No.10 1990.12.22

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

北海道の米

きらら397の試験栽培  昨今、お米をめぐる情勢は内外ともに厳しくなっています。対外的には、日本のコメ市場解放についてアメリカはいぜんとして強行な姿勢をくずさず、国内的には、各産地の銘柄米の販売競争がはげしくなるなど、国の内外で生き残りをかけた厳しい戦いがくり広げられています。
 そのようななかで、今年、東京と大阪で発足した自主流通米の取引市場で、「キララ397」「ゆきひかり」および「空育125号」は、入札価格が変動幅の上限いっぱいで落札されました。味の良い割りには値段が安いことが評価されたものと言えます。
 1989年度における北海道の水稲作付面積は14万8千ha、生産高は約78万tでそれぞれ全国の7.1%、7.6%を占めており、日本一の米生産地を新潟県と争っています。また平年収量も全国平均に達しました。
 今後、北海道が日本の米の食糧基地となるためには、1等米でより美味しく、しかも安いお米を安定して生産し、供給していく努力がいっそうもとめられます。

(中央農業試験場稲作部)

研究の展望

米の高度良食味品種の育成

 1970年代は、米の生産過剰が深刻な問題となり、とくに北海道においては、傾斜配分による転作面積の増大や類間格差の導入などによって、稲作の存立が危ぶまれる情勢にありました。道内の農業関係者は強い危機感をもち、一丸となって・売れる米づくり″を目指すことになりました。
 1979年、農業試験場内でも北海道の稲作研究の強化が検討され、その結果、中央、上川、道南、北見各試験場の稲作の研究部門で「優良米早期開発プロジェクトチーム」を結成しました。課題のパート・は1980年から1986年で終わりましたが、続いてパート・が
 1987年から始まり、北海道米の食味を府県の有名銘柄米に近づけるための本格的な研究課題に取り組むことになりました。

育種年限の短縮

 鹿児島県にある試験用の水田圃場で世代を進め、さらに材料の一部を冬期に沖縄県石垣市で栽培する暖地を利用した育種年限の短縮によって、育種効率を上げています。一方、葯培養はスタート当初には試行錯誤をくり返しましたが、この技術によって得られる再分化植物の数は年々ふえ、1986年には葯培養による実用品種として、日本で第1号の「上育394号」が交配からわずか7年で誕生しました。
 1990年度に上川農業試験場が奨励品種決定試験に供試している7系統のうち、4系統は葯培養によるものです。このように葯培養技術は、いまや育種年限短縮の主力として大きく貢献しています。

食味検定

 1978年、中央農試稲作部にアミロースオートアナライザーが導入され、本格的なアミロース含有率による選抜が始められました。プロジェクト発足後には、アミログラフ、インフラライザーといった分析機器が中央、上川の両場に整備され、育成材料について食味特性値の測定が可能となりました。
 また、育種規模の拡大により供試系統数が増大したため、食味特性値による強い選抜を加えても、栽培特性を兼備した系統を得ることができるようになりました。さらに、そのようにして得られた良食味系統を数多く交配母本に使うことにより年々、集団の食味水準は向上してきました。
 今後、食味特性値による食味の総合評価法の精度を向上させることにより、あるいは選抜に有効な新たな特性を見いだすことにより、高度良食味品種の育成を加速させねばなりません。

育成品種と食味水準の向上

 このプロジェクトが開始されて以来、1990年度までの10年間に育成された品種は、粳10品種、糯2品種です。
 1980年には、多収ながら食味が劣る「イシカリ」と「ともゆたか」2品種の作付割合は約65%でした。本課題パート・がスタートして4年目の1990年には「ゆきひかり」「キララ397」「空育125号」の3品種合計で約93%になりました。つまり、北海道米の食味水準は10年間で2~3ランク向上しました。これは、実に府県の類別格付2~3類に相当する水準です。
 今後の目標は、近い将来「キララ397」級の食味を有する品種を稲作地帯の大部分に普及させることですが、現在の奨励品種決定試験に供試されている系統の食味水準からすれば、そう困難なことではありません。
 さらに、やや近い将来(10年後)に「ササニシキ」や「コシヒカリ」級の品種を良食味地帯へ普及させるという目標があります。これにはおおくの困難が伴うことも予想されますが、「道北52号」等の低アミロース・dull系統の活用を含めて挑戦しています。

(優良米総合開発プロジェクトチーム)


