No.24 1995.11.25

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

水稲糯新品種「風の子もち」(旧系統名 上育糯417号)

水稲糯新品種「風の子もち」の草本  道産糯米の安定した需要を確保するためには、より一層の品質向上や高位安定生産が重要です。
 平成7年度の糯品種作付け面積は、前年の約75%に減少し、8,300haとなりましたが、そのうち早生種「はくちょうもち」の作付け比率は98%で、著しい過作状態にあります。このために、良質良食味品種の配合作付けが緊要な課題となっきています。
 この「風の子もち」は、中生種で良質かつ多収であり、さらに耐冷性も優れてます。また、餅やおこわの食味評価も「たんねもち」や「はくちょうもち」以上に良好です。
 このため、本品種は中生種作付け地帯において、「たんわもち」の大部分と「はくちょうもち」の一部分に替えて奨励されることとなり、より良質な道産糯米の安定生産に大きく寄与するものと期待されています。
 耐冷性がひときわ強いこの「風の子」が、北の大地にしっかりと根を下ろし、大きく育って期待に応えてくれることを希ってます。

(上川農試)

研究の展望

道立農試における農産化学研究について

1.農産化学部設立の経過
 農産化学部は平成4年4月に設立された新しい部ですが、唐突に生まれ出た訳ではありません。やはりその背景には古い器に入り切れない研究需要があったと見るべきです。最近、「川上、川下」と言う言葉を耳にします。農試の試験研究に当てはめると、川上は生産現場を意識した研究であり、川下は生産物を原料とする加工業者や一般消費者を意識した研究となります。確かに従来の試験研究に不足していたのが川上と川下の間を結ぶ研究でした。昭和50年代前半の試験研究では農産物の品質、特に内部品質に関する実態とその評価法については殆ど行われていませんでした。
 昭和60年代にはいると、稲作部から米の貯蔵法、十勝から加工用バレイショの品質向上、道南からトマトとホウレンソウの内部品質に関する成果が発表されています。園芸部でもカボチャ果実の品質評価法や野菜の冷凍加工・カット野菜の保鮮流通に関する試験が始まっていました。
 昭和62年、当時の農芸化学部の改組で農産化学科が新設され、小麦、豆類、馬鈴薯の品質関係の試験が始まりましたが、平成4年4月に各部門で対応していた川下を意識した試験研究を効率的に実施する部門として農産化学部が発足したのです。農産化学部には、米麦類担当の穀物利用科、野菜・豆類を担当する品質評価科、流通保鮮技術を担当する流通貯蔵科の3科が設置されています。
2.農産化学部の役割
 一言でいえば、道内農産物の良さを科学的に証明し、その良さを保って消費地に届ける方法を考えることです。消費者が求める農産物は、安全性であること、おいしいこと、栄養があることの3点に整理できます。安全性に関しては残留農薬の問題が挙げられますが、これについては病虫部門や環境化学部が担当している項目です。一つ目の役割として、食べて美味しいこと即ち嗜好性については、美味しさの中身を明らかにしてその大小を測る物差しと基準を作ることであり、栄養性については、既に知られている栄養素が十分含まれていることを明らかにし、更に機能性成分の検索とその情報を提供すること、また、大消費地から遠隔地にある道内産地に必要な鮮度保持技術の開発を行うことです。二つ目の役割として、得られた成果を育種部門や栽培担当部門に返して高品質で多様な品種開発と栽培技術の改善に生かしてもらうことです。今年の5月に21世紀初頭における農業の技術的課題とその展望が示されましたが、この作業過程で当部の役割を図1のチャートに整理しています。
3.現在の試験研究と将来への展望
 米については、水稲の育種部門と共同で北海道米の食味を一層向上させるために新たな要素を加えた食味評価法の開発とタンパク質組成や澱粉の分子構造を含めた食味解析、もち加工適性の簡易検定法開発を行っています。米粒中のタンパク質は食味に関与する点からも重要な研究テーマですが、このタンパク質が原因で希にではあるがアレルギー症を発症することが知られており医学的な面からも米タンパク質の研究が求められています。、平成8年度からは更にその内容を強化して医療機関とも共同研究を進める予定であり、ここで培われる技術は農産化学の研究に広く応用できるものと思います。麦では畑作部門と共同で低アミロ小麦の発生防止対策に取り組んでいます。成熟期前後のα-アミラーゼ活性の推移が3類型に区分されること、各品種・系統の低アミロ耐性の評価と検定法等の成果を得ています。今年度からはα-アミラーゼ活性機作解析、低アミロ小麦の発生予測システムの開発と簡易検定法等に研究を深化させているので、間もなくHARISネトワーク上で低アミロ小麦発生の予報を知ることが可能になるでしょう。
 豆類の品質評価は前身の農産化学科から始まった試験です。実需者から道産豆類の品質に関して種々の問題提起がなされたことを契機に豆類の品質評価関連の試験を開始してきました。道産小豆の品質現況を把握するとともに、小豆の外観ならびに内部品質成分の解析を行い、製あんに係わる品質特性を解明してきました。今後の課題として、価格の安い輸入品に対抗して道産品の需要を確保し拡大するためには、生産の安定化と低コスト化とともに加工適性に優れた高品質な豆類の生産が望まれます。そのためには基礎となる品質特性の解明と品質評価法の開発および品質指標の策定が必要であり、ここでも品質指標の設定が栽培技術の改善や品種開発に反映されるべきでしょう。野菜関係では、道産タマネギの調理・加工適性を明らかにして、用途別に最適な品種を選択できるように形態、成分、物性等の品質特性と調理適性の試験を行っています。バレイショについても品質評価技術の開発と特殊栄養食品向け品種-低タンパク・低リン-の検索を実施中です。また、クリーン農業生産物の栄養性と機能性成分の評価を予定しているところです。流通貯蔵関係の試験では、ゴボウの生育中の内部成分推移から収穫適期を明らかにし、内部品質から見た出荷期の拡大と最適貯蔵条件を把握する試験や雪を利用した貯蔵庫による米および豆類の貯蔵試験を実施中です。新食糧法の下、米の流通形態は多様なものになることが明らかであり今後とも米の貯蔵試験は重要なテーマです。豆類についても貯蔵中の品質低下防止は実需者から強い要望が寄せられています。この雪利用の貯蔵試験は自然エネルギーを利用した北海道ならではの試験であり、是非成功させたいものと考えます。
 今後取り組むべきの流通貯蔵関係の研究として、老化や追熟に作用する植物ホルモンの問題があります。学術的には5種類の植物ホルモンが確認されていますが、鮮度保持技術の高度化・低コスト化には植物自体の持つ代謝機能をより詳細に検討する必要があります。道産野菜を対象にした植物ホルモンの研究は輸送時間で不利な条件下にある本道野菜産地に貢献できる試験テーマであると思っています。
 以上、農産化学部の役割と研究の展望について述べました。試験研究に場面では試験材料の多くは他場、他部門からのご協力に負うところが多く深く感謝しています。また、当部門に対する研究要望の掘り起こしは生産現場のみならず広く実需者、消費者に対して長い耳を向けていなければならないと思っています。
図1
  農産化学部の役割 -高付加価値農業への対応-
 (求められる品質)  (主な試験課題)     (得られる成果)
     ・安全性・・品質評価基準の設定 ・
     ・   ・・ と評価検定法の確立・ ・成分表示・品質保証
・基本特性・嗜好性・・内部品質非破壊測定法・・(品質向上・市場の評価)
・・・・の確立・・
・・栄養性・・機能性成分の検索・→・栽培技術による高品質安定生産
・・・・
・流通・加工特性・・・鮮度保持技術の確立・・
・・・育種へのフィードバック
・用途別加工特性の判定・(高品質、多様な品種開発)

