牛体外受精においてカフェイン濃度およびヘパリン濃度が精子の侵入および受精に及ぼす効果

南橋 昭・山本裕介・伊東季春・工藤卓二

新得畜試研究報告 18.59-64(1991)

 1頭の牛凍結精子をカフェイン(Cf)およびヘパリン(HP)の両方を含むBRACKETTand OLIHPANT の培養液で3~4時間培養し,牛体外成熟卵子に授精した。Cf濃度は0,2.5,5,10 または20mMおよびHp濃度は0,0.5,1,2または4units/mlとし,これらを組み合わせて合計23区を設定した。授精後,5~6時間目に卵子を10%子牛血清を含むTCM199液に移し換え,17~19時間目に固定して染色標本とし,精子の侵入および前核の形成を検査した。なお,本実験における培養はすべて37℃,5%CO2,95%空気の条件下で行った。
Cf濃度,Hp濃度およびこれらの多次の項を説明変数とし,成熟卵に対する精子侵入卵の割合(精子侵入率),雄性前核形成卵の割合(雄性前核形成率),正常受精卵の割合(正常受精率)および多精子受精卵の割合(多精子受精率)を目的変数として重回帰分析を行った。
 精子侵入率および正常受精率は,CfおよびHpを併用したときにはそれぞれ47.6~100%および 38.1~70.1%であり,CfおよびHpの濃度にかかわらず,CfおよびHpを単独で用いたときの和よりも大きかったことから,CfとHpには精子の侵入に対して相乗作用があると考えられた。
また,多精子受精率と精子侵入率との間には有意な相関が認められた(r=0.833,P< 0.01)。精子侵入率,雄性前核形成率,正常受精率および多精子受精率のいずれを目的変数とした場合も寄与率0.731以上の回帰式が得られ,これらはCf濃度およびHp濃度に依存することが下された。得られた回帰式から,精子侵入率はCf濃度が5~17mMのときHp濃度が1~4units/mlでおよそ90~100%,正常受精率はCf濃度が3~15mMのときHp濃度が1.5~3.5 units/mlでおよそ60~65%とそれぞれ広い濃度範囲で良好な成績の得られることが示された。