No.8 1990.3.26

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

北海道の肉用牛

肉用牛の放牧風景  日本人の食生活は近年豊かになり、それにともなって日本人が食べる牛肉の量も年々増加してきています。牛肉は日本の農畜産物の中で、今後とも安定的な需要拡大が見込まれる数少ない作目のひとつです。
 こうした牛肉の需要増に対して、北海道は平成7年度までに牛肉の飼養頭数を現在の約2倍に当たる57万5千頭に増やす計画を立てています。しかし肉専用種においては、従来どおりの繁殖方式ではなかなか急速な増頭は難しく、また北海道の牛肉生産量の約9割を占めている乳用種においても、生乳の計画生産が実施されている情勢下では期待できないのが現状です。
 そこで北海道では、優良な繁殖雌牛の輪人や受精卵移植による双子生産などにより頭数増加を図る計画です。ここで新たな肉用牛資源開発の方策として注目されているのが乳用種雄牛に肉専用種雄牛を交配して生産されたF1(一代雑種)雌牛を繁殖に利用する方式です。これは、肥育素牛生産用の繁殖雌牛を既存の乳用牛群から得ようとするもので肉用牛資源を拡大する上で有効な方法であり、生産コスト低減の可能性も期待できます。
 しかし、F1雌牛については、繁殖能力、哺育能力、産肉性などについて未解決の問題も多く残されており、これらについて調査検討し、より効率的な牛肉生産システムを確立することがこれからの課題となっています。

(新得畜産試験場)

研究の展望

F1雌牛を利用した効率的な牛肉生産システム

F1雌牛の特徴

 一般に、異なった品種を交配すると子どもは両親の能力の平均値を示しますが、形質によっては両親の平均値を上回る場合もあり、これを雑種強勢効果といっています。雑種強勢は牛の場合、主として早熟性、繁殖能力、強健性および哺育性などに表れると言われています。
 また、子どもが両親の能力の平均値を示す場合でも、両親に不足する経済形質を補いあう場合があり、これを補完効果と呼んでいます。例えば、ホルスタイン雌牛に肉専用種雄牛を交配して生産したF1雌牛では、発育性や泌乳能力は肉専用種よりも高くなり肉質はホルスタインよりも良くなります。
 したがって、F1雌牛は単に未経産のまま肥育するよりも、肥育素牛を生産する繁殖雌牛として利用した方がこれらの特徴を有効に利用することができると考えられます。

F1雌牛を利用した牛肉生産システムの設定

 上記のようなF1雌牛の特徴を最大限に利用した効率的な牛肉生産を検討するため、ホルスタイン雌牛にアバディーンアンガス雄牛を交配して生産したF1雌牛を用い、牛肉生産システムを設定し、現在試験を行っています。
 F1雌牛は雑種強勢効果として性成熟日齢が早く、補完効果として発育が良好であると言われているので、生後12か月齢でへレフオード種を用い早期種付けを行いF1クロスを生産します。2産目ではF2雌牛の高い繁殖能力を活用して、受精卵移植による肉専用種の双子を生産します。
 F1雌牛は、分娩後4か月目で子牛を早期離乳した後、4か月間の肥育を実施する計画となっているが、これは、経済性からみて、供用産次をできるだけ短くし、肉質が低下しないうちに短期肥育するのが有利と考えられるためです。
 また、F1雌牛から生まれたF1クロスおよび肉専用種の双子は、雌雄とも肥育します。F1雌牛はホルスタインを母牛としていることから泌乳量はかなり向上し、自然哺育におけるF1クロスの発育は良好で、また、双子であっても哺育性は十分期待できると思われます。

今後の研究の展望

 わが国では、交雑牛の利用に関する研究はまだ始まったばかりで、集積されたデータもまだ十分ではなく、適切な飼養方法を示すことができない現状です。また、交雑種による肉生産の評価は、単に品種の組み合わせや、能力の比較だけでされるのではなく、肉牛生産システムとしての総合的な評価も必要であると考えられます。
 このため本試験では、以下のような未解決の問題を調査検討し、肉牛生産システムに対応する必要技術を堤示します。

  1. F1雌牛の発育性や早期繁殖性を調査し、適切な哺育、育成技術や早期種付け技術を 検討する。
  2. 早期種付けにより生産されたF1クロスの哺育、育成、肥育技術を検討する。
  3. 2産目に受精卵2卵を移植した場合の繁殖性を調査し、双子生産技術を検討する。
  4. 受精卵移植によって生産された双子の哺育、育成、肥育技術を検討する。
  5. 2産後のF1雌牛の肥育技術を検討する。
  6. 交雑牛の肉量、肉質を調査する。

(新得畜産試験場)