研究の成果

パソコンによる畑および野菜畑の
土壌診断と施肥設計システム

 北海道における作物ごとの施肥標準は、気象や地形などの自然条件を総合的に判断して区分した18の地帯区分と、土壌をその母材と堆積様式などから4つに区分した土壌区分をもとに設定されています。
 しかし、いままでの収穫量に重点をおいた農業から、収穫物の品質向上をめざす今日的農業へと転換するためには、従来の施肥標準に基礎をおきながら、さらに圃場ごとに土壌養分含量を化学的に測定し、それを計算に入れたきめ細かな施肥設計を立てる必要があります。
 しかし、このような精細な施肥設計ができるようになったのは、最近における分析機器やパソコンなどの情報機器類の進歩と普及に負うところが大きく、かつ、その活用の場面も広がりつつあります。
 このような状況のもとで、土壌改良および施肥改善のための土壌診断技術「土壌診断総合システム(昭和62年、農業改良課)」が作成され、すでに道内で広く運用されております。
 しかしながら、この「総合システム」では、圃場の養分状態にまでおよんで施肥設計することができませんでした。そこで、すでに活用されている「北海道施肥標準」、「土壌および作物栄養の診断基準」、「土壌診断に基づく施肥対応」の三つの指導指標と既往の研究成果とを統合することによって、土壌診断と施肥設計が自動的に行える実用的なプログラムを開発しました。
 このなかでは、土壌改良資材の必要量を算出するための土壌診断結果票、また診断施肥量や施肥設計例を算出するための施肥設計票を作成できるようになっています。土壌診断結果票には、「北海道施肥標準」に記載されている全ての作物を対象に、測定した圃場の分析値と「土壌および作物栄養の診断基準」に定められている基準値との比較から、必要な土壌改良資材の種類と量を出力します。
 また施肥設計票には、畑作物、野菜および飼料作物(牧草を除く)を対象に、「土壌診断に基づく施肥対応」の基準に従って診断施肥量を算出し、ユーザーが登録した化成肥料、単肥を組合せた施肥設計例を5例出力することができます。
 使用するパソコンは、全道の各普及所に配置されているNEC製パソコンN5200シリーズを対象に、フロッピーディスクを用いる方式としました。このシステムは、システムディスクとデータディスクに分かれています。システムディスクには施肥標準、診断基準値、農家名(1,000件)、土壌改良資材名(7件)、単肥(13件)、化成肥料(150件)などのファイルと、演算・出力システムが登録されています。またデータディスクには分析値、圃場情報ファイル(300件、20ファイル)とそれに対応した診断施肥量ファイルが自動的に登録されます。
 以上、土壌診断技術の総合的な組立によって、今後はより合理的な施肥対応の展開が期待されるでしょう。

(中央農業試験場農芸化学部)

研究室Now

牧草地の更新から畜舎施設の改善

根釧農業試験場酪農施設科

傾斜草地用簡易更新作業機  荒廃した牧草地の耕起、施肥、播種の更新作業を従来の半分の工程で行える同時作業機を農業開発公社、農機メーカーとともに開発しました。
従来工法より約30%も作業の効率化が見込まれ、現在道内の火山性土、重粘土、泥炭土の牧草地で従来工法と比較し、有用性を検討しています。さらに、傾斜牧草地の更新を容易に行える簡易更新作業機を栽培部門(作物科)の協力を得ながら開発中です。
 乳房炎の撲滅は酪農家にとって大きな課題です。そこで、酪農機器メーカーとの共同研究により搾乳中の牛乳の電気伝導度を記録する装置を試作し、乳房炎の感染を高い精度で検出する方法を家畜衛生部門(酪農第二科)とともに明らかにしました。
 また、パイプラインミルカの取りつけや使用実態を調査するとともに、牛乳の逆流についての実験を行い、配置点検の基準を検討しています。
省力性で注目されているフリーストール牛舎の構造・配置について、カメラ8台と特殊ビデオ装置を用いて乳牛の行動を長時間記録し、ストールの寸法、敷料の種類、通路や付属施設の装置などの良否を検討し規模拡大への対応に備えています。
 さらに、近い将来の高齢化・労働力不足にそなえて家畜の省力管理方法を図るため、生体情報や行動変化などから乳牛の発情を発見記録する配置や従来の牛舎施設・機器類の改良で労力負担の軽減をはかる研究を計画しています。

(標津郡中標津町)


ハーグレス

植物遺伝資源センター

種子貯蔵施設  植物遺伝資源センターは、1950年に原原種農場として発足し、1986年に現在の名称に改められました。現在、大別して二つの仕事を行っています。
 それは、植物遺伝資源の開発研究と北海道農業に必要な種子生産事業です。前者については、北海道の農業や食品産業などの発展を図るためには、基幹作物について、育種研究の飛躍的な発展が不可欠であることから、その基盤となる植物遺伝資源の確保がますます重要となっています。
北海道立農業試験場で収集、保存する植物遺伝資源(現在、約23,000点、うち当センター保管分は約9,000点)を活用して、将来の利用範囲の拡大に的確に応えてゆくことが必要です。
 また、北方圏に適応する植物遺伝資源の収集、保存体制は、関連する諸外国に比べてわが国は著しくたち遅れています。国内に限ってみると、作物の特定化、品種の均一化などがすすみ、貴重な植物遺伝資源が急激に消滅しつつあって、その確保と保存は緊急の課題となっています。
 後者の種子生産事業については、全国に先駆けて実施した原種生産の民間委託につづいて、全国で最初の原原種生産の民間委託の作業がすすんでいます。
 以上、当センターは、各関係機関との緊密な連携と協力のもとに、農業や食品産業を支える植物遺伝資源の保存、管理や種子生産のため努力しています。

(滝川市南滝の川)





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