No.23 1995.7.10

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

根釧地域における高泌乳牛の集約放牧

根釧地域における放牧風景  乳製品の国際化を前に、より足腰の強い酪農経営への転換が求められているなか、「放牧酪農」は糞尿処理量の減少、栄養価が高く安価な粗飼料の給与、それによる貯蔵飼料調整量の現象による労力とエネルギーの低減などからゆとりある作業ができるばかりか、舎飼いに多い牛のストレス解消など、現在北海道の酪農が抱える課題を解決する多くの利点を持っています。しかし、放牧は今まで減少してきました。これは、高泌乳化が進んできた牛群に対応していなかったことが原因の一つとして考えられます。
 このような背景のもとに、根釧農業試験場では関係研究かが共同して一連の放牧試験を行ってきました。集約放牧はいかにして牛にたくさんの牧草を栄養価の高いうちに食べさせ、高い乳生産をあげるかの技術ですが、そのために一日一牧区の輪換を基本として、消化率の高い短草期に利用できるように季節によって牧区数を調整し、それでも不足する栄養を併給飼料によって補うことを組み立てたものです。
 試験の最初は放牧草のウエイトが低い短時間放牧から取り組み、乳量が8,000kgを越える牛群についても放牧飼養が可能なことがわかりました。そして、放牧のウエイトを最も高めた昼夜放牧によっても乳量9,000kgの牛群を飼養する技術体系を得ることができました。
 これらの技術成果については、北海道農業試験会議においてもその重要性が認められ普及に移されています。

(根釧農試)

研究の展望

道立農試における畜産研究について

北海道畜産の現状と課題
○酪農:経営の規模拡大や近代化等により生産性の向上に努め、本道の農業粗生産額の約28%を占め、最近5年間で1戸当り飼養頭数は19.3頭増加し、経営規模の面ではEU諸国を凌駕する水準に達した。しかし、牛肉の輸入自由化による個体販売価格の低下、生乳の減産、初妊牛の価格低迷等で収益性が悪化している。今後は生乳の安定生産と道外移出の拡大、効率的な生産体制の確立、ゆとりある経営の確立等多くの課題がある。
○肉用牛:牛肉の輸入自由化により、輸入量は急増し、その自給率は44%まで低下した。牛肉の生産量は順調に増加し、品種別の飼養頭数は乳用種が70%、肉用種では黒毛和種がその60%を占めている。牛肉の需要は着実に増加し、消費の形態は家庭消費が減少し、加工・外食向けが増している。本道の肉用牛生産の安定的な発展を図るためには、規模の拡大、恵まれた草資源の活用、低コスト畜舎の建設等により一層の低コスト生産を推進するとともに、種畜の改良や肥育技術の向上を図り、品質の優れた牛肉生産に努めるほか、実需者からのニーズに積極的に対応していくことが必要となる。
○中小家畜:豚の飼養戸数は毎年減少し、大規模な企業養豚が全体頭数の約半分を占め、輸入は円高等の影響により増加し、自給率は69%である。今後は枝肉価格の安定対策や低コスト生産技術の普及、長期低利な資金の融資等による経営の安定、より安全で高品質なものへの志向が強まるので、消費者ニーズに即した品質の向上と安定供給が必要である。
 採卵鶏の飼養羽数5万羽以上の企業養鶏が全体の約80%を占め、卵価はわずかな生産量の増加によって価格の低下を招きやすい構造になっている。ブロイラーは企業養鶏の出荷羽数が約90%を占めている。
 めん羊は全国の飼養頭数の57%を占め、収益性の低さや流通ルートの未確立等から伸び悩んでいるが、生鮮ラム肉に対する消費者の関心が高まり、観光資源等多面的な利用による地域特産化の生産振興が図られつつある。
○草地・飼料作:草地582千ha、サイレージ用とうもろこし414haで全国の約60%を占め、草地の利用形態は多頭化、経営内草地の分散化により採草型87%、放牧型13%である。
 今後は優良な草種・品種の導入、草地の適期更新、放牧利用の推進、作付けの高度化等による生産性の向上及び地域実態に即した草種・品種の組合せ等による作期の調整、作業体系の改善、機械の共同利用、公共草地の整備等が必要である。