研究の成果

食品加工用馬鈴しょの品質を高めるための施肥

 ポテトチップスやフレンチフライなどに使用する加工食品用馬鈴しょは、近年需要が伸びていますが、それに伴って輸入ものとの競合が厳しくなり、北海道産ものに対して品質の向上が強く望まれています。
 食品加工用馬鈴しょの品質に係るものには大きさや形、腐敗、変質、病虫害などがありますが、そのほかに比重、つまりでん粉価が取引単価決定に大きな役割を持っています。現状では、でん粉価1%の向上は、収量の10%増加に匹敵する経済効果が期待できます。
 かつての馬鈴しょ栽培は、多収を目標にして窒素施肥量を多くし、かなり倒伏するほど繁茂させていました。しかし、それは収量を高める効果はあっても、でん粉価については逆に下げる結果になっていました。そこで、ある程度の収量(規格内収量3t/10a以上)を確保しつつ、でん粉価16.3%(1等級格)以上を目標にして、加工食品用馬鈴しょ(品種トヨシロ)の施肥を検討しました。
 窒素用量試験の結果、土壌の種類で窒素の適量が異なる現象がみられました。これは土壌から供給される窒素量が異なるからです。窒素吸収量、でん粉価および収量の相互関係から、16.3%以上のでん粉価で、3t/10aの収量を得るための最適窒素吸収量は11~12kg/10aと判断されました。
 この吸収量を確保するため、まず、土壌から供給される窒素を熱水抽出性窒素量で査定し、不足する量を施肥で補うこととし、表のような窒素施肥指針を策定しました。
 一方、加里施肥量を増やした場合、収量に大きな変化は見られませんでしたが、でん粉価は低下する傾向でした。このことから、土壌中の加里含量に対応した加里施肥量として、土壌中の交換性加里含量が15~30mg/100gでは10kg/10a程度、30mg/100g以上では5kg/10a以下でよいと考えられました。
 また、堆きゅう肥からも窒素、加里が供給されます。したがって、堆きゅう肥1t施用につき窒素1kg程度、加里3~4kgを減肥する必要があります。なお、てん莱作付後茎葉をすき込んだ場合は、多量の窒素、加里が土壌に戻されるさめ、施肥管理が困難となるので、食品加工用馬鈴しょの作付は避けたほうがよいでしょう。

(十勝農業試験場)

研究室Now

難防除病害虫への挑戦

道南農業試験場病虫予察科

キュウリの病害防除試験  これまで当科では、防除が困難視されていた病害虫防除法確立に取り組み成果を上げてきました。すなわち、土壌病害(キュウリつる割病、トマト半身萎ちょう病)、ウイルス病(ハクサイ・ダイコンのモザイク病、トマト条斑病)、薬剤散布では防除が困難な害虫(イチゴのシクラメンホコリダニ)、薬剤耐性が付き易い害虫(キャベツのコナガ)が対象となりました。
 これらは、〔太陽熱利用の土壌消毒〕、〔抵抗性品種の利用〕、〔シルパーフイルム紫外線カットフイルムを利用した媒介昆虫の忌避技術〕、(温熱による害虫駆除〕、〔薬剤の選択・ローテーション散布)によって攻略されました。
 また、昭和61年に北海道で初めて侵入が確認された水稲の重要害虫イネミズゾウムシについては、これまで進めて来た発生生態・防除対策試験などの研究成果を集大成し、近く公表される予定です。
 このほか現在実施中の課題としては、難防除病害である野菜の細菌病について、病原細菌の生息環境(葉面pH)のコントロールによる病害防除と言った新しい発想に基づく防除法を検討中です。
 また、イチゴの土壌病害(萎黄病および萎ちょう病)について、これまでの土壌病害防除で有効とされた大陽熱利用による土壌消毒や抵抗性品種利用の可能性、土壌管理技術の適用ならびに新しい病害防除技術である拮抗微生物を利用した防除の可能性などを総合的に検討し、本病防除法の確立に向け試験を開始したところです。
 今後、施設栽培で野莱を加害する線虫についても試験を開始する予定です。

(亀田郡大野町)


ハーグレス

上川農業試験場(HARIS)

大規模耐冷性育種ほ場  上川農業試験場は、1886(明治19)年上川盆地の中心地旭川市の郊外に設置されて以来、百有余年、北方農業の安定と向上を目指した農業技術の発展に先導的な役割を果たしてきました。
 とくに水稲の品種改良では、常に新しい育種手法を導入し、時代のニ一ズに対応した品種を育成し、今日まで良質、良食味品種の「きらら397」を含む、60数種の品種を開発しました。 また寒地稲作技術の面では、品種の特性を活かす育苗法や肥培管理法、病害虫防除法の確立について研究を重ね、幾多の成果を上げてきました。
 現在は、道央・道北の稲作の中心試験場として耐冷良質・良食味・早中生品種の育成ならびに低コスト・安全・耐冷安定生産技術の開発研究を主体に、併せて21世紀の北海道農業の先進的試験場として、主要畑作物の地域適応性、園芸作物の栽培技術に関する研究に取り組んでいます。
 当場は1994年を目途に新地への移転が既に決定しています。移転後の研究施設備品類の整備拡充によって、研究精度の向上と効率化が一層強化されることが期待されています。

(旭川市永山)





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