No.16 1993.3.25

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

露地野菜品種の特性調査

春播きダイコン栽培試験  北海道の野菜粗生産額は千葉県、茨城県に次ぎ第3位であり、夏野菜の重要な供給基地となっています。野莱は品目が多く、また毎年多数の品種が発表されていますが、府県と自然環境の異なった本道において、その特性が十分発揮されるかどうかは重要な問題です。
 中央農試では昭和57年に「露地野莱品種の特性調査」を開始し、その緊急性からデータを毎年普及に移しています。これは農業改良普及所を通じて、各産地での指導資科として活用されています。本試験の内容も個々の品種の一般的な栽培特性(早晩性、収量性等)の調査に留まらず、耐病性、抽台性、内部品質、加工適性等についても検討しています。
 平成5年度からは上川、十勝、北見農試と分担して、地域の特色を活かした品目について試験を展開します。また道の事業である「野菜品種早期普及促進事業」と連携し、各自治体や農業団体とネットワークを組み、各地に適した品種を早期に選定し普及するとともに、データの共有化を図り、北海道ブランド野菜づくりの発展に役立てます。

(中央農業試験場園芸部野菜花き第1科)

研究の展望

北海道の園芸と試験研究について

北海道の園芸作

 健康で豊かなQOL(QualityofLife:生活の質)に必須の野菜・花・果樹です。そして、北海道は、農業生産構造の変化と恵まれた立地条件により、全国からその安定した生産供給を期待されている“日本の野菜畑、花畑、特産果樹園”なのです。
 北海道は、温帯の北限あるいは亜寒帯の南限に位置し、他県とは異なる特有の気候資源を持っています。それは、夏季の気象が1)冷涼(日中温暖、夜間冷涼=日夜較差)である、2)降雨が少ない(湿度が低い)、3)日照時間が長く日射量が多い、4)冬の気象が寒冷(クリーン農業に貢献する)であることなどであります。これらの気象条件に、野菜・花にとっては広い経営土地面積をもっているという好条件も加わって、北海道は農業生産、特に冷涼性気候を好む園芸作物生産に非常に恵まれた立地条件にあります。今後とも、この気象及び土地資源を活かし、適地・適作、高品質安定生産、生産出荷期間の拡大を図る技術革新を、一層厳しさを増す労働力問題に対応する省力化・軽作業化・分業化と、生産の低コスト化、クリーン化を真正面に対処しながら推めて、前記の期待に応えていかなければなりません。

ニーズに対応する研究体制の展開

現在、道立農試における園芸試験研究は、果樹部門は中央農試、野菜部門は中央・道南・上川・十勝・北見農試、花き部門は中央・道南農試において、それぞれ実施しています。
 このうち、中央農試の野莱・花き部門が、化学・病虫の関係部門と併せて、平成8年度開設に向けて「花き・野莱技術センター(仮称)」として、滝川畜試の中に移り整備されることになりました。高度な施設・備品を活用して、野菜・花きの品種・栽培・土壌・肥科・病害虫・品質・品質保持バイテク等、一貫しかつ総合的な試験研究を推進しまた技術普及面にもリアルタイムに対応できる研究センターとして機能できるようにこの後の整備に向けて関係機関のご理解とご支援をお願いいたします。
 全道の野菜・花き試験研究の中核としてこれらの整備を進め、各関係場所と試験研究の連携・分担をしながら、当面するあるいは中~長期的に山積している技術的課題に多面的に対処して参る所存です。技術の総合化・組み立てのため、関係部門集合したプロジェクト的な試験研究にも多く取り組んでいくことになると思います。

