No.14 1992.10.1

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

チモシー新品種「アッケシ」、「キリタップ」の育成

チモシー新品種アッケシの草姿  チモシーは明治初年に我が国に導入されました。冷涼・湿潤な気候に強く、家畜の嗜好性が良好で栽培しやすいことから北海道における基幹牧草の一つとして奨励され、現在全道の栽培面積は40万haに及ぶと推測されています。
 チモシーは明治以来、早生品種が栽培面積の大半を占めることから、しばしば刈遅れによる乾草・サイレージの栄養価の低下、草地の荒廃あるいは労力の極端な集中などが指摘されてきました。そのためチモシー育種の面からは熟期の異なる品種を育成し、刈取り適期幅の拡大により、この問題に対処してきました。
 本年登録された新品種「アッケシ」は出穂始が中生の早で、斑点病に強いことが特徴です。同じく「キリタップ」は出穂始が中生の晩で、再生が良好で多収が特徴です。両品種とも採草利用が主体ですが、放牧にも利用できます。特に「アッケシ」は斑点病多発地帯での栽培が期待されます。
 本品種の育成により、6月上旬から7月上旬の間に5日から7日間隔で出穂始に達する品種が揃い、既に市販されている当場育成の極早生品種「クンプウ」早生品種「ノサップ」及び晩生品種「ホクシュウ」を適宜組み合わせて栽培することにより、1番草の刈取り適期幅をおよそ1カ月に拡大することが可能になりました。

(北見農業試験場研究部牧草科)

研究の展望

平成4年4月から一部発足した
研究基本計画のあらましについて

 北海道新長期総合計画のめざす『国際化時代に生きる力強い農業』の推進方向が具体的に示している『地域農業のガイドポスト』を試験研究の側から支える『道立農業試験場研究基本計画』は平成3年2月農政部から公表された。
 ---農業の明日を築く技術開発をめざして---という副題がつけられたこの研究基本計画にもとづいて、農業試験場では試験研究課題の見直し、試験研究体制の再編整備を行うこととしたが、ここに、研究基本計画のあらましと平成4年4月から一部発足した体制について紹介する。

1 農業・農村を取り巻く環境の変化と試験研究の重点方向

 近年、国民生活の変化にともなう食生活の多様化、食品の高品質化、安全性志向に象 徴されるような消費者ニ一ズの変化、多種品目にわたる貿易自由化の進行、米の市場開放問題など農業をめぐる情勢が急テンポで変化している。本道農業においては主要農作物について生産調整による生産抑制が行われ、経営環境が一段と厳しさを増す中で、新しい需要を求め、新たな作物を模索し、需要動向に対応した、良質で安価な農産物の安定的な供給が強く求められてきている。
 また、種々の本道農業・農村が直面する課題を克服して、国際化時代に生きる力強い農業を確立していくために、北海道立農業試験場は北海道における農業試験研究の中核機関として国民の食生活の変化、消費者ニ一ズの動向、国際的な食料需給状況などの情報を的確に把握、展望を開き、国内外の産地間競争に勝ち抜くための地域に根ざした技術開発を積極的に進めるとともに、農業技術革新の情報発信基地としての役割を担っていくことが、最も重要となっている。

2 道立農業試験場の重点研究課題と各部門の研究推進の方向

(1)道立農業試験場の重点研究課題~農業技術のワンランクアップ~
(2)基幹作物の品質・食味・加工適性の向上、低コスト安定生産技術の確立
(3)園芸作物の振興のための試験研究
(4)農産物の需要拡大や高付加価値化と特産品づくりのための試験研究
(5)自然と調和した安全な農産物作りとと環境資源の保全・活用のための試験研究
(6)バイオテクノロジー技術を活用した生物資源の改良と利用技術の開発
(7)遺伝資源研究など本道農業の技術開発を支える基盤的な試験研究
(8)道産農産物の市場拡大と農村地域の活性化のための試験研究
(9)情報システムを活用した新技術の開発

3 研究推進体制の基本的考え方

(1)人材の養成・確保
(2)研究環境の充実
(3)研究ニ一ズに即した研究体制の再編
(地域に対応した試験研究の強化)
 農業生産の再編成が進み新たな研究ニ一ズが求められるなど、地域の農業生産の実態や将来方向に即した農業試験研究の強化が求められていることから、地域に即した整備を行う。
(企画調整機能の強化)
 中長期的な視点に立った研究ニ一ズの的確な把握、試験研究課題の効果的に設定、他研究機関との連携など道立農試における研究の効率的な推進を図るために、農政部及び各農試の企画調整機能を強化する。
(4)関連研究機関との連携
(5)研究成果の迅速な普及
(6)国際交流、研究協力の推進
(7)研究開発資金の確保と重点化

4 研究推進体制の整備の方向

 このことについては、地域の農業生産の再編成などに対応した整備を行うことになるが、平成4年度においては当面急がれる園芸研究の強化やクリーン農業の推進などに対応した組織機構の改正が行われた。改正内容の主なものは次の通りである。
 園芸試験研究体制の整備
 畜産試験研究体制の整備
 流通・加工・貯蔵などに関する試験研究体制の整備
 農産物の安全性に関する試験研究体制の整備
 経営研究体制の整備

