能となりました。このカレンダーは好評で、稚内市のたこ漁家経営の安定に貢献しています。このカレンダーは、稚内水産試験場のホームページで公開していますので、一度ご覧ください。

質問にお答えします

 

質    問

回    答

 

結果はどの程度観ることができますか?

環境科学研究センターでこれまでに実施してきたリモートセンシング・GISに関する研究の概要については、当センターのウェブサイトでご覧いただくことができます。

http://www.hro.or.jp/list/environmental/research/ies/katsudo/gis/index.html

個々の研究事例の内容については、お問い合わせください。

データの提供を受けることは可能ですか? 環境科学研究センターでは、行政や研究を目的とした依頼に対応して、データを提供しています。データの著作権などの問題から提供できないものもあります。詳しくはお問い合せください。
近年、少雪の年が多くなっており、積雪の観測地点も少なくなってきておりますが、雪解け状況マップを活用して経年変化を把握することは可能ですか? 積雪(雪解け状況)マップでは、積雪の有無を判別できます。ご紹介した人工衛星(MODIS)の画像は、毎日の画像を得られますので、根雪の期間などを解析することが可能で、長期の解析を行えば経年変化を把握できます。
リモセン(衛星写真等)から、生き物の濃淡を解析することはできますか? 高解像度の衛星画像からは、たとえば駐車場に並んだ乗用車の台数をカウントすることが可能です。しかし生き物の数をカウントするには、種類の識別が必要、大きさが多様、陰に隠れて見えないものがある、などの問題から、特に動物では非常に困難です。植物に関しては、葉緑素の総量や植物体の総量との対応関係がある程度解明されており、研究が進められています。このように、画像のデータと生き物の濃淡との対応関係や誤差が明らかになれば、解析できると言えます。

ミズダコの生活史マップと同じものを、河川・水路等の魚類等の生き物で作れませんか?

ミズダコ以外の生き物、水産資源への利活用

ミズダコ以外の生き物や水産資源についても、同様のマップを作ることは可能です。そのためには、多くの調査データが必要です。そのうえで、作製したマップは、水産資源がどこにどのくらいあるのか?や、どこで獲りすぎているか?、どこを保護すべきかなど、水産資源の管理方法を決める重要な情報を示すことができますので、水産資源の持続的な利用に十分活用できます。

さらに詳しく知りたい方は・・・

  動画北海道公式チャンネル

  当日の資料北海道の生き物を捉える.pdfミズダコマップ.pdf

【訂正】紹介しました研究事例「渡り鳥の広域的な移動要因の推定」の中で、マガンに「発信器を付けて」分布データを取得したと説明しましたが、この事例では、マガンを「地上から観察して」分布データを取得していました。お詫びして訂正します。

  案内チラシ

チラシ(表).jpg チラシ(裏).jpg 

 

ご協力いただきました

ドトールコーヒーショップ北海道庁店
AIR DO(北海道国際航空株式会社)

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