研究の課題と展望

 現在、農試では21世紀に向けた研究の課題と展望について改めて検討し整理をしています。園芸部門の概略について野莱を中心にして紹介いたしますと、取り組むべき研究課題は、1)地域の特性を活かした適作目・品種を育成及び選定する(特産作目の育種、民間育種との連携、品種特性調査、新規作目の導入など)、2)優良種苗(優れた特性をもつあるいはウィルスフリー苗)の大量増殖及び育苗技術を確立する、3)作物の生理・生態に基づいた栽培環境管理による高品質安定生産技術を組み立てる、4)新資材・施設を開発・活用し、生産出荷時期の拡大と安定継続生産技術を確立する、5)省力化・軽作業化・分業化を進めるために育苗・定植・栽培管理・収穫・調製等の装置化・機械化とそれに対応した栽培法を組み立てる、6)土壌別・作物別栄養生理特性に基づいた土壌及び施肥管理技術と併せて各種の生理障害発生防止技術を確立する、7)生態系を活用した環境調和型の病害虫及び雑草防除技術を組み立てる、8)収穫物(品種・栽培条件別)の成熟生理等に基づいた品質保持及び低コスト輸送方法と品質基準の設定及び簡易な評価方法を確立することがあげられます。
 さらに、花きについては、 1)新しい需要を創り出す新規作目の探索導入及び作物化を推める、 2)作物の生理・生態を制御する技術を組み立て新しい作型を確立する、 3)土地利用型の花き(花木、球根類等)の省力・低コスト生産技術を確立する、 4)カジュアルフラワーとしての作目・品種・栽培法・収穫調製流通の在り方を検討するなどがあり、果樹については、1)地域に適応して特徴のある品質・大果多収・耐寒性・耐病性を待つ新品種を育成する 2)新品種に適合した栽培法を確立する、 3)省力化・軽作業化に結びつく樹体の管理及び栽培法を組み立てることがあります。
 また、産地及び関係機関と共に研究を進めるべき課題として、1)ブランド化のための共撰・共販体制を確立する、 2)需給等情報機能を改善強化する、 3)地域間リレー出荷への取り組みを推進する、 4)地域における農産加工の取り組みを推進することがあげられます。
 これらの課題を一つ一つクリアして求めるべき展望は、園芸作物生産の基本技術の高位平準化、新技術の導入等速やかな普及対応が図られることにより、農家経営のランクアップと若い担い手の養成がなされ、農業白書に云う“希望と誇りを持ち取り組める農業”を実現して、日本の食科基地としての北海道農業を支える位置づけとして、園芸作がしっかり根づいていることにあります。

(中央農業試験場園芸部長)


ハーグレス

「共同研究について」

 共同研究は、昭和60年から企画振興部が予算を計上している事業です。この事業の趣旨は、急速に技術革新が進み、研究内容も高度化・複合化するなかで、単独の試験研究機関だけでは解決できない領域について、研究機関相互や大学、民間企業等との学術的・横断的な連携により、相乗的な研究開発を推進しようとするものです。
 共同研究は一般研究と重点研究に大別されます。一般研究は、異なる分野の道立試験研究機関が相互に、あるいは試験研究機関と大学や民間企業等との間でそれぞれが蓄積しているノウハウを持ち寄って共同に研究を進めるものです。重点研究は、社会的・行政的に重要性緊急性の高い研究課題について道立試験研究機関がプロジェクト方式による組織的な研究開発を行なうものです。最近の農業試験場関係の共同研究の実施状況は一般研究32課題、重点研究2課題が取り組まれています。
 道の園芸と試験研究について新規に共同研究を始めようとする場合の手順は、8月までに共同研究の相手側と立案し、10月に実施計画書を企画振興部に提出します。3月の共同研究推進会議幹事会で承認・決定され、4月に試験がスタートするとともに、契約事務の手続きが始まります。また、実施された成果は、毎年5月に開催される副知事を委員長とする共同研究推進会議で報告・評価されます。
 共同研究では職務発明や職務育成品種など特許・実用新案や育成者の権利関係が生じる場合があり、試験実施に当っては十分な留意が必要です。なお、共同研究規程、契約の締結については「道立農試例規・内規集」を参照して下さい。

(中央農業試験場企画情報室企画課)


ハイテクNow

DNAシーケンサー

 遺伝子の正体はDNAまたはRNAと呼ばれる鎖状の高分子です。その鎖はA、G、C、Tの4種類の塩基が連なった(シーケンス:塩基配列)もので、塩基は3つ1組でアミノ酸1残基を意味します。遺伝子は数個の塩基の置き換えや欠落でその機能が失われたり、性質が変わったりしますから、シーケンスの解析は遺伝子研究の中でも特に重要です。
 このDNAシーケンサーは従来のラジオアイソトープの代わりに蛍光色素を用いて、レーザーで読みとった信号をオンラインのコンピュータで解析してシーケンスを決定する装置で、一般の実験室で使用できます。一度に24サンプルの処理が可能で約10.000塩基のシーケンスを決定します。
 現在、テンサイそう根病ウイルスの弱毒株の変異領域を特定する、作物などに導入する遺伝子をチェックするなどといった目的に使用しています。予定されている作物や他の病原微生物の遺伝子解析でも威力を発揮するものと期待されます。

(中央農業試験場生物工学部遺伝子工学科)


研究の成果

いちご収穫作業台車

イチゴの収穫試験  いちご生産の投下労働時間は、10a当り340時間と多く、収穫調整に全体の80%を要し、しかも窮屈な姿勢による肩凝りや腰痛の原因となっていました。この労働環境を改善するため2人乗りの電動式収穫作業車(1.0~10.0cm/s)を開発した結果、収穫量では慣行の1.5倍、労働負荷は心拍数で安静時に比較し、慣行が43%であったのに対して乗車作業では18%に止まりました。
 筋電量は慣行作業に比べ、大腿四頭筋が1/50、胸腰筋が1/25に低下し、疲労を大幅に軽減することが出来ました。本機は4分割でき、収納運搬が簡易であり、バッテリー駆動なので、ハウス内作業に適しています。

(中央農業試験場農業機械部機械科)




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