 中央農試の経営部に流通経済科を新設し、2科体制にした。
 農村環境の改善に関する試験環境体制の整備
 農業土木研究室を農業土木部とし生産基盤科、農村環境科の2科体制に強化した。
 企画調整機能の強化や開かれた試験場などに対応した整備
 中央農試企画情報室に調整課を新設した。また、中央農試と蓄試を除く各農試、遺伝 資源センターに研究部長を新設した。

 以上、平成4年までに決まった推進方向と体制について示したが、平成4年6月に発表された新農政をうけて、北海道において21世紀に向けて農業の在り方の検討が開始されたが、技術的課題の検討においては、農業試験場では技術の進展を見据えて、農業の展望を開く対応が求められることになる。

(中央農業試験場場長)


ハーグレス

研究ニーズの把握と新規課題設定方法の
見直しについて

 生産者の高齢化や担い手不足、農産物の市場開放要求の高まりなど本道農業を取りまく情勢は、一段と厳しいものとなっており、農業技術開発に対する期待が高まっています。
 道立農試における技術開発のための試験課題は
(1)農業生産現場や行政などで問題になっている事項を解決するもの、
(2)将来の本道農業を見越して、試験場が独自の観点から実施するもの、
等に大別されます。前者は従来から研究ニーズ調査としてとりまとめ、課題化に反映させてきましたが、より速く、より広いニーズ調査のため、平成4年から新規課題の設定方法を改正しました。
1)現場の幅広いニーズを把握するため、全道を6ブロックに分けた支庁研究ニーズ検討会の実施。
2)当該年度予算要求に反映させるため、ニーズ調査および検討会等の実施日程の早期化。
3)研究ニーズに対する試験場の対応方法を検討するための研究部長会議の開催。
4)行政サイドのニーズが試験研究により多く反映できるよう部門別新規課題討会への農政部職員の積極的な参加(開催時期の調整)。
5)従来、場長部長合同会議で決定していた新規要求課題は、研究部長会議で検討後、場長会議で決定に変更。

(中央農業試験場企画情報室企画課)


ハイテクNow

ナノスぺースへズームイン!!

~低真空型走査電子顕微鏡(LVSEM)の魅力一~

低真空型走査電子顕微鏡  今年1月に中央農業試験場に低真空型走査電子顕微鏡(LVSEM)が入りました。LVSEMの特徴を紹介しますと、
1)低真空状態で観察できるので、生に近い状態のものをありのまま、立体的にみることができます。
2)試料を薄く切断する必要がなく非常に簡単に観察ができます。
3)観察できる倍率は15~100,000倍で、特にミクロの世界に住む作物の病原菌や害虫の、全体像(ミリの世界)からその微細構造(ナノの世界)まで観察するのに最適です。今回導入したLVSEMには、クライオシステムが付いています。このシステムの機能は液体窒素を用いて試料を凍らせたまま操作ができることで、水分の多い試科でも容易に観察できます。さらに、このシステムではLVSEM中で凍結した試料を特別なナイフを使って切り刻み、試料の内部構造まで見ることができます。
 このように非常に多くの機能が付いているLVSEMですが、今回導入した機種はフォーカスや画面のコントラスト、非点収差補正、倍率などが自動的にボタン1つで行える機能が付いていて、誰でも、簡単に、素早く操作ができます。機械の保守機能もしっかりしており、多少誤った操作をしても壊れる心配はありません。そのため、始めての方でも気軽に操作ができます。
 動植物の微細構造や微生物の観察、加工食品の表面や内部構造、土壌や鉱物の物理的構造化粧品や繊維など化学製品の構造、半導体や電装品の微細構造など幅広い分野での応用が期待できます。
 あなたも一度、・ナノスペース″を垣間見られてはいかがですか。

(中央農業試験場病虫部土壌微生物科)


研究の成果

高品質肉「北海地鶏」の作出

北海地鶏の雌  日本の食肉消費量の3割以上は・鶏肉=ブロイラー肉″であり、短期間に大羽数を仕上げる利点から、安価で良質な動物性蛋白質源として食生活に寄与しています。しかしその一方でブロイラー肉は水っぽい、コクがない等という消費者の声が以前からあり、さらに近年食品への高級志向を背景に「より美味しい鶏肉」の供給が要望されていました。
 そこで滝川畜試では昭和63年から日本鶏等を用いて、高品質肉鶏作出の試験を開始しました。その結果『父:名古屋×母:(シャモ雄×ロードアイランドレッド雌)』の交配様式をとり、北海道で初めて高品質肉鶏である「北海地鶏」を作出しました。
 「北海地鶏」は、約100日で雄が2.5kg、雌は1.8kgの体重になります。闘争性、喧噪性が低く、飼い易い鶏です。肉質は「良く締まって適度な歯応え」と「うま味」があり、もも肉はブロイラー肉に比べ、赤味が濃く、脂肪含量は半分程度で、よりヘルシーな鶏肉です。
 「北海地鶏」は平成4年より普及に移されており、今のところ、素びなの配付は滝川畜試が対応しています。

(滝川畜産試験場研究部家きん科)




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