No.4 1988.12.15

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

泥炭地の開発と利用

収穫を終えた泥炭草地  植物は枯れたあと土の中で腐植分解され、やがてはなくなってしまいます。しかし寒冷地帯の沼地や湿地に生えた植物は、分解が進まないまま埋もれ年々積み重なっていきます。このようにして、長い年月にわたり植物遺体が堆積してできた土壌が泥炭地です。その厚さは、数メートル以上におよぶこともめずらしくありません。
 わが国の泥炭地は主として北海道に分布し、石狩泥炭地、サロベツ泥炭地、釧路泥炭地などがその代表的なものです。 石狩泥炭地など道央の泥炭地は、大部分が水田に開発され、北海道の主要な稲作地帯となっています。また道北のサロベツ泥炭地や釧路泥炭地の一部などは草地化がすすみ、そこに大規模な草地型酪農経営が展開されています。
 泥炭地は、その生成から分かるように、多湿で分解のしやすい有機物からできているため、鉱質土とは著しく異なります。したがって、排水や鉱質土の客土など農地の利用目的に応じた土地改良技術が必要となります。

(天北農業試験場)

研究の展望

泥炭草地の特徴と改良

酪農をささえる泥炭草地

 道北と道東で展開されている大規模草地型酪農は草地面積を広げながら発展してきました。とくに、農牧適地がかぎられている道北では主として泥炭地を草地に開発してきました。
全草地面積にしめる泥炭草地の割合をみると、宗谷支庁では28パーセント、留萌支庁では37パーセントに達しています。泥炭草地は道北の酪農をささえていると言っても過言ではありません。

泥炭草地の特徴

 泥炭土は有機物からできており、また、地下水位が高く、このことが泥炭草地の長所となったり短所となったりします。

〈地盤が軟弱〉
 泥炭地の開発と利用には排水が必要です。それによって、土壌は乾燥して地耐力が向上し、農業機械が走行できるようになります。しかし、雨の多い時や地下水位が高くなる春先と秋には、地耐力が低下するので、機械は草地に入ることはできません。客土によってこれを改善することができます。

〈不等沈下の発生〉
 排水にともなう泥炭の脱水・収縮、分解・消耗などによって地盤は全体的に沈みます。とくに、客土が不均一なところ、埋没樹根を抜いた跡や暗渠を施工した跡の埋め戻しが不十分なところは大きく沈み(不等沈下)、草地の地盤はデコボコになります。不等に沈下したところでは、相対的に地下水位が高くなるため、牧草は湿害うけて消えていき、かわって湿性雑草が侵入して草地荒廃化の引き金になります。また、不等沈下した草地では、農業機械は安定した走行をすることができません。

〈養分のかたよりと流亡〉
 泥炭土は有機物からできているので、その分解によって、窒素はあるていど期待できますが、その他の養分は不足しています。また、泥炭土は保肥力が弱いので、養分が雨水によって流されやすい。そのため、肥科を施すときは他の土壌より注意が必要です。
客土によって、これらの欠点を改善することができます。

今後の研究の展望

 草地面積はほぽ充足状態に達したと考えられるので、これからは、開発した泥炭草地をいかに効率的に維持・利用していくかが重要となります。

〈泥炭草地の維持管理〉
 泥炭草地では不等沈下が発生し、これにともなって埋没樹根が相対的に浮き上がり、明・暗渠の排水機能が低下するなど、草地基盤がしだいに悪化することが多い。これをいかに修復(二次整備)して草地の生産性を維持するかが、これからの重要な研究課題です。

〈良質粗飼科の低コスト生産〉
 泥炭草地の牧草は家畜による採食性が劣るといわれています。良質な粗飼科の生産は草地型酪農では非常に必要なことですので、現在その解明に取り組んでいます。泥炭土は特殊な土壌なので研究例も少なく、不明な点が多く残されています。今後も高品質牧草を低コストで生産する技術の確立にむけて研究を進める必要があります。

〈泥炭地の保全〉
 泥炭地の開発と利用には排水が必要ですが、周辺の未開発泥炭地への影響が心配されています。泥炭湿原は原始の自然をのこし、貴重な植物や鳥獣が生息しているので、その保全が強くのぞまれています。今後は、泥炭地の開発・利用と保全という相反する目的を両立させるための技術を追究することも重要と考えられます。

(天北農業試験場)


研究の成果

簿記を活用した農業経営自己診断システム

 北海道の酪農経営は、今日の厳しい農業情勢下で、生産技術の改善、負債対策など多くの問題に直面しています。こうした中で、経営の安定と向上を図っていくためには、経営管理能力をいかに高めていくかが重要な課題となります。
 この問題を解決するためには、農業簿記の普及・活用とそのデータ蓄積が有効な手段となりますが、現状ではその繁雑さから記帳率が低く、また、十分な活用がされていません。
 このような背景から、昭和61年より釧路東部農業改良普及所、モニター農家(浜中町)の協力を得て、農業簿記の記帳から経営診断まで一貫した簡便な経営自己診断システム(プログラム)を開発しました。
 パソコンを利用したシステムには、以下の特徴をもたせました。