畜産研究の推進方向
○酪農:育種は乳質向上をめざした乳牛選抜法、乳牛改良手法の効率化及び新育種価推定法、牛群検定情報の活用強化促進と北海道型乳牛の作出である。乳脂肪やSNFから蛋白質を高める方向へ転換し、遺伝子レベルにおける改良システムを確立する一方、機能性品質向上を加味した総合的な選抜指標の開発と牛群改良システムを構築する。
○飼養管理は多頭化に対応するゆとりある飼養管理法、高泌乳牛の栄養代謝、牛乳の差別化戦略としての乳質の向上等である。多頭化に伴なう省力的群管理飼養技術を確立し、環境保全に配慮した循環型の経営が必要である。高泌乳化に伴なう乳成分の低下、繁殖性低下、濃厚飼料多給による乳生産効率の低下等を解決しなければならない。乳質は飲用乳シエアーを拡大し、食の多様さに対応した健康志向と安全性を考慮した機能性品質の向上が望まれる。
○衛生・バイテクは生理代謝障害の防止、微生物感染症の防止、繁殖制御機能、遺伝子操作、牛群健康管理システムの開発等である。高度な生産性の追求によって生体調節機構が乱れ、生産病が増加し、その予防技術の確立が急がれている。乳房炎の道内での損害額は約375億となり、その総合的防除技術の確立が必要である。優良家畜の多量作出をめざして、優良家畜の低コスト、安定増殖のため体内受精卵移植技術、体外受精卵の効率的低コスト生産技術等を確立しなければならない。繁殖性を向上させ、牛群として健康な管理を行う総合的健康管理システムを開発する。
○肉用牛:育種は受精卵移植を利用した優良種雄牛の作出、繁殖雌牛の繁殖・哺育・産肉能力の評価、遺伝子操作、クローン牛による育種改良等である。道内黒毛和種の能力水準向上の検定システムの確立と子牛の枝肉成績から繁殖雌牛自身の産肉能力を評価する。有用遺伝子の同定と転換技術の確立により育種改良のスピードを向上させる。
 飼養管理は黒毛和種の高品質牛肉生産技術、子牛生産技術等である。安定的な高品質牛肉生産のための肥育方式の確立が急務で、北海道に適した低コストで高品質な牛肉生産の総合的肥育マニアルを提示する。季節分娩の検討や初産子牛管理技術の改善により、労働費、子牛損耗率の低減を進める。飼料費、労働費を削減する放牧による母子管理技術や放牧地での集団繁殖管理技術の開発を行う。
○中小家畜:豚は優良肉質・高繁殖系統豚の造成である。国内豚肉の80%は生食用であり、自由化の中で生き残るためには、肉質のすぐれた、繁殖能力の高い系統豚の作出が決め手となる。すぐれた遺伝子を有する豚を的確に判定し、基礎群に導入する集団遺伝子の手法とゲノム解析の手法を利用すること。
 鶏は地域特産物としての生産技術、機能性鶏卵の作出技術である。特徴ある家きん類の活用による地域特産物の生産、クリーン農業での利用などの要望に伴い、低利用資源の利用した家きんの飼育や鶏肉の評価技術の開発が必要となる。消費者の健康志向に対応して低コレステロール卵、低アレルギー卵等の機能性卵の開発が急がれる。
 めん羊は安定的なラム肉生産周年出荷技術である。地域特産化に向け、地域飼料資源の有効活用を図り、生産コストの30%節減、新鮮ラム肉の周年出荷体制を確立する。
○牧草・飼料作物:育種は多様化する利用場面に対応した牧草品種の開発、安定多収なサイレージ用とうもろこしの新品種の開発である。チモシーは放牧専用品種の育成が急がれ、合せて早刈り適性、混播適性、耐倒伏性、耐病性の向上等が期待されている。ペレニアルライグラスは多収性、越冬性、耐病性の向上と兼用利用品種の開発、混播適性、放牧適性の改良により、高栄養牧草の放牧利用によるコストの低減が図られる。サイレージ用とうもろこしは早生品種の育成を主体とするが、極早生品種についても行い、耐倒伏性、安定多収、ステイグリーン、根腐病抵抗性等の改良のため、雑種強勢の強い単
交配、三系交配を行う。その他、フレキシブルに対応するための草地管理情報が必要であり、草地管理情報のシステム化及び解析手法の開発により、刈取り計画の策定、冬枯れ対策、植生診断に基ずく草地管理を行う。

