No.31 1998.4.10

letter HAGRES 北海道立農業試験場だより

たまねぎの機械収穫風景たまねぎの選果風景
たまねぎの選果風景
たまねぎ品種 蘭太郎(北見交17号)
たまねぎの選果風景たまねぎ品種
蘭太郎(北見交17号)
写真提供:ホクレン

北海道のたまねぎ生産


 北海道のたまねぎ生産は、昭和40年代に水田転換畑を中心に急激に増加し、さらにてん菜などの畑作物からの転作も加わり面積は一気に拡大しました。昭和60年代に入ると、畑作物価格の切り下げ等から作付け面積は再び増加に転じました。多くの作物が生産抑制的な環境下にあって、たまねぎに対する作付け意欲は強いのですが、生産過剰による価格の低下が懸念され、関係団体では作付指標を設定する一方で出荷期間の分散や拡大化を推進しています。
 平成8年度の作付け面積は12,400haに達し全国シェアの45%、出荷量では60%を占め、栽培法で府県と異なった二つの特徴を持っています。ひとつは府県の栽培は秋まきであるのに対してすべて春まきです。府県の収穫時期は4~5月ですが、北海道は9~10月の収穫となります。いまひとつは、栽培は播種から定植、収穫、選果まで一貫した機械化体系を実現していることにあります。府県では10a当たりの労働時間で130時間を必要としているのに対して、北海道ではその半分、65時間の体系が導入されています。
 関係者の一体となった取り組みで高い生産性を実現していますが、新たな課題も抱えています。出荷期間の延長や拡大に対応して、産地では不織布による簡易被覆栽培や早生品種の早まき栽培の導入により、1~3週間程度の出荷期の前進化が図られていますが、さらなる前進出荷が求められています。また収量性やたまねぎの外皮色が薄いなど品質面での課題も残されています。消費場面では、安全性や健康志向がますます強まり、農薬に依存しない栽培が求められています。そのため耐病性品種の開発が重要となり、病害虫の発生や被害を回避する栽培法の検討も課題となります。また、調理適性、サラダやハンバーグなどの生食、半調理用として辛味の少ないたまねぎに対する二一ズも強くなっています。


(北海道立花・野菜技術センター研究部)


研究の展望

たまねぎ秋播栽培の総合技術

1.秋まき栽培のねらいと試験の実施


 秋まき栽培は府県産秋まきたまねぎと北海道産春たまねぎとの端境期になる7~8月出荷をねらいとしています。
 北海道でも過去に秋まき栽培の試みがありました。しかし、たまねぎの抽台に関する知識が十分でなく、栽培技術も未熟で秋まきに適応する品種もなかったこともあって定着しませんでした。過去の具体的な秋まき栽培試験としては、抽台抵抗性の選抜方法として行われた例があります(北海道農試1978)。

試験圃場 活着後 越冬前(10月下旬)
試験圃場 活着後 越冬前(10月下旬)


 その後、北見農試とホクレン農総研との共同研究「加工用タマネギの新品種育成に関する試験」の試験項目「越冬栽培試験」において、府県の秋まき用の短日性品種のなかにも抽台率が数%以下で、かつ実用的な収量を示す品種が認められました(1991)。
 これが、北海道における「秋まき栽培」技術組み立て試験の実質的スタートとなりました。引き続き播種期や品種の検討を中心に、施肥法や病害虫の検討には化学部門、病虫部門も加わり、連携をとりながら試験が進められました。
 北海道のたまねぎ秋まき栽培は、国内の産地間競争だけでなく、輸入たまねぎに対抗する戦略としても重要な技術なのです。

2.秋まき栽培のポイント


(1) ポイント1 <抽台の制御>

 たまねぎは一定の大きさに育った状態で低温に感応して花芽分化し、抽台する性質を持った作物です。春まき栽培ではたまねぎの成長とともに気温も上昇していきますから抽

試験圃場 生育期(10月下旬)
試験圃場 生育期(10月下旬)


台は余り問題になりませんが、秋まき栽培は長い冬の低温を経過する作型ですから抽台が大きな問題となります。抽台したたまねぎは成品として収穫できませんから抽台をいかに低率に押さえるか、すなわち抽台の制御が最大のポイントとなります。
 抽台を回避するには越冬前の生育を抑えて、大きくしなければよいのですが、「小さな」生育では収穫するたまねぎも小さいことになります。越冬率も低下し、欠株も多くなります。結局、生育を抽台させない最大の「大きさ」にしておくということになります。
 低温期を「一定の大きさ」以下の生育に制御する、直接には播種期の設定がもっとも重要です。播種期が早ければ越冬前の生育も「大きく」、遅ければ「小さく」なります。また、「一定の大きさ」は品種によって異なります。この大きさが大きいほど抽台しにくい、または耐抽台性の強い品種ということになります。したがってもう一方では耐抽台性の強い品種の選択が不可欠です。