  1. 農業の特殊性を考慮した上で、システムの操作性、効率性を向上させた。
  2. 経営形態に応じて勘定科目の設定が行えるなど、汎用性を高めた。
  3. 効率的なデータの活用を図るため農業簿記と経営診断を連動させた。
  4. 経営診断結果を活用するために各種シミュレーション機能を添えた。
 システムは、資産台帳作成、取引記帳、営農計画作成、経営診断の4部門から成っています。簿記記帳から経営診断までに出力される表は58種類、図は7種類です。
 このシステムは昭和61牛に2戸でスタートし、昭和62年15戸、昭和63年50戸と利用農家が飛躍的に増加しています。また、利用農家のグループは、普及員との研究会活動の中で、各自の経営を自己診断分析し、他の農家との比較分析を行うなど、その結果をもとに経営改善に努めています。
 今後は、開発したシステム(経営管理)に加え、乳牛飼養管理、粗飼料生産管理、土地管理などを経営管理に連動させて開発を進めていきます。また、さらに利用者の増加することが予想されることから、パソコン通信、ファクシミリ通信など情報伝達機器の利用による情報伝達の効率化とパソコンの共同利用による情報処理費用の低コスト化を図っていきます。
 パソコンという1つの情報機器を通して、試験場・普及所・農家の交流がこれまで以上に密接になり活性化することが期待されます。

(根釧農業試験場)

研究室Now

美味しさの秘密を科学する

中央農業試験場農芸化学部農産化学科

美味しさの秘密にせまるアミログラフ  「農家のほ場(田や畑)と食卓を結ぶ」。これが、わたくしたちが農業研究を進めるときの新しいモットーです。62年4月、試験場の機構改革で新設された農産化学科は、農産物の品質に焦点をあてた、消費者の口もとにこたえるポストハーベスト研究の一端を担うことになりました。
 現在は、畑作物、特に小豆、菜豆、小麦の品質問題に取り組んでいます。例えば、小豆、菜豆を加工し、菓子や煮豆を作っている人々が、これらの豆に求めている条件を明らかにし、育種目標の設定に、栽培法の改善に、役立てたいと考えています。
 そんな中で、小豆(アン)の美味しさの秘密にせまったところ、アン粒子の大きさが100-150メッシュの範囲にあるものほど、美味しいことがわかりました。また、小豆の種子色が明るくあざやかな色のものほど煮えむらが少なく、アンがたくさんとれることも明らかになりました。
 そこで目下、どの品種の小豆をどのように作れば、美味しいアンがたくさんとれるか検討中です。
 更に、バレイショや大豆についても、貿易自由化の対応策として、新しい用途開発のために、品種、栽培地域、栽培法別に品質特性を明らかにする仕事が、スタートしました。この点については今後、加工メーカーとも連携を深めながらバレイショの食物繊維の新しい利用法や豆類の1.5次加工などに手を染めたいと、夢をふくらませています。
 農業を取り巻く環境が一段と厳しくなって来ました。国際競争、国内産地間競争に打ち勝つために、北海道産農産物のセールスポイントを科学的に明らかにし、一日も早く売り込み強化の助人になるのが、新生・農産化学科の抱負です。

(夕張郡長沼町東6線北15号)


ハーグレス

滝川畜産試験場

豚の受精卵移植手術  滝川畜産試験場は、めん羊、豚、にわとりのような中小家畜部門を担当している試験場です。
 関税ゼロで輸入される羊肉(マトン)に対抗して、肉用めん羊サフォーク種を導入し食味、品質で負けないラム肉の自給体制を進めてきました。さらに飼養標準作成、ならびに生涯産次数の増加と通年ラム肉出荷ができるように当歳繁殖、季節外繁殖の研究に取り組んでいます。
 豚肉、鶏卵の需要は頭打ちの傾向にあります。そのためコストの引き下げ、品質向上と新しい消費者ニ一ズに応えられる畜産技術の開発が急がれています。
 にわとりでは、先年当場で作出した優れた産卵鶏「滝川ゼットP」が広く普及されつつあります。
 また豚では、昭和64年には産肉能力の優れた大ヨークシャー種の新しい系統豚が完成される予定です。
 病気は経済性を損う大きな原因ですので、病気の無い健康な豚=SPF豚の新しい作出法として、受精卵移植技術の実用化を図っています。
 62年4月から当場に畜産資源開発科が新設されました。微生物の力を借りて、水田や畑から出る副産物(稲わら、大豆がら)の栄養価を高めて家畜の新しい飼科にしたり、家畜の糞尿からメタンガスを取り出す研究に着手しています。

(滝川市東滝川735-1)





↑前のページへ戻る
←農業技術情報の広場へ戻る