(中央農試 研究参事<現滝川畜試場長>)


ハーグレス

北海道農業技術通信ACEnetについて

 北海道農業技術通信ACEnetとは、新しい農業技術情報を生産現場にいちはやく伝えるとともに、広く生産者や消費者の方々との交流を図り、開かれた農業試験場を具体化する一環としての道立中央農業試験場の初めての試みとして、平成5年12月1日に開設されたパソコン通信ネットです。
 ACEnetでは、「ちょっと一服」、「仕事の話」、「DoitYourselfパソコン」という三つの談話室での会員同士の自由な情報交換や、道立農業試験場の研究成果情報データベースの提供や病害虫発生予察情報等の提供を行っています。
 現在、新たに防除基準や品種特性データベースを提供するための準備を進めています。 現在までに会員登録された利用者数は944名に達し、その内訳は農業者が約30%、農業改良普及員が約20%、農試職員が約10%と、農業関係者が大半を占めています。
 また、登録されている情報件数は6,000件を越え、昨年度1年間の一月当たりの平均アクセス回数は1,213.9回でした。
 ACEnetは農業に関心のあるすべての方に解放していますので、会員規約を遵守していただける方であればどなたでもすぐに入会して、利用することができます。
 入会の申し込みはGuestでLoginして会員登録ボードに書き込む方法が便利ですが、郵便等で中央農業技術情報センターに申し込まれても結構です。
 ACEnetの電話番号:01238-9-2888(代表)
 ACEnetの通信手順:8bit、NoParity、1stopbit、ShiftJISコード
 ACEnetの通信速度:300~9,600bps、CCITTV32、MNP対応

(企画情報室情報課)

ハイテクNow

豆類低温育種実験室

豆類低温育種実験室全景  北海道における豆類の栽培は約4年に一度やってくる冷害との競争でした。大きな冷害にあいながら豆類の耐冷性研究は一歩一歩前進し、十勝農試では大豆の「キタムスメ」、「トヨホマレ」、小豆の「エリモショウズ」などを育成してきました。
 しかし、平成5年の大冷害はこれらの品種も大きな被害を受け、十勝地方の大・小豆の作況指数は13、21と近年にない低さでした。
 これを契機に平成6年度、十勝農試に新設された「豆類低温育種実験室」は、豆類のどの生育ステージにおいても耐冷性検定ができるように、室温を10゚Cから26゚Cまで調節できる施設です。一室48~72m2のガラス室が4室あり、夏季は冷房により、冬季から春季は暖房により室温をコントロールして冷害環境を作り、そこに大豆や小豆を栽培します。
 この施設を有効利用して豆類の開花期における着莢障害耐冷性を解明し、育成材料の選抜、検定を効率よく行い、耐冷性育種を強化していきます。

(十勝農試)


研究の成果

無人ヘリコプタによる水稲用フロアブル
除草剤の滴下散布法

無人ヘリコプタによる水稲用フロアブル除草剤の滴下散布状況  北海道では無人ヘリコプタによる農薬散布は殺虫・殺菌剤で既に実用化されており、除草剤についても実用化が急がれていました。そこで水稲用フロアブル除草剤の滴下散布試験を風速3.8m/sの条件下で行った結果、畦畔や圃場外への飛散が無く、全てが圃場内へ適量で散布されました。さらに除草効果が高いうえ薬害も認められず、実用性が高いことがわかりました。
 無人ヘリコプタの利用で除草剤の散布時間が大幅に短縮されたばかりか、無人ヘリコプタの利用場面が広がり、年間稼働時間が増加して無人ヘリコプタの有効利用にも役立っています。

(中央農試 稲作部)




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