(2) ポイント2<株立の確保>

 たまねぎは順調に生育を完了してようやく1株で1球の収穫が可能となります。したがって収穫株数が直接収量に大きく影響します。とくに北海道における秋まき栽培では長く厳しい冬を経過するなかでいかに越冬率を高め、欠株を少なくするかが大きなポイントとなります。土壌凍結や凍上による根の切断、融雪水の停滞による枯死などが越冬率を低下させる大きな要因となっています。土壌凍結の心配ない地域に導入し、融雪水の停滞しないほ場の選択が重要です。下層土の透水性が良くても土壌表面にクラストの形成される圃場では越冬率が低下します。また、前記したように、越冬前の生育を十分「大きく」しておくこと、品種の選択も重要です。


(3) ポイント3<品質の確保>

 春まき栽培は9月、気温の下降期、低温期に収穫期を迎えますが、秋まき栽培は7月から8月、気温の上昇期、高温期に収穫期を迎えます。そのうえ品種も休眠性の浅い府県の秋まき用品種を使うことになりますから、適期に根切り処理や収穫をすることがより重要です。遅れると変形や皮むけなど急激な品質低下を招きます。また、ボトリチス属菌による腐敗も多くなります。もちろん、品種の選択は品質面からも重要です。


3.秋まき栽培指標


試験圃場 秋まき用品種:枯葉期 試験圃場 春まき用品種:抽台(7月下旬)
試験圃場 秋まき用品種:枯葉期
試験圃場 春まき用品種:抽台(7月下旬)


(1) 適用地域
 年内に積雪の見込める道央地域としています。積雪が少なく、土壌凍結のある地域での導入は控えます。また、道南地域での導入に当たっては播種期を遅らせなどの工夫が必要でしょう。
試験圃場 積雪下の越冬(12月下旬)
試験圃場 積雪下の越冬(12月下旬)

(2) 圃場の選定
 下層の透水性がよく、融雪期に停滞水が生じない畑を選定します。表層にクラストの発生しやすい畑も避けます。排水性に問題のある畑では秋の定植作業もできないことになります。
試験圃場:融雪期(4月下旬)
試験圃場:融雪期(4月下旬)

(3) 適応品種
 秋まき用中晩生品種。今のところ「もみじ3号」がもっとも適応性の高い品種といえます。本品種の種子は府県の秋まき用として販売されていますが、本道の早まき早期出荷向け品種として流通している「北早生3号」は同様な特性を持った品種と考えられます。

(4) 苗床播種期
 直播栽培もできますがより安定性の高い移植栽培とします。播種期は8月中句です。播種が早すぎると生育が進み、抽台が多発する危険性があります。逆に播種が遅れると生育量が確保されず越冬率が低下します。越冬前の生育量で葉鞘径6~7mmが目安となるでしょう。
農家試作圃場(砂川) 融雪期(融雪水の滞水)
農家試作圃場(砂川)
融雪期(融雪水の滞水)

(5) 定植期
 10月上旬が適期ですが、長期予報に留意し、10月の天候不順が予測される場合は9月下句、早めの定植とします。とにかく圃場条件の良いときに定植し、越冬前の生育量を確保します。遅れると活着が不良となり越冬率が低下します。また、植え方は浅くならないようやや深めの定植とします。植え方が浅いと凍上などの被害を受けやすくなります。

(6) 窒素施肥法
 秋基肥として10aあたり5㎏、早春に分肥10㎏を施用します。なお、加里とりん酸の施用量については、当面は春まき栽培にならい、加里の施用法としては窒素施肥法に準じて、秋と春に分肥します。

(7) 病害虫防除
 春まき栽培では白斑葉枯病とネギアザミウマが主要病害虫であり、防除回数も多いのですが、秋まき栽培ではたまねぎの茎葉の倒伏期が7月上句と早いことから、これらの病害虫の発生や被害が少なく、減農薬栽培が可能です。しかし、春まき栽培と異なった病害虫の発生する場合もありますから注意が必要です。

(8) 根切り処理
 倒伏満期から7日後前後が適当でしょう。遅れると裂皮、皮むけなど規格外球が増加します。
農家試作圃場(砂川) 倒伏期 融雪水が滞水して部分の欠株
農家試作圃場(砂川)
倒伏期 融雪水が滞水して部分の欠株
試験圃場 小苗定植圧の生育と欠株
試験圃場 小苗定植圧の生育と欠株

(9) 収穫時期
 完全枯葉を待って収穫することになりますが、根切り後も収穫が遅れると引き続き変形、裂皮など規格外球が増加します。前記したようにボトリチス属菌による腐敗も増加することがあります。根切り後、概ね2週間前後で収穫期となります。なお、より早い出荷をねらいとする場合には根切り後1週間、枯葉期前後での収穫も可能です。