(中央農試農産化学部長)


ハーグレス

試験研究情報システムHARISについて

 HARIS(HokkaidoAgriculturalResearchInformationSystem)は試験研究および普及活動の支援を目的としたコンピュータ・ネットワークです。昭和62年度から整備が進められ、現在では600名以上のユーザーを抱えるシステムに成長しました。HARISでは、道立の農業試験場、畜産試験場、植物遺伝資源センターなど11カ所の中型コンピュータが、ISDN回線で結ばれています。各試験場内にはLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)が敷設され、研究室のパソコンと接続されています。道庁、普及所などからは、一般の電話回線を経由して、もよりの農業試験場に接続することができます。
 HARISでは、データ処理や統計解析を支援する環境を提供するとともに、各種の農業情報についてデータベースを作成して提供しています。アメダス気象、農業統計、図書文献、遺伝資源、青果市況、試験研究成果などのデータベースが利用されています。
 平成6年度からは、北海道全域を対象に1km四方毎の気象状況を推測するメッシュ気象情報システムが始動しました。パソコンのウィンドウズシステムに対応した先進的なシステムです。メッシュ気象データを用いて、水稲・牧草の生育予測、じゃがいも疫病の発生予測などを行うプログラムを現在開発中です。
 社会基盤としてのネットワークが爆発的に普及する中で、HARISも第2世代にむけて大幅な見直しを進めています。インターネットへの接続、パソコンとの連携の強化など、より簡単に世界中の情報にアクセスできる環境を整備したいと考えています。

(企画情報室情報課)

(LetterHAGRESNo.241995,11,25)

ハイテクNow

水質自動分析装置

水質自動分析装置  近年、農業が環境(土地、水、大気)に与える影響が注目されています。なかでも、農地からどれだけの肥料成分(窒素、リン)が流出するのか、さらに、それらが地下水や湖沼の水にどんな影響を与えるのかは興味深い問題です。
 これらの問題の解明には窒素やリンの分析が不可欠です。しかし、これらの成分は水中には極めて微量にしか存在しなことが多い上に、微生物などの作用によって速やかにその形態を変えるため分析には高い感度と迅速さが要求されます。
 この水質自動分析装置は水中の様々な形態の窒素やリンを分祈するもので、大きな特長として、1.極微量の成分が定量でき、2.1点当たりの分析時間が短く、3.2成分の同時分析が可能です。
 この装置の導入によって以前より格段に効率的な分折が可能となっています。

(中央農試環境化学部)


研究の成果

高品質ポテトチップス原料用ばれいしょの収穫適期

ポテトチップス原料用ばれいしょのポテトチップカラー  北海道では、ポテトチップス用原料は加工食品用全体の5割以上を占めています。また、早熟栽培などの新しい栽培技術の普及により、高品質ポテトチップス原料生産が課題となっています。
 4月中旬の早植栽培により、「ワセシロ」は塊茎肥大とでん粉蓄積が一層促進され7月下旬から、「トヨシロ」は8月中旬から、それぞれ収穫適期となります。なお、その原料を貯蔵すると「ワセシロ」ではポテトチップ色が濃くなり易いので、収穫後出来るだけ早く製品化する必要があります。また、生育過程における最適ポテトチップカラー値の判定は、葉色値(SPAD値)とでん粉価からおよそ推定するとが出来ます。

(十勝農試)




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