4.今後の研究方向と展望


 秋まき栽培は導入地域や圃場条件にいろいろな制約がありますが、7月からの出荷を可能した新しい作型です。現段階では府県の秋まき用に開発された品種を使いますが、本作型をより安定化させるためには耐抽合性に優れた本道向け秋まき用品種の開発が不可欠です。
 秋まき栽培はまた、辛みの少ない生食用や赤だまねぎなど多様に発達している秋まき用品種の導入によるサラダ用、ハンバーグ用など用途別品種への対応、あるいは病害虫の少ない時期での栽培であることから、減農薬たまねぎ等の二一ズにも対応可能な作型として、新たな展開が期待されます。


(北海道立花・野菜技術センター)



研究の成果

テンサイそう根病ウイルス遺伝子からのウイルス病抵抗性遺伝子の探索


 てんさいのそう根病は、土壌菌であるPolymixa betaeによって媒介されるウイルス病です。この菌は土の中で長期間生存できるため、一度圃場が汚染されると、防除のきわめて困難な病害です。また、発病すると被害が大きく、特に根中糖分を著しく低下させます。北海道では1970年頃各地で発生が認められ、現在では約20%の圃場が汚染されていると考えられています。近年、抵抗性の育種が進められ、一部の圃場で抵抗性品種が導入されていますが、これらの品種の抵抗性も完全なものではなく、発病の激しい圃場ではてんさいの作付けを避けざるを得ません。
 中央農試では生物工学部の発足以来、一貫してテンサイそう根病ウイルス遺伝子の解析を行ってきました。この間、弱毒ウイルスを開発し(効率的な接種法が未確立なため実用化には至っていない)、ウイルスの新たな系統を確認、またウイルスの持つ遺伝子の全塩基配列を決定して、それぞれの遺伝子の役割を解明してきました。さらにウイルスの遺伝子診断法を開発して全道におけるウイルスの系統分布や、抵抗性品種を栽培しても跡地の菌密度には変動が少ないことを明らかにし、菌の遊走子接種による抵抗性検定法を確立しました。
 最近、遺伝子組換え技術が進展し、種々の組換え作物が実用化されています。その中でウイルス病害についても、外被タンパク質遺伝子などウイルス自身の持つ遺伝子やその他の外来遺伝子を作物に導入することにより、ウイルス病抵抗性作物が作出された例が示されています。中央農試においてもテンサイそう根病ウイルス遺伝子の中から、作物に組み込んだ際にウイルス抵抗性遺伝子として機能する領域の探索を実施しました。
 実際の手法としては、てんさいは遺伝子組換えが容易ではなく、自家不和合性の他殖性作物であり、さらに2年生作物であるため、生育期間がより短く、ウイルスの接種検定の容易な実験植物Nicotiana benthamiana(タバコの野生種)を対象に実験を行いました。ウイルス遺伝子の一部をそのまま、あるいは改変して植物発現ベクターに構築し、アグロバクテリウムを用いてリーフディスク法により実験植物に組み込みました。得られた再分化個体の自殖次世代について、ウイルス抵抗性の個体が出現するかどうかを検定しました。その結果、今回実験植物に組み込んだ際に、その植物において接種したウイルスの移行や増殖が抑制される遺伝子領域をほぼ特定することができました。今後はこの遺伝子領域をてんさいに組み込むことにより、そう根病抵抗性てんさいの作出を目指して試験を進めます。
ウイルスの接種検定
ウイルスの接種検定
ウイルスの接種検定(接種後30日) ウイルス遺伝子を導入した組換え体(写真左)はウイルス接種後も健全な生育を示す。非形質転換体(写真右)では生育が劣り、モザイクやえそなどの病徴が認められる。

(中央農試 遺伝子工学科)

hagres

北海道立農業試験場新研究基本計画の策定

 北海道は、平成10年3月、今後の道立農業試験場における試験研究の指針となる新研究基本計画(以下「新計画」という)を策定しました。
 新計画の策定にあたっては、昨年6月に道農政部内に設置した検討委員会において計画の具体的な内容について組織的な論議を行うとともに、地域や道段階での研究懇談会の開催、「北海道農村・農業振興審議会(知事の諮問機関)」における審議等を通じ幅広く意見・要望の聴取を行い、これらを踏まえ、成案を得ました。
 新計画においては、北海道農業をめぐる情勢や発展方向、試験研究の果たすべき役割等を踏まえ、今後10年間における道立農試の試験研究の推進方向や推進体制についての基本方向を示しています。
 試験研究の推進方向としては、「高収益農業の推進」、「クリーン農業の推進」、「地域農業の振興」に重点をおいて研究目標を定め、試験研究への取組みを強化していくこととしています。
 また、推進体制については、行政・研究との連携強化や研究のアセスメントの実施など研究推進システムの改善・充実、研究の集中効率化、地域対応機能の強化をめざした研究体制の再編整備、農業技術情報ネットワークシステムの拡充・強化などを進めていくこととしています。
 今後、新計画の方向に沿って、個別具体的な内容の検討を行い、計画的に実施に移していくこととなりますのでよろしくご支援、ご協力お願いします。

(企画調整課)



Leter HAGRES一覧へ戻る
農業技術情報の広場へ戻る